バーチャルエンジェル6







ティエリアは、意識が朦朧としだしていた。
体の機能がおかしい。
風邪をひいたようであるが、どうにも熱が出たようだ。
体温をコントロールできない。

「こんなことで・・・・」

トレミーの廊下で、ティエリアは手足の痙攣に、顔をしかめた。
普通の人間ではない体は、ただの風邪でも違う症状を引き起こす。
「ひっ・・・・」
喉がなった。
やばい。
ティエリアは思った。

呼吸ができず、苦しげに喘ぐ。
なんたることだ。
病気など絶対にかからないようにできているティエリアの体は、もしも病気にかかってしまった時、どんな症状を引き起こすか分からなかった。
刹那の風邪は絶対に自分にはうつらないと自負していた。
だが、現実にうつってしまった。
免疫力が低下しているようであった。

「ティエリア!」
血相を変えて駆け出した刹那の後を追って、マリナもきていた。
「刹・・・・っはっ・・・っ・・・っ」
息ができない。
呼吸が止まる。
体温がどんどん上昇していく。38度、39度、40度・・・。

こんなところで、死ぬわけにはいかないのに。
ティエリアの両目から、苦しみのあまり涙が溢れた。
「ティエリアさん、今お医者さんを」
刹那はマリナの前で、ティエリアに人工呼吸をはじめた。
マリナが固まる。
それが治療行為であると分からなかったのだ。
だって、いきなりさっきまで元気だったティエリアが呼吸困難に見舞われているなんて気づくこともできない。
刹那の人工呼吸のお陰で、なんとか呼吸を回復する。
マリナは言葉を失っていた。

「刹、那」
近くにあった部屋からペットボトルいりの水をもってきて迷うことなく口に含むと、ティエリアに口移しで飲ませる。
「刹那」
ティエリアの服を脱がす。
上昇してしまった体温を元に戻すためには、衣服を脱がすのが効果的であると、長い付き合いの中で知っていた。
ポレロを脱がし、その下の服も脱がす。
ベストを着ていたが、緩くなっていた。
小さな胸の谷間を見てしまい、マリナは言葉を失った。
「ティエリア、さ、ん?」
彼は、少年ではなかったのか。男だと、ティエリアはマリナにいっていた。
この、僅かであるが胸の膨らみと、くびれた細い腰は、明らかに男性のものではない。
「刹那、刹那」
「ティエリア、ティエリア、ティエリア!!」
互いの名前を呼び合う。
刹那は、いつもの無表情なクールさはどこにいったのかも分からないほど取り乱していた。
「ティエリア、しっかりしろっ!」
水を口に含み、また口移しで飲ませた。
水を飲むことで、体温が下がるとティエリアが言っていたのだ。
額に手をあてる。その熱さに、刹那が涙を零した。このままでは、ティエリアが死んでしまう。
「せ、つ、な?」
マリナが、棒立ちになった。
刹那が泣いているところを見るのははじめてだった。
「ティエリア、死ぬな!死ぬな!!」
ティエリアは刹那に事前に語っていた。体温が40度をこえた場合、最悪、死の危険性があると。
ティエリアの体温は、39度をこえると普通の方法では低くならない。冷まそうとしても、体温コントロールで調整されているため、本人の意思でしか熱を下げることはできなかった。暖めることはできる。だが、39度以上になるとなかなか冷ますことはできないのだ。

「ティエリア!」
胸にかき抱く。
ティエリアは、刹那に抱きしめられたまま、口を開いた。
「水を・・・・」
ペットボトルと渡して飲ませようとしたが、ティエリアは咳き込んでしまった。
迷うことなく、また中身を口にすると、ティエリアに口移しで飲ませた。
繊細な硝子細工のようにティエリアを扱う刹那。
その瞳は、なんて切ないんだろう。
マリナを見るときでさえ、こんな切ない瞳を見せることはなかった。
「ティエリア、好きだ、死ぬな!お前がいなければ、俺は生きていけない!」
「せ、つ、な?ティエ、リア、さ、ん?」
驚愕の瞳でマリナが数歩後退した。
「マリナ、頼む、ドクターを呼んできてくれ」
悲痛な刹那の瞳に、マリナも頷いて医務室へと駆け出す。
なんなのだ、あの二人は。
刹那は、ティエリアになんといった?

