血と聖水外伝「ホームその4」







「ふあー。朝食にすっか。つくりおきのカレーが・・・」
カレーの蓋をあけてロックオンはまた蓋をした。
でも、確かに鍋の中にフェンリルがいた。
カレーは綺麗にフェンリルが食べてしまった。白銀の毛をカレー色にして、茶色の子猫に見えた。
「ふにゃーロックオン、とじめるにゃー!!」
「このままことことじっくり煮込んでやるーー!!」
「お前を僕が煮込んでやるにゃー!!」
「カレー3人分はあったんだぞ!一人でかってに食うな」
「そんなこといわれてもお腹がすいて僕のお腹が悪いんだにゃ。僕のせいじゃないにゃ」
屁理屈をこねるフェンリルを鍋から出す。

「カレーくさっ!」
ロックオンをフェンリルの首根っこをつまんで、シャワールームにいくと熱いお湯を被せて全身をシャンプーで洗った。
「いい気持ちなのにゃん。下僕ロックオン」
「だーれが下僕だーー!!」
「ひゃふふふふ。主の命令に逆らえないなんて下僕だにゃ。このひも男め、だにゃ。無職!ニートだにゃ!」
痛いところばかりをつかれて、ロックオンは冷水をフェンリルに浴びせた。
「ぎにゃー!冷たいのにゃー」

リビングルームで小説を読んでいたティエリアは、また騒ぎにかけつけて、フェンリルをロックオンから奪うとお決まりの台詞。
「もう、仲良くしてくださいってあれほどいってるでしょう。フェンリルをいじめないでください」
「いや、そいつがカレー全部くって、カレーの鍋に入ってた」
「・・・・・・確かにカレー臭い。でも、フェンリルはかわいいから許しちゃう」
ロックオンをどかせて、丹念にシャンプーで体を綺麗にしてもらって、フェンリルはご満悦。

「ちくしょう、俺だって、俺だってかわいい・・・・」
「無理があるぞ、ネイ」
茶をすすっていたリエットは、がっくりうなだれたロックオンに神の祈りを捧げる。
「汝を神は救いたもう。カレーの神はこういった。カレー食いたい、今すぐ作れ」
「それ、神の言葉じゃなくてお前のわがままだろうが!」
リエットはロックオンを蹴り倒した。
「いいからつくってこい。フェンリルに食われたのなら、また作ればいいだけだ。そうじゃないと、パンツ一丁にして顔文字ロンドで町内一周させるぞ」
「全身全力をもってカレーをつくるであります、作るぞおおおお」
帝国騎士のウエマは、その頃リエットの手で牢獄に入れられていた。
ヴァンピールを治したお布施は教会にいくのだが、リエットがねこばばしたのだ。その罪を友人に被せる鬼畜ハイプリースト、これでも聖職者。
「にゃー。ふにゃーいい気持ちにゃー」
「おう、ジュースでも飲むか?」
「飲むにゃー」
ストローからオレンジジュースを飲んで、フェンリルがゲロをした。
「おええええ」
「おい、どうした!」
「まさか、そのジュースの中、阿片入ってる?
ティエリアがきくと、リエットは頷く。
「やっぱり。フェンリルはなぜか阿片を体の中にいれると吐くんだ」
吐いたというっても、わざとロックオンの頭によじのぼってカレーの中身を吐いた。

「ああもうフェンリル、その皮はぎとって肉を燻製にすんぞこらー」
カレー臭くなったロックオンは怒ってお風呂に入ったあと、こき使われるように朝食からずれて昼食になるであろうカレーをいそいそとつくるのであった。