世界が終わってもY「日常にとけこむ」







「只今、ティエリア!調子どう?」
リジェネが帰ってきた。
リジェネが見たものは、病人であるティエリアを抱きしめて同じベッドに入っているニールの姿。
ピキ。
リジェネに罅がはいる。
「くおおおおおおおのけだものがああああああああああ!!!」
ニールをティエリアのベッドから引きずりおろすと、アッパーをかました。
ニールは綺麗に宙を飛ぶ。
「誤解だあああああああああ」
「五階も六階もあるかああああああああ!!!」
その音に、ティエリアが目覚める。
「お帰りなさいにゃリジェネー。だっこ!」
「!?」
リジェネが固まる。
甘えるような高めの声に、熱に潤んだ瞳。
同じ容姿なのに、ティエリアはとにかくかわいい。なんだ、この壊滅的に、悩殺的なかわいさは。
額の冷えピタシールをとると、熱は少しさがったようだ。でもまだ高い。

「ティエリア、僕が看病してあげるねVケダモノになんて任せられるか」
毛布にくるまったティエリアを抱き上げて、リジェネは客室のベッドにティエリアを連れて行く。そこのベッドに寝かせて、後からジャボテンダーさんも持っていってあげた。
客室のドアに、内側から鍵をかける。
「おおい、リジェネー。あんまりだろー」
「ケダモノは黙ってろおおお!」
ドアを外側からトントンとノックするニールの声を、怒号で吹き飛ばす。
「リジェネダイスキ。ふにゃら〜。愛してるの〜。ニールより好きなの。傍にいて」
「ティエリア!!」
ティエリアを抱きしめ、感動の涙を零すリジェネ。
「喉か沸いた」
ペットボトルの水を口に含んで、リジェネはティエリアに口移しで飲ませた。
「んあん」
ティエリアがあげた甘い嬌声に、ぞくりと背筋が粟立つのが分かった。
「落ち着けリジェネ・レジェッタあああああ!!ティエリアは病人だあああああああああ!!!」
ゴスゴスと壁に頭をうちつけるリジェネ。
「リジェネ、一緒に寝よ?」
笑顔でティエリアは誘ってくる。
リジェネも陥落した。
ティエリアが寝た、客用のベッドに一緒に横になって、リジェネはティエリアを抱きしめる。
ティエリアはすりよってくる。
居心地がいいのか、とても気持ちよさそうにしている。
「リジェネ、ずっと傍にいてね」
「傍にいるとも!」
ティエリアは、またまどろんで夢の中に沈んでいく。
その日の夜、ティエリアの熱は下がらずに、リジェネは明日の仕事をキャンセルした。ティエリアもいなければいけない。雑誌の撮影の日だった。

「ニールがいないのー」
と泣き出してしまったティエリアを、もとの寝室に戻して、ニールとリジェネは二人でティエリアの看病をする。
ティエリアは熱があるのに、寝るのに飽きてしまって毛布を被ってジャボテンダーを抱きしめてはニールのあとを、リジェネのあとをつけて歩いて。ふにゃふにゃしていた。
「それにしてもまさか、ティエリアは熱を出すとこんな甘えん坊になるなんてね」
ソファーに座ったリジェネの膝の上には、ティエリアが頭を置いて横になっている。
「にゃあ?」
「しかも猫語・・・・なんて萌える・・・いやかわいいんだ」
リジェネは、もうしばらくティエリアの熱が続かないだろうかなどと不謹慎なことを考えていた。
「ティエリア、病院行こうか」
「ふにゃ・・・・」
なかなか熱が下がらないので、リジェネとニールはティエリアを病院に連れていった。

「注射いやあああああ」
泣き出したティエリアをなだめる。
ティエリアは注射が大嫌いだ。
なんとか注射をうけさせて、処方してもらった薬を受け取って帰宅する。

「ぷんぷん。ニールのばか!」
逃げ出したティエリアを羽交い絞めにして、注射を無理やり受けさせたのはニールだ。
「ぷんぷん」
ティエリアは怒っていた。
額には冷えピタシール。
熱は大分下がったが、それでもまだ38度はある。
怒って、リジェネとばっかり一緒にいる。
「ティエリア〜。機嫌直してくれよ」
「やーです」
「ティエリア〜」
「ほら、しっし。ティエリアは僕といたいんだよ。ケダモノはどっかいけ」
「リジェネまでええええ」

その日の夜は、寝室からニールは追い出され、一人客室で寝る羽目となったニール。
その次の日には、すっかり熱も下がってティエリアは元気を取り戻していた。
「よかった、元気になったんだねティエリア。あーでも、ちょっと惜しい気もするなぁ」
「何がだリジェネ?」
すっかりいつもの調子に戻ったティエリア。
「ティエリアね、僕やニールがいなくなると寂しいって泣き出してたんだよ」
「そ、そんなことあるはずが」
「おまけに大好き攻撃が凄かったし。だっこって手を広げてねだられちゃってさぁ。それも何回も。何度も抱き上げたよ」
ティエリアが首をぶんぶんと振る。
「そ、そんなこと僕がいうはずがない」
「潤んだ瞳でさぁ。だっこって。おまけに語尾に〜にゃってついてて。ああもう可愛すぎて鼻血出そうだった」
うっとりと呟くリジェネ。同じくうっとりと思い出しているニール。
「写真とっとけばよかったね」
「そ、そんなはずは」
「かわいかったー。強烈にかわいかったー」
「うん。壊滅的にかわいかった」
リジェネもニールも繰り返しかわいかったという。
「勿論、元気になったティエリアもかわいいけどね!」
「ティエリアはいつでもかわいいさ」
ニールがティエリアのかわいさについて論議しだす。

「僕が、猫語!?だっこしてとねだった!?そんなはずはああああああああああああ!!!」
一人混乱するティエリア。
その日の夜、リジェネとニールは高熱を出した。ティエリアのインフルエンザがうつったのだ。
「あはははは、うつったけど幸せ〜」
「俺も幸せ〜」
アホ二人。
ティエリアに看病されて、更に幸せ度は高くなる。
でも、この後恐怖のティエリア手作りのおかゆが待っているとは知る由もない。