好きだ、お前がいなけれな、俺は生きていけない。

それは、どういうこと。
つまりは、二人は、そういう関係なのか?
マリナは最悪の思考を振り払う。
そして、医務室に駆け寄って、ドクターを呼ぼうとした。だが、最悪なことに、こんなタイミングに限って不在だった。休憩中という看板がかかっている。
マリナは、元きた道を戻っていた。
駆け出していた足が、スピードが緩くなり、歩みに変わっていた。

「・・・・っあ」
ティエリアの声が響く。
唇に唇を重ね、その首筋に唇を這わす。
まだ、依然と熱は40度前後の危険ラインを保ったままだ。
鎖骨に痕を残す。
「ニー・・・ル?」
「そうだ。還って来い、ティエリア」
「ニールッ!」
熱にうなされながら、ティエリアが刹那の唇に唇を重ねる。
舌と舌が絡み合う。
「ふ・・・・」
「戻って来い、ティエリア。まだいくんじゃない。いっちゃだめだ。誰よりも愛している、ティエリア」
刹那が、ティエリアの涙を吸い上げ、また深く口づけした。
「還らないと・・・ニールがいるんだ・・・還らなきゃ・・・」
ティエリアは、視力を一時的に失っていた。
刹那に抱きついたまま、動かない。
「愛しています・・・世界で、一番」
刹那は、何度も水を口に含むと、ティエリアに口移しで飲ませた。
その光景の全てを、マリナは見ていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

なんなのだ、この二人は。
理解できない。

ティエリアの体温が、少しづつ下がってきた。
それに、やっと刹那が安堵の色を見せる。
「ニール・・・じゃない、刹那か。すまない。光は消えていないな?」
「どうした?」
「目の前が真っ暗だ。何も見えない」
「まさか視力をなくしたのか!」
「多分、一時的なものだとおもう。時間がたてば、また見えるようになると思う」
刹那は、ティエリアを抱きかかえた。
そして、横にいるマリナを無視して、自分の部屋に運んだ。
そのまま、二人は二日間部屋の中から出てこなかった。
食事はアレルヤが運んでくれた。

マリナが、刹那の部屋の扉の前で佇んでいた。
「刹那。好きよ。愛しているわ」
部屋の中から、声が聞こえてくる。
「ティエリア、好きだ。はやく、よくなってくれ」
「少し、光が見えるようになってきた。僕も、刹那のことが好きだ」
「愛している」
二人での間のタブーを刹那は口にしていた。
「僕も、刹那を愛している」
こんな時くらい、タブーをおかしても許されるはずだ。
比翼の鳥は、どちからが欠けても生きていけない。
お互いの存在なしでは、生きていけない。

「刹那。愛しているわ・・・・」
マリナは涙を零した。
二人の間に割って入ることはできなかった。
深く深く、二人は繋がっているのだ。
「愛して・・・いるの。捨てないで」
マリナは泣いた。
マリナの声が、刹那に届くことはなかった。
刹那は、今はティエリアしか見ていなかった。マリナのことを愛していないわけではないが、今はマリナよりも誰よりもティエリアが大事だった。

比翼の鳥は、片方がいなくなると死んでしまう。
その存在は、もう一人の自分。
鏡の中の自分。

比翼の鳥は、互いを支えあって生きている。
失うことなんてできない。誰よりも大切なのだ。

比翼の鳥。

マリナは、理解できずただ泣くしかなかった。

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7時23分だ!
2時に寝ろって言われてた!
刹マリの短編を打とうと思ってたんです。
思いっきり刹ティエでロクティエで刹マリ。
なんというあんびりーばぼー。
マリナさんの恋敵はティエリアです。
ラブラブばっかもなんなんで。
なんか思ったより激しく長くなった。
AIマリアの、データを保存しますか?という問いに、答えはNOだという台詞はきっぱりきまって、なんかかっこいいかもとか打ってて思ったアホです。
ちょっとパラレル風味にいきそうだったんですが、AIにスキップ機能でファンタジーーパラレル展開は省略しました。パラレルはパラレルで書きたいので。
こんな仮想空間にダイブできる装置があればなぁ。
戦闘訓練っていっても、やっぱり仮想空間使わないとできないだろうし。
肉体戦はガンダムのってたら意味ないし。
・・・・・・・・・・・トランザム(逃げた)
誤字脱字の修正チェックいってきます。これもまたすごい誤字脱字がありそうだ。
にしても長編になりすぎた。反省。
意味不明なままで終わったし。まぁ、マリナさんの刹那に対する純真な愛に、疑問が浮かぶ話がかきたかったんです。