「どうなってやがんだ?」 「この子が、ゼイクシオンだよ。その子猫はまやかし」 「幻惑の精霊イルジオン。この空間を元に戻せ」 「あははは・・・ここに、イル、ジオン(ジョン)?」 くだらないギャグの美しい青年の姿をした精霊は、げらげら笑って、ロックオンの言葉通りに空間にかけられていた魔法を元に戻した。 ロックオンの頭にのっていたゼイクシオンは消えて、ただのボロボロの縫いぐるみになった。 「ぬいぐるみ?」 「あーん。ティエリア、ティエリア。契約して、もう一度、今度はちゃんとした、兄上なんかに消されないちゃんとした契約を」 「殺気がする、いつから、さっきから!ミミズが、み、水!」 くだらないジョークを繰り返すイルジオンの精霊を、ロックオンは塔の牢屋の外にあった窓から蹴落とした。 「あーれー。ティエちゃーん結婚してー。ロックちゃんこと、ネイちゃんもー結婚・・・・あーれー」 強制退場されられた精霊を無視して、ティエリアは幼い少女の頬にキスをする。 「我、ティエリア・アーデ、ここにフェンリル、ゼイクシオンと契約を交わす。汝、今もってこの瞬間より我が召還の友とならん」 「我、ゼイクシオン・ゼル・ヘルファイア・ゼクノシア、ここに汝ティエリア・アーデと契約す。今もってこの瞬間より、汝と契約せし精霊とならん」 二人の額に、契約の証である紋章が浮かび、消えていった。 「にゃあ。主。僕の正確な名前はゼイクシオン・ゼル・ヘルファイア・ゼクノシアにゃん。ヘルファイアは母上の名前、ゼクノシアは父上の名前・・・・母上の血を受け継いでいることを誇りにしているにゃん。たとえ、二つの属性が異端でも・・・父上も母上も僕を愛してくれたにゃん。その証に、名前を受け継がせてくれたにゃん。名前を受け継ぐ者は正統なる王位継承者。僕は・・・異端児だけど、第1王位継承権を持っているのにゃん。だから、兄上たちは僕を苛めるのにゃー。母上はサラマンダーの精霊王だったからにゃあ・・・・・・精霊王と精霊王の子は第一王位継承者になる・・・・・でも生まれた僕は、二つの属性をもつ異端児・・・父上は、本来なら生まれてきてすぐに殺すべき僕を生かしてくれた・・・塔に幽閉する形で」 「うん」 「ずっと、夢見ていたのにゃん。主がいればって。僕だけの主がいればいいのににゃんてにゃ。幽閉されていた期間は長かったけど、いつも母上が傍にいてくれたにゃん。母上も僕を殺すことに反対だったにゃあ。でも、母上が崩御して・・・・僕は、処分されることが、父上が精霊界から出ている間に決定されて・・・慌てて戻ってきた父上が、僕とケンカしたってことで人間界への永久追放処分にして、生きる道を与えてくれたのにゃん。その時に出会ったのが主・・・ティエリア・アーデにゃん」 「大好きだよ」 幼い少女の姿を維持できず、元の子猫の姿に戻ったフェンリルにほお擦りして、キスしてから頭に乗せる。 「にゃあん。僕も主が大好きにゃん。侵入者がきても分からないように、縫いぐるみが僕に見えるよう魔法がかかっていたのにゃー。普通は見分けられないにゃ・・・・僕が、人型をとると女の子になるなんて、誰も思わにゃいからにゃ。主と出会えて契約できて幸せにゃ・・・・それから、ロックオンは死ね!!!!だにゃんVV」 ロックオンは、目が点になっていた。 かわいい幼い少女が、ゼイクシオンのとる人型。 ゼイクシオンの名前と性格からして、男の子と思い込んでいたロックオン。ゼイクシオンは、本来なら王族の姫君。女の子だったのだ。 「主・・・よくわかったにゃあ。あの姿が僕だって」 「だって・・・蒼い瞳が一緒だったもの。王の子の瞳だ。気高く誇り高い。綺麗な蒼」 「主・・・右目どうしたのにゃん?」 「お前を、助ける代償にダークエルを呼び出して、くりぬかれたんだよ。お前を助けるのは僕だって言って聞かなかった」 ロックオンが、フェンリルを自分の頭の上にのせた。 「にゃーーー。にゃーーーー」 フェンリルは、ボロボロと子猫の姿のまま涙を零す。 「僕は、にゃんて・・・にゃんて・・・・愛されてるのにゃ・・・」 「忘れるなよ、フェンリル!俺も、お前のこと大好きで、友達で家族って思ってるし、愛してるんだからな!!」 「ロックオン、ほっぺが紅いですよ」 クスクスと笑うティエリア。 「さぁ、帰ろうぜ!俺たちのホームへ!」 「帰りましょう」 「帰るにゃん・・・・さようなら、僕の故郷。僕は人間界で生きるにゃん。いつか、いつかまた戻ってくるから・・・父上、愛しているにゃん。母上も。僕をこの世界に誕生させてくれてありがとうにゃん」 NEXT |