血と聖水\−U「砂時計の揺り篭」







神の空間から抜け出し、ホームに戻ったロックオンは、刹那とリジェネを連れて移動する。
フェンリルが、ロックオンの魔力を受けて3メートルの狼になると、ロックオンはその背に乗って空を走った。
刹那は召還した金色の鷹で、リジェネはペガサスで。
それぞれ、ティエル王国の始まりの場所、神の庭に向けて走り続ける。

始まりの場所。
そう名づけられた神の庭。
創造の3柱神が、そこから世界を創造した。
同時に人類を。
全ての生き物を、星を、月を、太陽を。
地上に生きる者全ては、元を辿るとこの3柱の創造神にたどり着くのだ。

「本当に、そこにティエリアはいるんだろうな?」
「いるさ・・・・ルシエードが言ったんだ。嘘じゃないだろう」
「アクラシエルだっけ?無の神だかなんだか知らないけど、奥歯ガタガタいわせるしかないよね!」
リジェネは早くも、戦闘にいつ突入してもいい状態のようだ。

オオオーン。
空を、フェンリルの遠吠えが走りぬけ、地上に落ちる。

ティエル王国、始まりの場所。
蒼い花が咲き乱れるその場所には、ティエル王国の女王であったティエルマリアの墓がある。
彼女は、ここで今も永遠に眠っている。
そんな場所を選んだのは、ティエリアに残っている記憶だろうか。

三人は、花畑に飛び降りる。

女王ティエルマリアの墓を見つめていた二人は、三人を振り返る。
「2対3か・・・・ネイ、それでも私には勝てないよ」
アクラシエルは、哀しげに目を伏せる。紫と緑のオッドアイの、縦長の瞳孔が収縮した。
「ネイ。報いを受ける、準備はできた?」
「俺は、ティエリアを助け出す。元に戻す」
無の神の横で、神に付き従い、金色の瞳で無機質にロックオンを正視するティエリア。
神は、溶けていく。
「ネイ。命をかけた戦いだ。殺しあうといい。砂時計の揺り篭の中で」
アクラシエルは、ティエリアの中に吸い込まれた。

バサリ。
12枚の黒い翼が、大地を覆う。
巨大な巨大な翼。
それは、使徒の証でもある。「ルシフェル」となったティエリアは、腰のホルダーから二丁の銀の拳銃をとりだして、セイフティーロックを解除すると、ロックオンに向けて発砲した。
「ネイ。あなたは邪魔だ。世界を変革するには、あなたは邪魔なんだ。死んで」
銀の弾丸を全身で受けながら、ロックオンはティエリアに少しずつ近寄ると、ティエリアを抱き寄せた。
「帰ろう、ティエリア」
その言葉に、ティエリアが震える。
「ネイ・・・・・愛しているから、殺す!!」
ティエリアは、ビームサーベルを取り出して、ロックオンの右肩を貫く。
ロックオンは、飛び退る。
すぐに傷は回復した。

「ネイ・・・・死んで」
ティエリアそのもののような微笑をうかべて、ティエリアはビームサーベルにエーテル、神の力を凝縮させた。
「刹那、リジェネ・・・・ティエリアの中にもぐりこんで、中に入ったアクラシエルを追い出せ!!」

「了解!」
「分かったよ!」

砂時計の砂は、元には戻らない。
逆さにしないと、砂はそのまま。
砂時計の揺り篭の中で、二人はゆっくりとその結末に向かって動き出す。

報いを受ける時がきた。
さぁ。
はじめようか。
終曲のロンドを。
 




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