神に見捨てられた天使は、堕ちることもなくこうして永遠の眠りについた。 地上の天使と歌われたティエリアの歌声は、二度と誰も聞くことはできなかった。 「おやすみ・・・・」 小さくなっていく棺を、涙を流してロックオンは見送る。 その時期だったのか、一緒にみた流星が雨のように降り注いでいた。 「まだ、降ってたんだ。願い・・・・いっぱいしたのにな。叶わなかったな」 「カナワナカッタ、カナワナカッタ」 「ハロ、機体頼むな」 「タノマレタ、タノマレタ」 ノーマルスーツ姿で、コックピットを開けて、ロックオンはトレミーに自動で戻るダブルオーライザーに手を振った。 「いろいろあったなぁ。いろいろ。ティエリア、お前に出会えたことが、俺の幸せだよ。もう一度出会えて嬉しかった。おやすみ、ティエリア・・・・・俺がとる選択肢なんて、決まってるだろう?俺は、世界の、いやティエリアの「夢」なんだから。ティエリアがいなくなっても生きていられるけど、そんなの選ばない。置いていかれる側の気持ち、やっと分かったよ。俺ってバカだよな。つくづくバカだよな。今更気づくなんて」 「ロックオン、ロックオン」 遠ざかっていくダブルオーライザーのコックピットで、無人となったその場所でハロはひたすら相棒であるロックオンの名前を呼び続けた。 そう、あの時みたいに。 ロックオンは宇宙を漂い続ける。 大分流れた。 小さいが、地球が見えた。 それに手を伸ばす。 「よお・・・・お前ら、満足かよ、こんな世界で。満足だろうな。俺も満足だ・・・・でも、叶えられなかったんだ。最後まで。守れなかったんだ。側にずっといるって誓ったのに・・・約束破ったのは、最初は俺だったな。そう、これは報いなのかもな。約束を破った俺への・・・辛過ぎるぜ、ティエリア。お前のいない世界で、幸せなんてなれるもんか。お前がいて、そこで俺の存在意義があって、俺は幸せになれるんだ・・・・・」 地球に手を伸ばす。 地球はどこまでも蒼かった。 人類を、最初に生み出した母なる星よ。 俺も、還るよ。 宇宙へ。 エメラルド色の蝶が数え切れないほどロックオンの周りを待っている。ロンドのように、舞い続ける。 ポッ、ポッ・・・・。 それは光の波紋のように。 ロックオンは、かつてアンドロイドに魂が宿ったロックオンがエメラルドに光に溶けて消えてしまった時のように、指先から、髪の先から、淡いエメラルドの光となって溶けていく。 世界へ。 溶けていく体は、エーテルとなり天に還る。 「ロックオン・・・・!」 ティエリアの声が聞こえた気がした。 光に溶けていく中、ロックオンは12枚の光の翼を見た。 「ああ・・・・地上の天使って意味、そうだったのか。似合ってるよ、その翼・・・なぁ、俺も欲しいな。あったら、いつでもお前の元に飛んでいける、そんな気がする」 光の羽毛が舞い落ちる。 天使は、手を伸ばした。 エメラルドの光が弾ける世界の中で、ロックオンは地球に向かって伸ばしていた手を向ける。 しっかりと、手は握られ、12枚の翼が羽ばたき、そして世界から消えた。 ロックオンの体は完全に光となって消え去った。 いつだって、いつだって。 君だけを、あなただけを。 愛してるから。 さようなら、おやすみなさい。 この翼で、君の、あなたの手を握り締める。 永遠に、愛しているから。 心の愛が生んだ幻想は、愛という名の奇跡。 天使たちの夢は終わった。「夢」は幻想を真実にして二人を繋げた。 いつだって、いつだって。 君だけを、あなただけを。 愛してるから。 愛し続けているから。 出会ってくれてありがとう。 愛をくれてありがとう。 いろんな思い出をありがとう。 いろんな記憶をありがとう。 忘れな草のように、どうか忘れないで。 どうかどうか。 天使たちは、祈ることを夢を見ることを止めた。 いつまでも、エメラルド色の蝶が、宇宙の深淵で舞い続けている。 ふわふわ。 宇宙を浮かぶのは、ティエリアのメッセージカードと忘れな草の押し花。 そこに、ふわりと、白い羽が舞い落ちて、静寂の中消えていった。 I love you only....... 神に見捨てられた天使 The End Presented by Masaya Touha............... ************************************************ お疲れ様でした。 読んでくれた方にも、書き終えた自分にも。 はじまりは夢の中。小説を夢の中で思いつくなんて奇想天外。 何か長編小説を書こう・・・しかし、原作ネタは打ちつくしたかんじが。「ユダ−背徳の罪−」に似た小説を打とうと考えて、出だしだけはなんとか考えて、どうせなら時間系列ありで、ラブファントムUの続編にくる物語でと。 またもた天使ですか。もう天使しかねーんですよ。ジブリールはいろいろと出てきますね。 長編にちらほら。 最後は、結婚式を挙げて、何も言わずティエリアが死んでしまう、と決めていて、ロックオンは心の愛が生み出した幻想だった、とかスカイプのちゃっとうってる間に設定きまって、もうこれはうつしかと、萎えかけていた創作意欲がいっきにわいて最後までうちました。 評価も読んでどう想うかおも人それぞれ。 自分としてはよい物語になったと思います。 いつもお世話になっている空也さまへ。 |