星の砂「壊れるとき」







「お願い・・・・優しく、して?」
「おー、ティエリアちゃん。優しくするとも。今日は俺がいただくぜー」
「おい、ずるいぞ。俺も仲間にいれろ」
「ティエリアちゃん、どうする?」
「いや。あなたが、いい」
「だってさぁ」
そこに人権など存在しないが、男たちは壊れてもなお美しいティエリアの虜になる。
壊れて自我が崩壊した女を、男たちは何度も見てきたが、何の反応もしなくなるか、よだれをたらして白目をむいたり、奇声を放つだけで、しまいには失禁したりと相手にするにもやる気がなえるものがある。
その点、ティエリアは自我が本当に破壊されたのかと思うほどに、従順で男たちの言いなりになる性奴隷になっていた。他にも何人か現地の女はいたが、皆壊れて、奇声を放って噛み付いたり、失禁したりばかりで皆ティエリアに憧れた。最初の1週間は皆の慰み者として、輪姦され続けていたが、男の喜ばし方を幼いながらも知っているその体と、壊しても壊しても、汚く壊れないティエリアは、いつしか別格扱いとなっていた。
男たちの、マドンナになっていた。
男たちはティエリアを優しく扱い、獣のように犯すことはなくなっていた。ティエリアは、その日くじで勝った数人の性奴隷となる。残った男たちはブーイングをして、明日ティエリアを手に入れることを夢見て、ティエリアと同じような運命を辿った現地の女たち・・・・壊れすぎて、反応もしなければ、獣のようにうなるだけで、言葉を出せば奇声をあげ、そして失禁するような女を相手にするか自虐する。
僅か一日で壊れた女は、他にもいたけれど、ティエリアの壊れ方は特殊だった。
従順に、男の言いなりとなる性奴隷として壊れていった。
そこに、ティエリア・アーデという名の少女のようにあどけなく微笑む中性の天使はもういない。
別格扱いになったといっても、性奴隷は性奴隷。多数の男に輪姦されないだけで、されることはかわらない。まるで娼婦のように、足を自ら開き、くじで勝った2〜3人の男に、順番に抱かれていく。
「あ、あ、あ」
ガクガクと男の下で揺さぶられていたティエリアは、入ってきた男の手によって行為を中断された。
「おい、ロックなんだよ」
「ロックオン・・・・助けに、きてくれた?」
まだ、自我が残っているのだろうか
「もう十分だろう。1ヶ月お前たちに与えた。壊れた後は好きにしろといっていたな。だから、俺の好きなようにする」
「ロックオン・・・」
抱きついてくるティエリアを抱き上げて、その男・・・兵士たちの中でも幹部の、上層に位置する男はティエリアを地獄から救いあげた。
最も、ティエリアにその地獄を与えたのもこのロックという男だ。
ロックオンと同じ響きをもち、同じアイリッシュ系で同じ色をもつロックを、壊れたティエリアは完全にロックオンだと思い込んでいた。そうするしかなかったのだ。脳内ネットワークはボロボロで、記憶障害どころの問題ではない。言葉は拙い言葉しか出ず、長くしゃべることもできない。

「俺はロックオンじゃない」
「ロックオン・・・・大好き」
「いい、ロックオンと呼べ」
その日から、兵士たちの不満を他所に、ティエリアはロックのものになった。
ロックのためだけに足を開く性奴隷、娼婦に。
扱いは更に別格となる。もう、複数の男に抱かれることもなくなったし、中にはサドの男もいて、鞭打たれるような行為も、時折血が好きな男に刃物で切られながら犯されたり、くじで当たった3人の男同時に犯される、そんなこともなくなった。
毎日綺麗な服を着て、栄養のある食事を与えられ、ティエリアの好きな湯浴みだって毎日できる。
でも、壊れたものはもう元には戻らない。
「ロックオン・・・・・好き」
「ティエリア、愛している」
いつしか、そのティエリアにロックというアイリッシュ系の男は、本気で惚れこんでいた。
「上手く壊れてくれて嬉しいよ」
でも、このロックオンはティエリアのロックオンじゃない。
心は優しい部分もあるが、性根は残忍だ。

ロックのものとなったティエリアは、違う壊れ方をしていった。
まずは、右目を失った。
次に、鼓膜を破られた。
その次は、足の腱を切られた。
ロックのものになった女は、生きて帰ってこない。それを知っていた男たちは、ロックを襲って監禁し、ティエリアを助け出す。
兵士たちの中で、ティエリアを巡る争いが苛烈になっていた。
「どうして・・・・ロックオン、何処?」
医師から再生治療をうけ、まずは鼓膜だけは元に戻ったティエリア。その時ロックオン、アレルヤ、刹那の奇襲攻撃が行われ、基地は壊滅する。
「くそ・・・・これまでか。こい!」
「あ」
脱獄したロックに抱えられ、ティエリアは炎のついた基地の奥で、脱出のための小型飛行機におしめられた。
「ロックオン何処にいくの?」
「逃げるんだよ!!」
「そう。ねぇ、僕のこと愛してる?」
「ああ、愛してるよ」
「嬉しい」

「ティエリア!!!てめぇ、殺す!!」
ロックオンの放った弾丸が、ロックの額をうちぬいた。
「ロックオン?ロックオン!!」
ティエリアは、自分のロックオンであるロックを揺さぶる。
でも、もう死んでいる。
「ティエリア・・・・助けにきた」
「いやあああああああああああああああ!!!!!」
オルゴールは壊れて、星の砂は世界に散らばった。
軋んだ世界で、ティエリアは夢を見る。
ロックオンに愛され、ロックオンの故郷であるアイルランドを見る夢を。


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