永遠の果て「永遠の果て」







「おはよう、ニール」
「おはよう、ティエリア」
二人は大学卒業と一緒に結婚式を挙げた。
新婚旅行は地球のアイルランドだった。そこで、また忘れ名草の絵画を見た。
導いてくれたのは、全て忘れ名草の気がする。
二人の花屋の名前も忘れ名草だ。

二人は、花の世話をしながら、幸せな時間を送っている。
来年には子供が出来る。女の子らしい。今、妊娠7ヶ月めだ。
「あんまり、無理するなよ。お腹の子になにかあったらどうするんだ」
「あなたは、そればかりですね。毎日寝ているほうが健康に悪いです」

二人の前に、文字が浮かんだ。
天使たちの夢は終わりました。まだ続けますか?
続ける 続けない
二人には、もうその文字は見えない。
選択する者もいない。
そう、これは天使たちの夢の続き。天使たちはあの続きが見たいと願い、そしてまた夢を見た。何度も、はい、いいえの選択を誰かがはいを選択して、天使たちの夢は続いた。
はい いいえ もう見たくない
新婚旅行の先で、二人は「もう見たくない」を選択した。
そして、天使たちは夢見ることをやめた。
なぜなら、もうこれは天使たちの夢ではないのだから。この世界にある、真実なのだから。
二人は千年の永遠の果てに出会い、記憶を持ったニールと記憶を持たないティエリアは、けれど再び記憶を取り戻して、そして永遠の愛をまた誓いあった。
もう、二人は二人の人生を歩んでいる。
その背中に12枚の翼はもうない。
ティエリアが自分の天使と交わした契約は成され、成就してそれは新しい命となり、今はティエリアのお腹に宿っている。
千年かけてきたティエリアとニールの魂が別れと出会いの果てに融合した結晶が、今ティエリアの体内ですくすくと育っている。
今でも、ニールとティエリアに過去の記憶はある。
でも、魂はもう違うのだ。
天使たちが夢見ることをやめた。魂は、やっと解放されたのだ。そして、二人は12枚の翼を生やして至高天へと昇り、そこでジブリールの手によって一つとなった魂は再び現世に流され、ティエリアから生まれてくるニールとの愛の結晶という選択を選んだ。
もう、そこに文字は浮かんでこない。

「ティエリア、ほら」
ニールは、手作業を休めて、一輪の白い花をティエリアの髪に飾る。
「よく似合ってる。俺のお嫁さんは世界一の美人だぜひゃっほう」
「じゃあ、あなたにはこれを」
ティエリアは、なすをニールの頭に乗せた。
「なす!?俺はなすなのか!?」
「ふふふ・・・・あっ」
「どうした?」
「今、赤ちゃんがお腹をけりました」
「おお。俺も分かるかな?」
ニールはティエリアのお腹に顔を近づけて、そして手でそっと触る。
ドシン。
小さいけど、元気のよい響きがちゃんとニールにも伝わった。
「おー元気そうだな。こりゃ、生まれてきたらおてんば娘になりそうだ」
「あなたに似ると、そうなるでしょうね」
「いや、ティエリアもなかなかにおてんば・・・・」
「ティエリア」
ティエリアは顔をあげると、そこにはアレルヤが立っていた。お洒落をして、二人を眩しそうに見ている。
「あ、アレルヤ。また、マリーにお花を?」
「うん。何かいいの見繕ってくれないかな」
元婚約者のアレルヤは、同じく来年マリーという女性と結婚が決まっている。今日は休み。これからデートなのだろう。
「今日は綺麗なカトレアの花が入荷できたから。これと霞み草と、あとピンクの百合に・・・・」
出来上がった花束に、アレルヤは感動した。
「いつもいいセンスしてるよね。はい、代金」
「毎度あり〜」
ニールが決算をすませる。
「なぁ、聞いてくれよ。さっき、ティエリアのお腹の子が、ティエリアのお腹蹴ったんだ」
「へぇ。元気そうだね。早く生まれてくるといいな。僕とマリーの間の子は絶対男の子だと思うんだ!ぜひとも結婚させたい」
「気が早すぎ、アレルヤ」
ニールはけらけら笑う。
「あ・・・・・・・」
白い羽毛が、舞い散る。

