ビヨヨーン。 はねた毛を、刹那はぶらしでとかしていく。 何度とかしても、四方八方にはねた毛は、ストレートになることはない。 その前髪をつまみあげて。 「寝癖がついた」 「刹那、それ寝癖なの?」 「そうだ。これは寝癖だ」 いろんな方向にはねた髪は、だったら全体が寝癖か? というかそういう髪型なのだから、どれが寝癖なのかなんて分からないのだが、刹那には分かるようだった。 「本当なら、この髪は右方向にはねるんだ。今日は左にはねている」 何度右方向になおそうとしてもなおらない。 フェルトは笑いを堪えて、それからポケットの中からヘアピンをとりだした。 ハイビスカスの花の模様のヘアピンを、はねているという刹那の髪にとめる。 パチ、パチと小さな音がなる。 「ほら、これではねてても平気でしょ」 「・・・・・・・・」 21歳にもなった刹那に、かわいらしいヘアピンは、ちょっと違和感があるようだけど、なれてしまえばかわいかった。 「刹那、かわいい」 「このヘアピンは?」 「ティエリアからもらったの。お揃い」 嬉しそうなフェルト。 ティエリアは、もう女の子だものな。中性の少女。 髪飾りをしているときだってあるし。 ティエリアならいいかと、刹那もヘアピンをそのままに、フェルトと並んで食堂に向けて歩きだすのだった。 |