冬の気配







「うー寒い」
休暇をもらって、アイルランドにきていた。
随分と冷え込んできた。
暖房を入れて、室温を一定に保つことにした。
ロックオンはそれでも寒いのか、ストーブをつけた。ぽっと紅い火が灯って、どんどん部屋の中が暖かくなっていく。
ロックオンの鼻は紅くなっていた。
外から帰ってきたばかりなのだ。昔は冬の寒さにも強かったが、何年も故郷を離れているうちに、それもなくなってしまった。故郷、アイルランド。
極秘事項だ。
それを平然とティエリアに話して、ティエリアを生家に連れてくることももう何回目だろうか。
「まだ寒いですか?」
ふわりと、ティエリアが自分のしていたマフラーをロックオンの首に巻く。

「お前は寒くねーの?」
「僕は・・・・体温を一定にコントロールできますので。夏には弱いですが、冬には強いです。寒くありません」
薄着で、一緒に外出したティエリアは、本当に寒くなさそうだった。
ロックオンが厚着している分、薄着のティエリアは寒そうにみえて、自分のコートを羽織らせようとしたが、ティエリアは首を振ってそれを断った。
「ティエリア」
「はい?・・・あ」
ぐいっと、手をひっぱって、ティエリアを抱きしめる。
「うーんあったかい・・・ストーブより暖房より、お前が一番あったけーわ」
「はぁ・・・・」
ロックオンに抱きしめられて、ティエリアは困ったような笑みを浮かべたあと、ロックオンの手で、マフラーのあまりの部分を首に巻かれた。
「長めに作っといてよかった」
「一緒のマフラー・・・・なんかベタな展開ですね」
「ロマンチックといえ」
「ロマンチックですか。ロックオンはいつでもロマンチックですよ。多分」
「おう、俺はロマンを求める男だ!」
「そうですね」
二人でクスクスを笑いあった。

そして、唇を深く重ねる。
「あ・・・・」
シャツのぼたんを外されていく。
「だめ、ここじゃ・・・」
「愛してる」
その一言だけで、ティエリアは陥落する。

「見て・・・雪が、降ってきました」
ティエリアの素肌を撫でながら、ロックオンも窓の向こう側をみる。
「積もるかな?」
ティエリアは、嬉しそうだ。
「積もるだろうな。アイルランドの冬は、厳しいからな」
「そうですね・・・・ん」
首筋に顔を埋められて、そのままロックオンの頭に手を回す。
「雪が降ったら、二人で雪だるまを作りましょう」
「おう。ドラエモンつくってやるよ・・・」
「ん・・・・あ、あ」
ティエリアは、雪を見ながらそのまま何も考えられなくなった。

冬はもうきている。
雪が、二人をじっと見つめている気がした。