血と聖水フレイム「フレイムロードの国へ」







「にゃんだーってーにゃ?」
ロックオンの頭をがじがじ噛んでいたフェンリルは、皇帝直々の使い魔を見てぺこりとお辞儀した。
「これはこれは、皇帝の使い魔さんにゃ?狭いとこだけどゆっくりしっててにゃー。主呼んで来るにゃ」
「どうも、ご丁寧にタッコー」
お辞儀し返した使い魔は、タコさんだった。
「ハァハァ・・・・たこ焼きにしたら・・・・いや、ゆでたらおいしいかもにゃぁ。いかんいかん、使い魔さんなのにゃ!食料じゃないのにゃ!!」
じゅるじゅるとよだれをたらしながら、フェンリルはティエリアを呼ぶ。隣のアクラシエルのホーム遊びにいっていたのだ。
「これはこれは・・・・どうも、皇帝じきじきだそうで。何か召し上がりますか?」
「では、塩水をお願いするだタッコー」
「タコだ・・・・・皇帝の使い魔タコだよ・・・・メザーリア、どういう趣味してんだ?俺らに食えってことか?たこ焼きにしろって?それとも茹でて」
「ガビーンだにゃ!思考がロックオンと同じレベルだなんて、フェンリル屈辱だにゃーーー!!」
ボロボロ泣くフェンリルを猫じゃらしで遊ばせながら、タコの使い間をみつめる。
やっぱり、どう見てもタコだ。この前はイカの使い魔がやってきた。タコは、ねじり鉢巻をまいて、まるでマスコットのようで、実物のタコのようなグロテスクさは微塵もなく、むしろかわいかった。
「はぁはぁ。落ち着け僕。なんてかわいいんだろう。あ、塩水ですどうぞ」
「これはどうもご丁寧にタッコー」
タコの使い魔は塩水を飲むと、ポンと姿をかえた。
「内容を伝えにきた針万本」
「じゃ、ジャボテンダーさん!!」
抱きつこうとするティエリアを、なんとか羽交い絞めして、ソファに座らせる。
「はぁはぁ。ロックオン、僕はもうだめです!ジャボテンダーさんが目の前にいる!ああ、もう死んでもいい」
「主、主の使い魔は僕だにゃー!ジャボテンダーなんかにまけないにゃ!萌えなら猫語をしゃべってかわいいこの僕のほうが遙かに上だにゃ!!」
「ああ、フェンリルもかわいい。ああ、並ぶと・・・天国だー」
ティエリアの頭の中が天国になっていた。

「フレイムロードの国で、民が新教皇庁を設立した。新しい教皇は女教皇、名はやはりアルテイジア。もともとの教皇庁の者や反感をもっている者、教皇一族を集めたらしい。そのアルテイジアだが・・・・どうにも、アルテイジアを司る魔石をすり返られていたらしい。こともあろうにネイ様、あなたの妻であってジブリエル様の墓所から灰を取り出し、地下にある古代魔法科学文明の遺物、霊子学研究所で、眠っている数十万人の人間から霊子エナジーを凝縮させ、ジブリエル様の灰を混ぜてジブリエル様の肉体を復活させた。ジブリエル様の記憶をもっていらっしゃる、そのアルテイジアは。首謀者は現在のところ、教皇庁の者であったと考えられます。どうか、早急に帝国にご帰還ください。ティエリア様も。手薄になっているところをアサシンに狙われる可能性がありますので、二人で早急に。飛行船のチケットを同封いたします」
ジャボテンダーの姿になった使い魔は皇帝の声でそう述べると消えた。
ひらりと、二枚の飛行船のチケットが床に落ちた。それをティエリアが拾う。
ロックオンは、ぶるぶる震えていた。
「ロックオン?」
「ジブリエルを・・・蘇らせただと。死者を冒涜するこの行為・・・新しい教皇庁の者は反逆者として全員処刑する。地下の霊子学研究所、何か役にたつかと閉鎖のまま置いていたのが間違いだった。破壊しろ。完全に破壊だ。眠っている人間どもから霊子エナジーをとりだせないように施設そのものを破壊して、埋めろ。そうメザーリアに伝えろ」
ロックオンは、怖い顔で使い魔というより移動用のナイトメアにそう伝えると、ナイトメアは帝国に向けて空を飛んでいった。
びくりと、ティエリアが怯える。
それほどにロックオンは怖かった。
「ジブリエル・・・・待っていろ。その苦しみから、解放してやる。愛しているとも。今でも、お前もティエリアも」
「僕は・・・・ジブリエルと僕は、別人なんでしょうか?」
「少なくとも、蘇ってしまった今は別人だ。魂は、ジブリエルのものをティエリアに継承させたが。蘇ってなおジブリエルの記憶と姿をもっているとなると・・・やはり、灰を混ぜられたせいか。魂は別だろうな。別人。アルテイジアの記憶を与えられたとなると、俺の血族になることを望むだろう。でも、ジブリエルなら・・・・俺に、殺されることを望むだろう」
「僕が。僕が、殺します」
「ティエリア?」
「もともと、ジブリエルは僕。そこに二人いても、やっぱり僕なんだ。ジブリエルが望むことはネイ、あなたに殺されること。でも、ネイであるロックオン、あなたにそれができますか?愛した僕を殺すことが」
「それは・・・・」
「だから。説得して、僕がこの手で殺します。僕であるなら、分かってくれるはず」
「分かった」
こうして、二人は帝国から戻ったばかりだというのに、再び帝国に赴くことになる。刹那も、今回はチケットはないが密航という形で連れて行くことになった。


「早くきて、ネイ。私の愛しい人。そしてティエリア、もう一人の私も。ネイには無理でしょう・・・ティエリア、あなたが私を殺してください。私は自分で自害できないのです。どうか、この苦しみから、解放してください」
女王ジブリエル・ラ・フレイムロードはかつて自分が治めていた領地を見下ろした。
今の名はアルテイジア。

どうか、安らぎを。

                   to be continued・・・・・・・

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外伝を綴っているつもりが、すっかり本編です。
1期小説\の終わりから2年後?
帝国を舞台として、皇帝、王、皇族、貴族がからんでいくようなストーリー。
敵もその時だけ思いついたのではなく、王や皇族、貴族がからんでいろいろ悪巧みを。
カシナート王は、巧妙なので反逆者としての自分を見せません。
久しぶりの続く。
角〇で出たら買いますなコメント下さったあなたへ。続いてますがw
お待ちかねの新作でございます。今回〜次回もちょっと今までと違う帝国が舞台です。
セレニアが・・・途中でエレノアになってたなんてこった( ´Д`)
修正完了