ティエリアの体が耀いた。 「契約、しただろう?契約完了してるから、さ。連れて行く」 「連れて、いってください」 「分かってる?俺の行く場所ヘルファイア。もう二度と、人間世界には戻れないんだぞ?」 「構いません。あなたが、側にいてくれるのなら。世界から追放されてもいいと、言ったでしょう」 「上出来だ」 バサリと、ティエリアの背中に12枚の白い翼が生えた。 「え・・・・?」 「思い出さないか。お前は、ジブリール。そう、かつて数百万年前まで俺の恋人のティエリアだった。そして悠久の時の彼方、天使となりジブリールの地位につき、そして俺たちはまた至高天で恋人同士になった。俺が先に堕ちて、そしてお前は・・・・・」 ティエリアの12枚の白い翼は、すぐにフォールダウン、漆黒へと染まっていく。 「ええ、思い出しました。私は、あなたを追って、堕ちた。あらゆる世界で昔の自分たちに干渉しすぎて、人間になりたいと願い、神を裏切った」 ティエリアは、真っ黒な翼をもった貴婦人になっていた。 姿かたちはティエリアそのもの。 瞳だけが石榴色と金色のオッドアイになっている。 貴婦人といっても、性別は中性のままだ。女性であると歌われたジブリールであるが、それは装束や見た目、性格からだ。実際は、昔のように中性のまま変わらなかった。天使に性別はない、とされているが、この世界の天使たちは性別をもつ。そのどれにも属さないものは、神の寵児とされ尊ばれる。 そう、ジブリールは至高天において最も神に愛された天使であった。 ルシフェルと出会い、全てが変わった。彼がフォールダウンし、そして他の天使たちにフォールダウンするのではないのかと心配され続け、そしてその通りになった。 「なんと、呼べばいいですか?ルシフェルと?それともロックオンと?」 「ロックオンでいいよ。ティエリア」 「はい」 ティエリアは、ロックオンに誘われて、ヘルファイア、地獄へと続く扉をくぐる。 ************************* 宮殿で、ジブリールは目をあける。 側にはルシフェルがいた。 「どうした。夢を見ていたのか?」 カウチに寝そべっていたジブリールは、自分が人間のティエリアであった頃のことを夢見ていた。 そう、ジブリールとなる時、ルシフェルが迎えにきた。 そして時間を逆行し、天使として至高天にあり続け、その果てにルシフェルを追って堕ちた。 「永遠の果ての二人の続きを、見ようと思って、自分の過去を夢見ていました」 「そうか。俺は少し出かけていた。置いていってすまなかった」 二人は、キスをして、そしてティエリアはロックオンにしなだれかかる。 「ロックオン、未来永劫の果てまで、あなたの側に」 「ティエリア、永劫の果てが終わっても、お前の側に」 二人は、名前が変わっても、本質は変わらない。 それが、永久凍結した二人の愛なのだから。 「ほら、忘れ名草だ」 ロックオンは、ティエリアに一輪の忘れ名草の花を見せた。 「また、あの切り取ったエデンの花園からとってきたのですか?」 「まぁ、そんなところだ」 夜明けはこの世界にはない。 いつも漆黒の闇、夜が世界を覆っている。 永遠に、夜明けはこない。 だから、もう祈る必要はないのだ。 会いたいと、祈る必要は。 だってほら、すぐ側にいるんだから。 「愛しています」 「愛してるよ」 二人は、黒い翼で互いを覆い尽くしながら闇の彼方へと沈んでいく。 「話してくれないか。お前が見た夢を」 「いいですよ」 ティエリアは、紫紺の髪を耳にかけて、ゆっくりとロックオンに語りだす。 「私は、あなたの墓参りに訪れるのです。そして、そこで・・・・・」 ゆっくりと、再生される物語。 水鏡に映るティエリアが見た夢を、ロックオンは懐かしそうに見ている。 「きっと、あの時した契約は、私に堕ちろということだったのですね」 「さぁ、どうだろうな。選んだのはお前だ」 至高天にいた頃は幸せだった。 でも、一人残されて嘆き哀しんだ。 もう、その必要もない。 夜明けの祈りは永遠にこない。夜明けがこないから。 二人のいる部屋から見える月は、血を流したような真紅で、二人をずっと照らしていた。 ずっと、ずっと。 それは繰り返される物語。永遠の果てのさらに果ての先にある物語。 未来永劫、永久に側にあることを、誓い合った二人だけの。 真っ黒な羽毛は、地面に落ちると光の泡沫となって消えていく。 「もう一度、夢を見ましょうか」 「どんな?」 「あなたと、愛し合い引き裂かれた哀しい夢を・・・・」 水鏡から文字が浮かんでくる。 新しい物語が紡がれようとしています。見ますか? はい いいえ 二人は無言ではいを選択すると文字は消えた。 「はじめまして。俺はロックオン。で、こいつは俺の相棒のハロ」 「はじめまして。僕はティエリア・・・・・」 新しい物語を、あなたも一緒に見ますか? はい いいえ ******************************** 永遠の果ての続きみたいな。 ルシフェルとジブリールの元がロックオンとティエリアって設定が気に入って。 あんまり感動も何もないお話ですけれど・・・・。 暇つぶし程度に。 |