ゆらゆらと、地面に蜃気楼ができているように見える。 アスファルトを照りつける太陽は、容赦なく地上の生物たちの体力を奪っていく。 「地上は・・・・嫌いだ」 ティエリアは、アスファルトを睨みながらそれから眩しい太陽を睨みつけた。 ミーンミーン。 蝉の鳴く声がうるさい。 行き交う人々は、ティエリアのあまりの美しさに足を止めて、何度も後ろを振り返る。 「地上は・・・・・」 カッ。 真夏の太陽ほど、嫌いなものはない。 真っ白な肌のティエリアは、人種的に白人に分類されるので日焼けすることはないが。 紫紺色の髪は、綺麗にポニーテールに結われている。 太陽の光を吸い込む色だ。 髪から熱が吸収され、全身を駆け巡る。 ティエリアが息をついて、もっていたソフトドリンクの入った水筒を取り出して、中身を口にする。 地上嫌いなティエリアは、夏も嫌いだった。 暑いのは苦手だ。寒さには強い。 体温調節のできるティエリアだったが、夏の暑さには弱い。 なかなか体温コントロールができない。 いつものピンクのカーディガンを、夏の蒸し暑い風が撫でていく。 「ああ・・・・・ロックオン・・・ハロさんが、溶けて・・・・ドロドロに溶けてる・・・・」 ぼーっと、視線の先にあった橙色の、アイスクリームがじわじわ溶けていくのが、ティエリアにはハロに見えていた。 ハロが溶けていく。 暑さで。 「それハロじゃねぇから!しっかりしろ、おい、大丈夫か!?」 ロックオンが、ティエリアの腕を掴む。 「あつひ・・・・うにゃああ」 「あー、だめだこりゃ」 「ふにゃああ」 夏の暑さに参ってしまったティエリア。 ロックオンは、ティエリアをおんぶして、涼しいデパートの中に入ると、ベンチに座って膝のうえに頭をのせる。 買ってきたばかりのドリンクを、額にあててやる。 「ああ・・・生き返る」 そのドリンクを受け取って、中身を飲み干してから、ティエリアはやっと落ち着いた。 「だから、地上は嫌いなんです!」 ぷんぷんと怒るティエリア。 「デートするなら、もっと涼しい場所を希望します」 ロックオンを待っていたティエリアであったが、わずか十数分の夏の太陽の下で参ってしまった。 「そうはいってもなぁ。移動するのは地上を歩くのが基本だし」 ロックオンはため息をつく。 「はやくトレミーに戻りましょう」 「んー。まぁ、とりあえず・・・・プールとかは?」 「肌を、人前で露出するなんていやです!!」 「俺の前では裸になるのに?つか、トレミーでも平気で裸に近い格好で歩きまわってるじゃないか。俺が止めないと」 「それとこれとは別だ。仲間はいいんだ、別に。見られても平気だし」 「俺が平気じゃねぇって」 そうだなぁと、ロックオンは首をひねる。 「今度・・・・王留美に頼んで、どっかの施設プールでも貸しきってもらうか。それなら平気だろ?」 「それなら・・・・別にいいですけど」 「じゃあ、決まり。今度はプール。みんなで」 ロックオンは、本当にプールだけでなく、レジャーランドまで貸しきってもらって、マイスターたちは夏の暑さを忘れる一日を過ごすこととなる。 それはまた、別のお話。 ******************** WEB拍手収録SS |