「これ・・・星の砂っていうんだ」 「まぁ。かわいい」 地球に降りた刹那は、フェルトのために見つけたその砂の入った小瓶を思わず買ってしまった。 少女趣味のような小瓶に入れられたのは星の砂。 名前の通り、星の形のように尖って形になっている砂がつめられていた。 フェルトは中身をあけると、砂を手の平にのせようとして、あやまって中身をトレミーの廊下にぶちまけてしまった。 トレミーは今、再び宇宙を漂っている。無重力空間で、星の砂は流れるように空中を浮いて、元に集めることは困難で、フェルトは涙を浮かべた。 「ああ、星の砂が」 「いいから、フェルト。また買ってきてやるから、泣くな」 「でも」 「いいから。俺が、白い花を受け取ったときとても嬉しかった。そのお返しにと思ったんだが、もう少し違うものが良かったな」 「いいえ。嬉しかったわ。はじめてみた、星の砂」 「今度は、星の砂と他に何かもっと使い道のあるものを買ってくる」 「いいえ。それより、私も一緒に地球に下ろして。デート、しましょ?」 ティエリアがかつて恋人であったことを、フェルトは承知している。 二人の関係がどんなものであったかも。 それは、二人は罪を共有しあっていた。罪の名はロックオン。ニールの死が、二人を繋げていた。 親友は恋人未満から恋人になった。 今は、ティエリアにはちゃんとニールがいるからもう心配はない。 ニールは、ティエリアが刹那と肉体関係まで持っていたことを知っても怒らなかった。フェルトの定義の中では、刹那とティエリアの関係は恋人というよりも罪を背負いあっている子羊のようにも見えなくもなかった。ティエリアという傷ついた子羊を、実は傷を背負った子羊が守っている。そんな関係に見えた。 人の死は、誰かをかえるものだ。ティエリアは成長した。精神的に。刹那も成長した。 でも、心の傷は癒す相手がいないと消えないものだ。 二人は、お互いの心の傷を癒しあっていたのだと思う。 免罪符は、もう与えられた。 解放された二人は、新しい道を歩みはじめる。 ティエリアはロックオンとリジェネと共に道を歩み、そして刹那はフェルトと道を歩む。 「デート、しましょう。まだプロボースのときしかデートしたことなかったわよね。だから、もっとデートしたいの」 「分かった。日にちを決めよう。場所も」 「うん」 二人は、幸せそうに寄り添い合う。 もうそこに、心の傷を抱えて泣いていた子供は、どこにもいない。 |