ロックオンが風邪を引いた。 ドクター・モレノはインフルエンザと診断して、薬を処方してくれた。 鼻水を何度もティッシュでかみながら、大人しくベッドで寝ていると、うつしてはいけないからと、自分の部屋に帰していたティエリアが戻ってきた。 「ティエリア。だめだろ、うつるから」 「ロックオン、鼻水たれてます」 「ああ・・・・・はっくしょい」 ロックオンは鼻水をかみながら、くしゃみをした。 「りんご、むきますね」 ティエリアはリンゴをなぜか籠ごと持ってきた。 そこからティエリアの戦いが始まった。 りんごの芯まで向かれたの残骸が、ロックオンのベッドのまわりに散らばっていた。 「いや、そうじゃなくってうさぎの作り方は」 ロックオンが指導する。 家事に極端に弱いティエリアは、丁寧な解説をしてもすごい剥き方をした。 「とう!」 りんごをまっぷたちにして、ティエリアは空中にそれを投げると、見事に4つに切り分けた。 「おー、すごいすごい!!」 ロックオンは、剥き方の指導も忘れてティエリアの手品のような芸を見て拍手をする。 そんなこんなで、残骸になったリンゴはあわせて10。11個もってきたのに。 「かしてみろよ」 「でも」 「いいからさ」 ロックオンは丁寧にリンゴの皮をむいて、うさぎリンゴを作った。 「ほら、アーン」 「はい」 病人のロックオンに、逆に看病してもらっているかんじだ。 ロックオンは、ティエリアが側にいてくれることがとても嬉しいようだった。 うつるということも忘れて、しまいには二人でいつものようにベッドで眠った。 ティエリアの少し低い体温は、火照った体にはちょうどよかった。 そして、見舞いにきた刹那に、二人そろって食べ物を粗末にするなと、長い長いお説教を食らう羽目になった。 刹那は真剣に怒り、ロックオンの頭をはたいて、ティエリアの頭もはたいた。幼年時代、ろくな食べ物もなかった刹那にとって、食べ物を玩具にすることは信仰者が神を冒涜するに近いものだったのだ。 残骸になったりんごは、綺麗に水荒いして、後日アップルパイの材料になったという。 |