「マロンちゃん、さよならにゃ」 「ゼイクシオンちゃんも、さよなら!」 保護監察官に保護されたマロンは、足を降って、自分を助けてくれたフェンリルに深い感謝をした。 アイシクルは精霊界に戻り、ティエリアとお巡りさんたちと一緒にバルワーズの屋敷をあとにする。 剥製の所持などは、灰にされてしまったが、執事や使用人たちが証言したので、動かぬ証拠となった。 「フェンリル偉いね。でも、どうしてフェザーキャッティの子供が捕まっているって分かったの?」 ティエリアの頭の上で、フェンリルも首をかしげる。 「頭の中に直接、声が聞こえたのにゃ。助けてって」 「ああ。フェザーキャティは、いろんな特殊能力をもっているから。種族同士でテレパシーで会話するそうだよ。フェンリルも子猫だから、きっと声が届いたんだね」 「子猫でも、立派にゃフェンリルにゃー!」 フェンリルはえっへんと胸を張る。 後日、交番の巡査の手で賞状とメダルをもらった。 「にゃにゃーん。メダル綺麗なのにゃーん」 首輪の形になったメダルをつけて、フェンリルは嬉しそうだった。 「ど、どうしよう。ロックオン・・・・」 居候のリエットが、ロックオンの体を揺さぶる。 「な、なんだよ!また鼻くそほじったのか!?それとも、うんこでももらしたか!」 「ロックオン、下品ですよ!」 ティエリアが、フェンリルを頭に乗せながら嗜める。 「いや・・・昨日酔いすぎて・・・・・アクラと一緒に酒飲んでて・・・・俺も、アクラも吐いちまって。お前の部屋で。アクラ、心臓も吐いちまって・・・・俺踏んづけちまって、呼吸が止まってる」 「ちょ、それまじやべぇから!!」 隣に住む精霊のアクラシエルは、よくこのホームに遊びにくる。 なんでも体の中にとりいれ、吐く。胃は四次元ポケットらしい。ただ吐いて、普通に道具を出すのだ。この精霊、内臓も一緒に吐くので心臓に悪い。 「ちょ、アクラァ!」 ティエリアも慌てて、ロックオンの部屋にかけこむ。 そこには、動かないアクラシエルが。 「死ぬな、おい、まじで俺が悪かった!」 リエットが謝りまくる。 「死んでないから」 アクラシエルは、呼吸を止めたまま起き上がった。心臓はぐちゃりと潰れている。 「心臓潰れた。ネイ、どうしよう」 「再生させろ!」 「分かった。再生の道具を。おえええええ」 「いちいち吐くなあああ!!」 「う、俺もまた気分悪くなってきた、おえええええええ」 リエットは、ロックオンの床に用意していた洗面器に吐いた。 帝国騎士のウエマは、アクラシエルの心臓をリエットが踏み潰した時点で気絶した。グチャって、心臓グチャって踏み潰して血がぶわああって飛び散って、ロックオンの部屋は血まみれでスプラッタになっていた。 二人は洗面器を用意して吐いていたようなのだが・・・・アクラシエルは内臓も吐くくせがあるので、注意が必要だ。 「メダル綺麗だにゃ・・・うう。リエットの・・・・もらいげろだにゃ。おえええええええええ」 フェンリルは、昼食をロックオンの部屋で吐き戻した。 「うわああ、フェンリル、しっかりして!!」 一方、アクラシエルは再生の道具で心肺停止状態のまま動いて心臓を再生させている。もう滅茶苦茶だ。 「だめだ、我慢できねぇ」 リエットは、ロックオンの服で鼻をかんで、そして鼻くそをほじった。 「俺の服でするなああ!!」 「んなこといっても、でっかい鼻くそがあったんだよ!とらないとスッキリしねーんだ!」 「ティッシュでしろ、ばかやろう!!」 ゲロとか鼻くそとか心臓再生とか。もうありえないことが普通でおこっている。 ちなみに、もらいゲロしたフェンリルは、ティエリアに看病されている。 「どないしろっていうの、これ!」 ゲロと血と、リエットの鼻水と鼻くそにまみれた部屋と自分の服をみて、ロックオンは天井を仰いだ。 「浄化の精霊よ、清めたまえ」 浄化の精霊は清めてくれたが、なぜか鼻くそはそのままだった。 「浄化の精霊ーー!!」 「鼻くそは嫌いであります!!」 敬礼して、浄化の精霊は精霊界に戻っていった。 結局、服は手もみ洗いするしかない。 「にゃーん。今日もおでかけだにゃーん」 ゲロってすっきりしたフェンリルは、ティエリアから交番の人へのお土産の手作りアップルパイを風呂敷に包んでもらって首に巻いてお出かけする。 「今日も、元気でありますか、フェンリル巡査!」 「元気なのにゃー!主からお土産、手作りアップルパイにゃ!一緒に食べようにゃーん」 「光栄であります!」 「皿を用意するであります!」 「フェンリル君、元気そうで何よりだ」 交番の巡査は、フェンリルを頭に乗せてみた。 「ああ、この状態。夢にみたフェンリル君を頭に乗せてみた!」 「巡査、かっこいいであります!」 「羨ましいであります!」 「私もあとでしたいであります!」 今日も、ティエリアとロックオンと居候のリエットにウエマ、隣に住むアクラシエルは元気。交番のお巡りさんも、それに負けないくらい元気一杯。フェンリルは今日も町を散歩しては、みんなに可愛がられて仕方ないのであった。 ************************************ フェンリルの大冒険。 中編であります! ちょっと最近執筆が滞りがちなので、リハビリかねて。 |