それから、目まぐるしく変わっていく。 ティエリアは、いつものように、刹那の部屋に戻り、時折ライルの部屋にも眠りにくる。 いつものように、ジャボテンダーを抱きしめて。 「ティエリア」 「はい?」 「服脱げよ」 「えっと、するんですか?」 「ばか、違うよ。確認したいんだ」 ライルに制服を上だけ脱がされたティエリアは、視線を彷徨わせる。 ライルはティエリアの肩甲骨の上にある、GN粒子の光を放つ天使の紋章に、傷が残っていないのを確認すると安堵して、制服をティエリアに渡した。 「?」 「よかった。傷痕、残ってない」 「ああ、僕は体の治癒能力が高いので」 「そういう問題じゃねーよ」 ぎゅっと抱きしめられて、ティエリアの涙腺が潤む。 「お日様の、匂いがする・・・」 ロックオンと、同じ匂いが。 「なぁ。抱いていいか?」 「はい」 「あああ」 肩甲骨の天使の紋章に何度もキスをされて、ティエリアはライルを抱きしめた。 「兄さんも、こんな風にしてた?」 「そうです」 「この紋章、綺麗だな」 「僕も、気に入ってるんです」 「天使みたい」 「天使じゃありませんよ。僕は人間です」 「なぁ。はじめに、兄さんじゃなくって俺と出会っていたら、俺の恋人になっていた?」 「さぁ。どうでしょう。考えたこともありません。それに、あなたもアニューと出会わなかったことなんて、考えたこともないでしょう」 「そうだな。考えたこともない」 キスの雨を全身に受ける。 優しい愛撫は、全身を溶けそうにさせてくれる。 「ん・・・・」 「きつい?」 「大丈夫」 体をすすめるライルは、ゆっくりと動いた。 「ああ・・・」 「もっと啼いて?」 「許されたい、です。僕は・・・・・・」 「俺はもう許してるよ」 「そうじゃなくて・・・・」 「何に、許されたいんだ?」 「きっと、世界に。そして全てに」 「なんだそりゃ?」 ティエリアのいっていることは、壮大すぎて理解できなかった。 ティエリアは、なんだかふわふわと夢をみているような人間だと、再び思うようになった。芯はしっかりとあるのに、時折ここではないどこかをみている。 それが何処を見ているのか分からない。 窓から星を見上げている時間も多い。 全てという言葉が、ライルの胸を過ぎる。 なんだか、殉教者のようで、不安になった。そのたびにティエリアを抱きしめた。 ティエリアからは甘い花の香りがして、いつも不安はすぐに吹き飛んだ。 美しい笑顔は、とても綺麗でアニューに何処か似ていると思った。アニューの、最期の笑顔に、何処か似ているのだ。顔立ちはアニューよりもはっくきりと美人だといえるが、何処か似ていた。 ティエリアは、自分からライルに口付け、舌を絡める。 「きっと、分かります。もう少しで」 「?」 ライルは、そのままティエリアを抱いた。 それが、ティエリアを抱く最後の夜だった。 もう、ライルはティエリアに肉体関係を求めなくなった。 そして、ティエリアはいつものように刹那の部屋で生活をしだした。 時折ライルの部屋にも眠りにやってくるが、本当に一緒のベッドで眠るだけ。 憎悪や怒りは、いつの間にか綺麗に昇華していた。 石榴の瞳と、金色の瞳を両方もつ天使。 きっと、ティエリアは天使だ。 ライルは歌を歌うティエリアの歌声を聞いてはそう思うようになった。 「許されたたい。僕は、全てに」 それが、ティエリアの口癖になっていた。 NEXT |