「何がー哀しくてーロックオンとお風呂入らなければいけないのにゃ!?」 かぽーん。 風呂場で、フェンリルはシャンプーハットをかぶって、専用のシャンプーでロックオンに頭を洗われながら不満をもらした。 「俺だって、ティエリアと入りたいぜ!」 「主と入りたいにゃぁ」 そのティエリアはというと、契約した無の精霊アクラシエルと入ってしまった。 昨日、アクラシエルの家で、シャワーを浴びていたアクラシエルを覗いた痴漢男が捕まった。その前も、違う男にストーカーされていた。 ロックオンが、ティエリアの身を守っているし、ティエリアはそんな被害に合わないが、ティエリアと同じくらいに美しいアクラシエルは一人暮らしの上に精霊で、しかも元神様とあって常識というものを分かっていない。 見ず知らずの人間の男に誘われてついていって、手篭めにされそうになって、無の力でやっつける。 そんな日常を送るアクラシエルに、普通の生活を教えているのだ、ティエリアは。 「アクラはでも嫌いじゃないのにゃーん」 「まぁ、俺もあの美しさに最初は惹かれたからなぁ」 「この浮気者だにゃ!」 「昔のことだって!初代ネイの恋人だったんだ。もう遠い・・・・7千年も前のことだ」 「そんなに長生きなのにゃ、ロックオンもアクラも」 「まぁ、神様だったしなぁ」 「ロックオンが神様なんて笑わせるにゃ!」 「そういうこという?あひるのおもちゃ俺のものにしちまうぞ」 「にゃー。そのあひるは主が買ってくれたのにゃ!返せにゃ!」 二人して、湯船に浸かりながら疲れをとる。 フェンリルはいつものようにバシャバシャと湯の中を泳いでいる。 泳いでいるというか溺れているように見える。 「あーいい湯だ」 「いい湯なのにゃん」 一人と一匹は、あがると、ロックオンは腰にタオルを巻いたままビールをいっきのみし、フェンリルはミルクをいっきのみした。 フェンリルは器用。 フェンリル用のミルクを、ロックオンに蓋を外してもらって、瓶を固定する場所においてストローからいっきのみ。 「ふがぁ!鼻に、鼻にはいったにゃあああああ!ぎにゃあああああ!!」 水分をお気に入りのタオルで拭き取ったツヤツヤとした白銀の毛に、ミルクがこぼれる。 「にゃああああああ!!!」 「こら、あばれるな。今ふいてやるから!」 「にゃああああああああ。きゃああああああ」 ポンと、フェンリルは時折にしかとらない人型をとってしまった。男の子なのか女の子なのか分からないが、実は男の子なのだが、何故かいつもゴシックドレスを着た少女の姿になる。人型をとると。 鼻にはいったあまりの痛さに、人型をとってロックオンの髪の毛をひっぱった。 ガシャン。 大きな音をたてて、脱衣所でロックオンは美少女姿になったフェンリルを押し倒していた。風呂上りなのに、やっぱりゴシックドレス。 でも暴れてスカートの裾が太ももまでめくれてパンツが見えていた。 フェンリルのように、王族の血を引く場合、男に生まれても女に性別をかえることが可能だ。人型をとるときは、完全な少女である。 「あなたは・・・・フェンリルに・・・・なんてはれんちな真似をーーー!!」 騒ぎに2Fから降りてきたティエリアは、ロックオンを投げ飛ばした。 素っ裸で、幼い美少女を押し倒しているロックオンの図が、ティエリアの目の前にあったのだ。フェンリルは目に涙をためて泣いていた。鼻に牛乳が入ったせいなのだが。 「ご、誤解だーー」 「このドスケベー!!アクラの風呂最初に覗いたの、あなただそうですよね。この、この、無節操のドスケベバカー!!」 往復20回ビンタ。 「アクラを脅かそうとして!まさか、痴漢に間違われるなんて思ってなくて!アクラはただの友人だって!」 「言い訳は、結構です。フェンリルおいで。アクラのホームに泊めてもらいますので」 「ちょ、ティエリア、誤解だって!」 「あなたのような色魔と同じホームで暮らせません!」 荷物をまとめて、ティエリアは隣の家のアクラシエルの家に1週間泊まった。 ロックオンは、アクラシエルの家におしかけて、結局ティエリアはロックオンと同じベッドで眠るのだ。そんな二人をみて、フェンリルもアクラシエルもため息をついて、二人をアホアホカップルと名づけた。 |