歌声







「だめよ、まだ起きちゃ」
刹那は、痛み止めが切れてまた目をあけた。
アリーの銃によって負傷した刹那は、マリナたちが身をよせるカタロンの隠れアジトにダブルオーライザーの機体をとめて、コックピットから降りるとそこで意識を失った。
まるで、誘われるように、マリナの歌声がここまで導いてくれた。

マリナは古い古いオルガンをひいて、子供たちと歌っていた。
平和を求める、歌を。

「俺は・・・・変わる。ロックオン・・・・あんたの分まで」
「刹那?」
刹那は天井を見上げて、また目を閉じた。
兄のように慕っていた。ロックオン、ニールを。いつまでも一緒にいれるのだと信じていた。
声をかければ、いつも笑って、頭をぐしゃぐしゃとかきまわしてくれたロックオン。
刹那に兄はいない。もしも兄がいたなら、あんなかんじだろうと刹那は思う。
「ロックオン・・・・・」
刹那はうなされながら、涙を流していた。
救えなかった。
家族のように大切だった。仲間だった。大切な。兄だった。尊敬していた。慕っていた。
ティエリアが夢遊病のようになったのも分かる。
自分でさえこんなに胸が苦しいのだ。まるで恋人を失ったかのように。
ティエリアの心の傷は、こんなものではないだろう。
「疲れているのよ、刹那。眠って全部忘れてしまいなさい、今はせめて」
刹那はすでに眠りについている。
ロックオンを助けられなかったことをずっと悔やんでいた。
マリナの歌声は、その悔恨を洗い流すかのように刹那の胸に浸透していく。

ロックオン。俺は、変われるだろうか。
あんたの分まで。世界を変えれるだろうか。いや、変えてみせる。
あんたの分まで。

刹那は涙を流す。
そう、ロックオンが死んだ時ずっと我慢していた涙を、マリナの歌によって呼び覚まされた。
ロックオンの声を聞いた。もういない彼。
大切だった俺の仲間。友人。兄。家族。ロックオン。ニール。

「マリナ・・・もっと、歌ってくれ」
「刹那、大丈夫?ええ、もっと歌うわ。あなたの魂が、少しでも安らぐように」

少しだけ意識を取り戻した刹那は、マリナに懇願する。
マリナの歌声を聞いていると、心が洗われる。
ずっとそうしていたいが、仲間が待っている。でももう少しだけこうしていたかった。
マリナ。愛していると思う。この愛が偽りでなければ。
マリナの歌声は、何処までも透明に響いていた。

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ロク刹に刹マリ。どんなCP