12枚の翼をもったティエリアがティエリアの前に立っていた。
「どうしたの?」
「いいえ。ただ、メッセージを告げに」
「メッセージ?」
「はい。あなたとの契約は成就し、そして私の魂とニールの魂は天使たちの夢から解放され、一つとなりました。その魂が、あなたのお腹の中の子」
「このお腹の子が?」
「そう。千年かけた私とニールの魂の結晶。どうか、愛してあげてください」
「愛するよ。勿論。ニールと一緒に育てていく」
「ありがとう・・・・」
ティエリアの天使は、背後から現れたニールの天使に後ろから抱きしめられて、光の泡沫となっていく。
「さようなら・・・・もう一人の、私」
「さようなら・・・・過去の、私」
ニールにも見えているようで、ニールも二人の天使が光となって完全のこの世界から消えていくのをじっと見ていた。
瞳から、涙が流れる。
ティエリアもニールも、涙を流していた。
「さようなら、ニール」
「さようなら、俺が愛したかつてのティエリア」
天使のティエリアは、石榴の瞳から涙を流すと、背後のニールとキスをしてそして完全に世界からいなくなった。
かつて、天使が夢見る幻のニールが世界から消えるとき、ニールを攫っていったのは天使のティエリアだった。あれから、さらに数百年。
はじめてティエリアと出会って、千年だ。
永劫回帰。永遠の果てに、再び出会いまた愛し合う二人。
永久時間。二人の愛の記憶は、天使たちの夢でできた愛は永久に消えることはない。

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夢はたくさん見ました。あれから何百万年も経ちました。あなたは、自分が誰であるか知っていますか?
はい いいえ
浮かんできた文字を、ジブリールははいを選ぶ。また再生される記憶。二人の愛の千年の結末は、今世界で時とともに刻まれている。
「ルシフェル、思い出した?」
「ああ。俺は、そう何百万年前だろうか。人間の頃は、ニールって名前だったんだな」
「そうです、あなたは、ニールでした。そして、私はティエリアという名前でした。今はジブリールですが」
美しい貴婦人は、至高天から落ちて今は翼も黒くなり、今はルシフェルの宮殿にいる。かつて愛した天使ルシフェルの側に。
至高天と人間界では流れる時間の速度が違う。
「夢の続きを見ますか?」
「夢などいい。お前が側にいれば。それに、あれは夢などではない。俺たちが、人間であった頃の記憶だ」
「そうですね」
ジブリールは、ルシフェルの傍ら、カウチに寝そべった彼の側にやってくると、カウチの上に手と顔をもたせ掛ける。
紫紺の髪がサラサラと零れていく。金と石榴色のオッドアイの貴婦人。
人間の頃の容姿をどこかにとどめている。
ルシフェルも、柔らかな茶色の髪にエメラルドの瞳と、人間であった頃の名残があった。
「永劫の果てに、私は堕ちた。でも、後悔はしません。あなたがいるから」
「後悔など、お前と出会ったころからなかったよ」

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「ありがとう、天使の私、天使のニール」
「ありがとう、天使の俺、天使のティエリア」
ティエリアとニールは、世界から消えてしまった二人に感謝の言葉を残す。
二人がこの世界でまたティエリアとニールを導いてくれたのだ。そして、今度こそ二人は幸せになることができた。こうして、二人一緒に幸せに側に寄り添いあい結婚して生きている。
二人の残した羽毛は光となって、ティエリアのお腹に吸い込まれていった。
二人の魂は融合し、そしてティエリアの中に宿っている。

青空を見上げる。
そこには、久しぶりにみる文字が浮かんでいた。

あなたは今、幸せですか?
はい いいえ

二人は、微笑みあって「はい」を選択するのだった。

天使の夢の続きは、こうしてストーリーをつづり、今も続いています。
あなたは、この続きを見ますか?

はい いいえ



                         永遠の果て The End
                                            Presented by Masaya Touha......and thanks all

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なんだか。かなり途中で物語変えたりしたけど、途中からはすんなりといって、そして結末はあれ?ってかんじになりました。
こんな終わりではないはずだったのだが・・・・まぁでも、こんなのもいいかなって。
なんだか、綺麗なストーリーになったような気がします。
ワンシーンが絵になって浮かんでくるような。
はい いいえ
この使い方が不思議な味を付け足してくれることでしょう。
ミホリ様、タチバナ様、空也さまへこの物語を捧げます。神に見捨てられた天使の続編、ハッピーエンドで・・・でもどこか不思議なお話になっているといいな。

あなたの前に、文字が浮かんできました。
あなたはこの物語を読んでよかったと思いますか?

はい いいえ