だって、彼女が好きだから。







「後世に、残してはならないもの。この流星群は神秘的で綺麗だけど、後世に残してはいけないものなのよ。そうよ、子供たちが見るべきものは、本物の流星群でなくてはならない」
シーリンが、泣いて喜ぶカタロン兵に紛れて、地上に降り注ぐ人工的な流星群を見上げていた。

「綺麗なのにー」
「お星様がいっぱい流れてるー」
「綺麗、綺麗ー」

マリナが、子供たちに優しく言い聞かす。
「確かに綺麗だけど、あれは人工の流星なの。あの流星には、人の魂が宿っているのよ」
「人の魂?」
「こわーい」
震える子供の頭を撫でて、マリナは言い聞かす。
「私たちの故国を守るために、戦った人の命の証なの」
「命の証」

子供たちは、また降り注ぐ流星を見上げた。
「人の、命の証なの。哀しいね」
一人の少女が泣きだした。
それに連鎖するように、子供たちが泣き出す。
「ぼくたちを守るために、いっぱい、いっぱい人が死んじゃったんだ。その命の証なんだね、あの流れ星は」
聡明な子供たちは、マリナが説明するまでもなく、命の証という意味を、そしてカタロン兵士たちが何故大人なのに涙を流しで泣いているのかを理解したようだった。

宇宙で、皆を守るために、誰かが戦ってくれた。
その命の証なのだ、あの流星は。

「マリナ様、僕も大きくなったらみんなを守るよ」
「ええ、そうしてちょうだい。いいことよ。互いを守りあうのは、とてもいいことよ」
マリナが子供たちを抱きしめる。
そこに、シーリンがやってきた。

「マリナ、ちょっと用があるの。奥のテントまできてちょうだい」
「ええ、シーリン。すぐに行くわ」

奥のテントには、寝台が用意されていた。
マリナは突き飛ばされ、寝台に寝転がった。
「シーリン?」
「マリナ、愛しているわ」

シーリンは、豊かな胸をもつ上の服をぬぐ。
下着はつけていない。
香水の薔薇の香りがした。
「シー、リン?」
「あなたが生きていることが私の全てよ」
そのまま抱きしめられ、唇を重ねられる。

マリナは突き飛ばさなかった。
シーリンの体を受け入れる。
シーリンは、決してマリナの服を脱がすような真似はしなかった。
ただ、マリナに、刹那がそうしたように優しいキスの雨を降らす。
「私も、シーリンを愛しているわ」

ああ。なんだかティエリアさんの心が分かってきた。

シーリンは、マリナを抱きしめると子供のように泣きじゃくっていた。
あんなに強いシーリンが、涙を零すなんて。
「衛星兵器は確かにCBが破壊してくれたわ。でも、失われた百万人以上の命は戻ってこない。なんの罪もないただの民間人だったのに。衛星兵器を破壊に向かったカタロンの宇宙軍のほとんどが壊滅したわ。その中にね、私の初恋の人にそっくりだった人がいたの。私は声をかけたわ。まだあどけない少年を残す二十歳になったばかりの青年だった。お互いに健闘を祈りあい、別れたの」
「シーリン、泣かないで」
マリナは、シーリンの涙をにキスをする。
「マリナ、誰よりも愛しているわ!お願いだから、私より先にいかないで!」
「私もシーリンを愛しているわ」

二人は、またくちづけしあった。

禁断の味は、切なく甘かった。

シーリンはちゃんと衣服を着ると、マリナを抱きしめる。
マリナよりも女性的に豊満な胸、くびれた細い腰、綺麗なヒップ。
だが、マリナは焼餅をやかなかった。
相手が誰でもないシーリンだからである。

マリナは、そのままシーリンと一緒に眠った。

愛しいシーリンを、どうか奪わないでください、神よ。