ミス・スメラギは原稿の締め切りに追われながら、必死で漫画をかいていた。 締め切りはあと3日。 ティエリアに頼んだギャグ漫画はもうできあがっている。 同じく、ティエリアに頼んだ小説も。 「あああああああ!あああああああああ!!!」 髪を振り乱して、ミス・スメラギは叫んだ。 そして、部屋に備わっていた冷蔵庫からワインを取り出すと、らっぱ飲みした。 飲んでも、酔うほどまでは飲まない。 締め切りがあるのだ。 ちゃんと、自重する。 漫画の中の台詞をいれる。 (ウェスト62センチなんて、細いわね!もっと肉つけなさい!) 登場人物の台詞に、ミス・スメラギは自分の腹の肉を掴んだ。 むにゅ。 その肉に、ミス・スメラギはまたワインをらっぱ飲みした。 そして、もうだめだと、内線コールでティエリアを呼び出す。 「締め切りまでに終わりそうにないのよ!お願い、手伝ってちょうだい」 「またですか。もっと早くからとりかからないからです」 「おい、またミス・スメラギからか?」 「ええ。締め切りが近いそうです。すみませんが、埋め合わせはしますので今日はここで」 「あいさー。ティエリア、無理だけはするなよ」 「ええ、ロックオン」 電話の向こう側から聞こえてくる、仲むつまじい恋人同士の声に、ミス・スメラギはまたワインをらっぱ飲みした。 なんなのよ! なんなのよ、なんなのよ! こんなにも綺麗な私がいるっていうのに、クルーのみんなったら、女を見る目がないわっ! また、ワインをらっぱ飲みする。 それが一番の原因であると、ミス・スメラギは気づいていない。 ミス・スメラギに彼氏ができないのは、その酒癖の悪さが一番の原因であった。 恋仲になりそうな雰囲気に、ミス・スメラギが泥酔するまで飲んで、相手に迷惑をかけまくる。それが一度や二度ならいい。何度も何度も、相手が止めても酒をやめない。 酒を取り上げると、ミス・スメラギは逆上する。 気の強い女性が好きな男でも、泥酔した上に、呂律のまわらない舌で文句をたれまくり、あげぐの果てにはビンタをしてくるミス・スメラギと付き合うような物好きはトレミーの中にはいなかった。 カタギリが、唯一ミス・スメラギの酒癖の悪さを知りながら、密かに恋心を寄せているかのようだが、それでもあまりの酒癖の悪さに、告白できないでいる。 「こんなの美人なのに!本当に、ロックオンもどうかしてるわ!」 ロックオンとミス・スメラギは年齢がつりあう。 付き合うなら、理想だろう。 だが、ロックオンはまだ子供であるティエリアを選んだ。 それはそれは大切に、ティエリアを扱う。ティエリアが無性の中性体であることを知っているミス・スメラギであったが、一応は相手は男性(あくまで自我が)である。 男性にまで負けるなんて。 お腹の肉をつかむ。 むにゅっ。 またウェストがきつくなってきた。 胸だけはダイナマイトボディを維持したままでかいし、ヒップだって綺麗な形をしている。 だが、ボン、キュッ、ボンの肝心のキュッである腰のラインが最近崩れかけている。 それが、不摂生な生活と、いつも飲む酒のせいだとミス・スメラギが気づいていなかった。 「ミス・スメラギ。あけてください。ティエリアです」 扉がノックされて、ミス・スメラギはロックを解除した。 そして、部屋の中に漂う酒の匂いに顔をしかめる。 「また、飲んでいるんですか。締め切り前くらい、控えてはどうですか」 「ティエリアには分からないわよ。一人身の女の寂しさなんて」 ティエリアは、いつものように愚痴を零すミス・スメラギを無視して、途中で放り投げなれた原稿を手に、すでに下書きが終わり、あとはペン入れとトーンをはるだけなので、それを手にミス・スメラギを振り返った。 「たまには、ちゃんとした規則正しい生活を送ってはどうですか。原稿は、僕が全部かきあげますので、締め切りの三日間は、規則正しい生活をしてくださいね」 ため息をついて、原稿を手に、ティエリアはミス・スメラギの部屋を後にしようとする。 部屋のロックがかけられた。 「ミス・スメラギ?」 ミス・スメラギはメジャーを手に、自分のウェストを測っていた。 そして、肉をむにゅっと掴むと、絶望の声をだした。 「ああああああああ!!4センチも増えたあああああああああ!!」 髪を、ロックバンドの歌手のように激しく振り乱すミス・スメラギに、ティエリアの頬が引きつった。 そして、ミス・スメラギはティエリアの前にくると、その服をめくりあげ、ウェストを測りだす。 「何するんですか、止めてください、ミス・スメラギ」 「54センチ。・・・・・・・・・・・・・ああああああああああああああ!!!!!」 また、ロックバンドの歌手のほうに激しく髪を振り回す。 