カキ氷でも(夏期休暇)







「あっつー」
窓の外から入ってくる太陽の日差しは、温度が高い。
9月に入ったといってもまだまだ夏な秋を感じさせないようにそこにしっかりと存在する。
今日は、ティエリアとロックオンはデートだった。
でも、あまりの暑さにティエリアがばてて、近くの百貨店にいって冷房の効いている場所で休ませることにした。
「ロックオン・・・・かき氷が食べたい・・・・」
「かき氷な。もう季節過ぎてるからなぁ。売ってるかなぁ、待ってろよ」
ロックオンは百貨店の食料品売り場を物色したが、かき氷は冷凍ものしかなく、ティエリアが食べたいといっているのは、その場で氷を削ってシロップをかけてくれる、夏祭りの屋台のようなカキ氷である。
「まいったなぁ。どうすっかなぁ」

逡巡するロックオンの目の前に、アイスクリーム屋が見えた。
よし、これでいこう。
ロックオンは、両手に高く積み重なれた色とりどりのアイスをもって帰って来た。
「アイス?」
「嫌だった?」
「カキ氷じゃないと嫌です」
「ティエリア、そりゃないだろ〜」
「嘘に、決まってるじゃないですか。ありがとうございます」
ロックオンからアイスを受け取って、それを舐めていく。
紅い舌が扇情的だとか、ロックオンは違うことを考えていて、ぶんぶんと頭を振って妄想を吹き飛ばした。
「体温が下がっていくかんじがする」
「まぁ、気分だけな」
「ラズベリーにバニアにストロベリーにチョコレート、抹茶。ここまでくるとアイスっていうか・・・なんか変な物体に見えますね」
「そうかな?」
「ロックオンには、きっと抹茶が似合ってる!」
「俺がおっさんだから?」
アイスを食べながら、二人は背を寄り添いあって会話を続ける。
「ううん。なんか渋いし。大人の包容力がある。かっこよくてステキな男性だ」
ロックオンはティエリアと背中合わせでよかったと思った。顔は、耳まで真っ赤だった。
「じゃあ、ティエリアはストロベリー」
「ラベンダーじゃないんですか?」
「ラベンターは色だけ。ティエリアはストロベリーのように甘くて優しくてかわいい。そしてお茶目」
ティエリアは、ロックオンと背中ごしでよかったと思った。顔は耳まで真っ赤だ。
「刹那は・・・チョコレートかな」
「じゃあ、アレルヤは・・・なんだろ。思いつかないなぁ・・・アレルヤはやっぱり」
「「マルチーズ!!」」
声がは見事にハモって、二人は大笑いした。
アレルヤはマルチーズだ。アイスなんかに例えられない。マルチーズバカだし。

「ティエリア、こっち向いて」
「はい」
振り返ったその瞬間を、ロックオンが携帯で写真にとってアレルヤと刹那にメールを入れる。
ティエリアもロックオンをとって、アレルヤと刹那にメールを入れた。
メールを受け取ったアレルヤは、「デート中かな?」と首を傾げた。
メールの本文は、アイスクリームを食べて涼んでいる、とだけだった。
「まったくあの二人は・・・メールでまで、のろけてくるつもりか」
刹那は東京の人ごみに紛れてメールを送り返す。

「一生やってろ、このバカップル」