季節は変わり、春になった。 満開の桜の下で、ロックオンは一人で酒を飲む。杯は二つあった。 「リラ・・・愛してるよ。ずっと」 その杯に酒を注ぐと、森に吸い込ませるように地面に中身を傾けた。 「今年も春がきた。リラ・・・お前が愛した森は生き生きとしている。狼たちにも、新しい命が生まれた。俺は、しばらくこのホームで過ごす。リラと同じように薬草で薬品を調合したりして、自給自足の生活を送るさ。なぁ、そっちは暖かいか、リラ?」 ロックオンの背後では、ナイトメアが控えていた。 リラの死後、ロックオンの使い魔となったのだ。 ナイトメアは死の世界を渡る魔の馬だ。 ナイトメアは、連れてきれくれた。 契約した時の言葉通り。 「かつての主の魂を連れてきた。これが最初で最後だ、我が主よ」 「ああ、ありがとな」 ナイトメアには、女神のように美しい若い少女姿のリラが乗っていた。 「本当にもう、あんたって子は。こんなことのために、ナイトメアを渡したんじゃないよ」 「してなかったから」 「何をだい?」 「さよならの、キスを」 「そうだね」 ナイトメアに乗ったまま、リラはサヨナラのキスをロックオンとした。 触れるだけの優しいキス。 「さようなら、リラ。永遠に。でも、俺は愛してるから、お前を。忘れないから。男だから、いつまでも未練たらしくはしないぜ。前を向いていきる!」 「ああ、それでこそロックオン、私が愛した男だよ。さようなら。永遠に、さようなら」 「さようなら・・・・」 ロックオンは、涙は流さなかった。 リラの魂は、ナイトメアが再び冥府へと届けた。 「さて・・・・」 桜の花を見上げて、ロックオンは思う。 「このまま、まったり生きていくか」 リラの形見のチェーンは手首に巻かれたままだ。外す気はない。 そうして、リラが予言したとおりになった。ティエリアという子と出会い、恋を再びした。愛した。もう、リラのように失うことがないように、永遠の愛の血族にした。 「とまぁ、これが俺の昔話。リラは・・・」 ティエリアは泣いていた。 「ティエリア?」 昔の恋人には嫉妬する時のあるティエリアだから、まさか泣くとは思っていなかったのだ。 「綺麗な・・・お話です。リラさん。そう、ロックオンが右手にずっと巻いてるチェーンには、そんな秘められたお話があったんですね」 「うん、まー形見だから外してない。今でも、リラのことは好きだし愛してる。そんな俺をどう思う?」 「リラさんが羨ましいと思いますけど、でも、僕はあなたの永遠の愛の血族になれた。あなたを、一人には、孤独にはしません。僕は、絶対にいなくなりません。あなたの側に、ずっといます」 ティエリアに抱きしめられて、ロックオンは目を閉じた。 (ほらごらん、もう一人じゃないだろう?お前さんは永遠の愛の血族を見つける。それはそれは大切な存在を。命をかけてまで守りたい存在を) 密かに召還したナイトメアに乗ったリラが、微笑んでいた。 ティエリアに気づかれないように、姿は透明にしてある。 (ねぇ、ロックオン。私を愛してくれてありがとう。楽しかったよ。孫として受け入れたはずが、ダーリンになってたものねぇ。今はもう、この「私」は冥界の記憶だよ。いつかまたロックオンに呼ばれることがあるかもしれないから、ナイトメアに託しておいたのさ。私は輪廻の環に入り・・・・この世界のどこかで、生きているだろうさ。あれからもう何十年もたったんだから。気づかないうちに、出会っているのかもしれないね) (そうだな。また出会えたらいいな、リラ) ナイトメアは消えた。リラも消えた。 愛しい存在は、今はティエリア。勿論今でもリラを愛している心は残っている。慈しむという感情を、人間としての生き方をいろいろ教えてくれたリラ。感謝をしている。 金色のアリア、銀色のリラのように、双子の女神のようだったアリア=リラの死から26年後、ロックオンはティエリア・アーデと出会う。 「ティエリア・・・今日は、焼餅焼かないのな?」 「焼いてますよ。プンプン」 「かわいいの」 「でも・・・二人の愛が純粋すぎて、嫉妬できません。血と聖水の名においてアーメン。どうか、リラさんの魂が安らかに眠りそしてこの世界にまた息吹を受けることを」 ティエリアは、決して神には祈らない。神など信じていない。 「その願い、もう届いてるかもな?」 「そうですか?・・・・あっ」 キスされ、そのまま押し倒された。 「ロックオン・・・・・」 「愛してるよ、ティエリア。俺のものだ。誰にも、渡さない」 「僕は、あなたのものですよ」 ロックオンを抱きしめて、ロックオンを受け入れる。 今度の愛は炎のように激しく燃え上がり、終わることがない。 「あ、あ、あ・・・・」 ロックオンと一つに溶けながら、ティエリアは満たされていく。 愛は、永遠に。この愛は、永遠。 一瞬の永遠ではなく、刹那の永遠ではなく。悠久の時の彼方を経て出会った二人は激しくも愛し合う。 リラの嬉しそうな笑い声が、ロックオンもティエリアも聞こえた気がした。 「愛しています」 「愛している」 今度の愛は、失わないから。 炎のように色をかえて、情熱的に灯火を消さない。 血と聖水の名において、あなたに愛を誓う。アーメン。 血と聖水ロックオン外伝「魔女と吸血鬼」The End Presented Masaya touha ******************************************** ギャグ形式ほんわかたっちで。 最後はエロというエロは入れてません。 愛を確かめ合うかんじですね。 アリア=リラどうでしたでしょうか。95歳の魔女ですがはじけてます。 名前に迷ったあげく、ロックオンの出発点となったこの魔女さんは物語では外伝にしか出てきませんが、重要な位置に立っているので。ロックオンに、人間としての生き方を教えてくれた師匠であり、恋人であります。 ロックオンは、ネイの時代に初代ネイに妻子(策略結婚)、5代目ネイにジブリエルと結婚してソランを産みます。初代ネイは、アクラシエルと最初は神々の駆け引きもあり恋人同士でしたが、破綻。ジブリエルを深く愛していましたが、ヴァンパイアとしての愛し方しかネイは知りませんでした。ロックオンになっても同じ。 女をとっかえひっかえして、愛しているとさえ言わない軽い男になってしまったロックオンに、愛の大切さを悟らせて教えてくれたのが、アリア=リラです。ばあさんのお茶目ぶり、なかなか気に入っております。 物語の構想は決まっていたのですいすいかけました。書くまでに時間がかかってしまいましたが。 アリア=リラがいたから、ティエリアを深く大切に愛せるというかんじでしょうか。 楽しみにしていますと待っていてくださったミホリ様に捧げます。 こんな感じでいかがでしょうか。 |