「ティエリアあああああ!」 「なんなんですか。酒臭いです!」 「細すぎよおお!もっと肉つけなさい、肉を!私の肉をあげるわ!!」 自分の腹についた肉をムニュっと掴んで、ティエリアに遅いかかる。 ティエリアは、原稿をテーブルにおくと、さっとミス・スメラギの攻撃を避けた。 ベチャリ。 床に沈没したミス・スメラギに、冷たい一言。 「酒は案外カロリーが高いんですよ。それを毎日ばかみたいに飲みまくるからです。不摂生の生活に、酒の飲みすぎ。ウェストが太くなっても、自業自得です」 「ああああぁぁぁっぁ!!ティエリアのウェストが憎いいいいいいい!!」 心底憎そうに、歯軋りするミス・スメラギに、ティエリアは気にしたそぶりも見せない。 「僕のウェスト細いのは、生まれつきです」 「だからって、細すぎるわ!もっと肉をつけろおぉぉぉぉぉ!!」 地獄からの叫び声のような雄たけびをあげるミス・スメラギ。 「僕は、過剰にカロリーを摂取しても、熱として逃げいくように体の構造ができていますので。残念ながら、あなたのウェストのように太くなることはありません。これにこりたら、少しはダイエットもかねて、酒を控えてはどうですか?」 「ムキーーーーーーーーーー!!!!」 地面をかきむしるミス・スメラギを残して、ティエリアは部屋を出た。 そして、部屋を出ると、原稿を片手に大きく息をついた。 「54センチか・・・。この前は56センチだったのに。流石に、ちょっと細くなりすぎかな。もう少し食べるか」 元の体格から細くなったのであれば、元に戻ることはできる。 「お、ティエリア、どうだった?」 ミス・スメラギの酒癖の悪さを知っているロックオンが、心配になって、ミス・スメラギの部屋の前でまっていた。 「ロックオン。パフェを食べましょう」 「へ?」 「いいから、食べましょう」 太るには、甘いものを過剰に摂取するのが一番だ。 原稿を片手に、それをひとまず自分の部屋のテーブルに置くと、仲良く食堂でパフェを食べる。 「ティエリアが自分から間食をするなんて珍しいな」 「ええ、まぁたまには甘いものを食べるのもいいと思いまして」 それからしばらくの間、ティエリアは過剰に甘いものを摂取した。 その姿をみて、ミス・スメラギがニヤリと不気味に笑っていた。 これで、仲間が増える。 ティエリアも、お腹の肉を掴んだときのムニュっという感触を味わえばいい。 ティエリアは、後日、完成した原稿を手にミス・スメラギの部屋を訪れた。 ミス・スメラギは、ティエリアの言葉を守るように酒を控え、規則正しい生活をし、運動量も増やした。 そして、ティエリアから原稿を受け取る。 「ありがとう、助かったわ、ティエリア」 「いえ、どういたしまして」 そういうティエリアの腰に、早速ミス・スメラギはメジャーをあててウェストサイズを測った。 ティエリアは、誰の目から見ても明らかに過剰なほどの甘いものを摂取していた。 これで、私の悲痛な心が分かるはず。 「・・・・・・・・・・・・・・・・55センチ?」 その数値に、ミス・スメラギはぽかんとしていた。 そして、むにゅっと自分の腹の肉を掴む。 掴んだ具合でも、大分贅肉がとれたのは分かっていた。 ミス・スメラギは、自分のウェストを測った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ミス・スメラギは、また壊れたロックバンドの歌手のように髪を上下に激しく振り乱した。 「どうしてあんなに甘いものを食べたのに、ティエリアは1センチしか太ってないのおおお!!」 ミス・スメラギが襲い掛かってくる。 運動をしまくったせいで、ミス・スメラギのは俊敏な速度をとりかえしていた。 ティエリアは、避けられなくて、そのまま二人して床にもつれあって倒れた。 ミス・スメラギの豊満な体から這い出て、ティエリアは涙をだーっと流すミス・スメラギに、仕方ないと口を開いた。 「僕用の王留美の口座番号を教えますので、それで好きなだけダイエット用品でも買ってください」 その時のミス・スメラギのティエリアを見る目は、まるで天使をみる孤児のようであった。 後日、大量のダイエット器具、ダイエット商品がミス・スメラギのところに送られてきた。 そして、苦労してミス・スメラギは腹の贅肉を落とした。 そして、喜んでいつもより過剰に食事を開始し、アルコールを飲みまくり、そしてまた不摂生な生活を開始した。 数日たって、メジャーで測ったウェストの数値に、またミス・スメラギは壊れたロックバンドのように髪を振り乱して、地獄からの呼び声のような雄たけびをあげて、ティエリアに助けるを求めるのであった。 |