出た!(夏期休暇)







出た!
害虫が。そう、黒い人間の大敵Gが。
G。ゴキブリだ。
どんな綺麗な家でも、排水溝などから侵入してくる場合がある。
それを見てしまったロックオンは、叫んだ。
「出たああああああ!!!」
ロックオンは、ゴキブリが苦手だった。
虫は平気なのだが、ゴキブリだけは無理だ。生理的に受け付けない。
「殺虫剤、殺虫剤!」
探すが、こんな時に限って殺虫剤なんて都合のいいものは手元にはない。
ロックオンはゴキブリをスリッパではたくなんていう、原始的な殺し方はできない。あいつはとにかく素早い。素早すぎる。
「騒いで、どうしたんですかロックオン」
「ティエリア、出たんだ!Gが!」
「G?」
「ほ、ほらそこ・・・・」
カサカサと壁を這い回るゴキブリを見て、ティエリアも絶叫するとロックオンは思った。
だって、乙女なティエリアはかわいいものは大好きで、虫も苦手だし。ゴキブリも無論大の苦手で、普通の少女のようにきゃーきゃー騒ぐのかと思ったら、ティエリアは何を思ったのか拳銃を取り出した。
「え?」
ロックオンが目を丸くする。
パン。
乾いた音が、室内に響く。
哀れ、ゴキブリは銃弾の的になってグチャリと潰れた。
ティエリアは気にしたそぶりもなく、ティッシュを何枚かもってその死骸を包んで、ポイっとゴミ箱に捨てた。
「うっそ。まじかよ。おい、ティエリア、ゴキブリ平気なのか!?」
「女の子じゃあるまいし。平気ですよ。ロックオンはダメなんですね。かわいい」
クスっと笑われて、カーッと顔が好調する。
「お、俺だってゴキブリくらい平気だ!」
「あ、後ろにまだゴキブリが」
「うぎゃあああああ」
ティエリアに思い切りだきついて、ぶるぶると震えるロックオンを抱きしめて、ティエリアは笑った。
「冗談ですよ」
「うう、俺まじでゴキブリだけはだめなんだ・・・昔、家でゴキブリが大量の発生して・・・ああ、あの時の悲劇を俺は忘れない。そう、裸足でゴキブリと、グチャって、グチャって踏み潰したあのトラウマ!」
「そうなんですか。僕は靴で平気で踏み潰しますけど。裸足でも、別に洗えば平気です」
「お前・・・やっぱいい漢だな」
「当たり前です。僕は素晴らしい漢なのです」
漢とかいて男と読む。普通の男ではない。勇気ある者を意味する。猛者だ。
いつもは乙女で少女のようにかわいいのに。ティエリアは中性で、そもそも性別すらそこには存在しない。

「ティエリア。室内で銃を発砲するな。それサイレンサー機能ついてないだろ。隣が騒がしい。それに見ろ、壁に銃弾の痕ができたじゃないか」
刹那が、壁の傷痕を見て説教してきた。
「ああ、すまない。今度から新聞で叩くことにする」
「そうしてくれ」
「刹那の家ではよくゴキブリが出るのか?」
「いいや。今日が始めてだ」
「そうか」
「どうしたんだ、ティエリア?」
「ゴキブリは、1匹いると100匹隠れているとかなんとかいいます。殺虫剤、買いにいったほうがいいですね」
「今すぐ殺虫剤買いに行くぞうらあああ!!」
こうして、ロックオンはママチャリに乗って、後ろにティエリアを乗せて殺虫剤を求めにスーパーに出かけたのであった。