ブラコン(3期)







「兄さん、愛してるぜ!」
「おお、ライル俺もだ!!」
二人は、がしっとお互いを抱きしめあうと、首をコキコキと鳴らして離れた。
「さー、朝の挨拶はやっぱこれだな」
「おう、これだぜ」
二人は、アホだ。

トレミーの中でも、この二人の兄弟愛は、ティエリアとリジェネを上回るかもしれないと噂されている。
基本はアホだ。
ティエリアとリジェネの愛は、互いを大切にしあう純粋なものだが、二人の兄弟愛はどちらかというと兄と弟だぜいぇい!ってわけの分からないノリが大半を占めている。
リアクションも大げさだ。

食堂でのできごと。
ライルとニールとティエリアで、食事をしていた。
「兄さん、あれとって」
「おう、これだな」
「違う、なんで醤油なんだよ!あれっていったら、塩だろ!」
「なんでだよ!あれっていったら、醤油しかないだろ!!」
こうやって、ギャーギャー騒いで、そしてケンカして、プイっとあらぬ方向を見つめて、無言で食事して、ニールはティエリアと一緒に部屋で過ごし、ライルはアニューと一緒に部屋で過ごし、でも時間がたつごとに「やっちゃったー」とため息を零して、二人して、部屋を飛び出して、「ごめん」と謝るのではなく。

「兄さん、愛してるぜ!」
「俺も愛してるぜ、ライル!!」
がしっと互いを抱きしめあって和解したあと、それぞれティエリアとアニューにひっぱられて、部屋に戻るのだった。
そう、二人はアホだ。
麗しい兄弟愛も、二人にかかればギャグに見える。

でも、二人はお互いを大切にしている。

「兄さん、あれとって」
「おう、これだな」
「違う、なんでケチャップなんだよ!あれっていったらソースだろ!」
「あれっていったら、ケチャップにきまってるだろ!!」
ツーン。
また食堂でケンカする。ネタは同じで。
そして、しばらくすると、また。

「兄さん、愛してるぜ!」
「俺もだぜ!!」
とかいって、ひしっと抱きしめあって、首をコキコキ鳴らして別れるのだ。
「やっぱ、これないとなぁ、やってらんねーよ」
「そうだよなぁ。なんか疲れるけど、俺らってこの台詞と行動ないと、なんか兄弟ってかんじがしないんだよなぁ。知ってるか、兄さん。ティエリアが、兄弟アホっていってたぜ、俺らのこと」
「知ってるぞ。アニューが、お前のことブラコンっていってたぞ」
「知ってる知ってる。ティエリアも、前兄さんのこと極度のブラコンっていってぜ」

「なぁ、ライル、俺ってブラコンか?」
「いや、それ兄さん、俺の台詞だから。俺ってブラコンなのか?つか、これってブラコンなのか?普通じゃね?」
「普通だよなぁ」
二人して、顔を見合わせてけらけら笑う。

ティエリアとアニューは、そんな二人をみて、ため息をついてこういうのだ。
「このブラコン双子、なんとかならないでしょうか」
「ブラコン双子、アホすぎるわ」

今日もトレミーで、二人が互いに愛してるぜ!と叫んで抱き合い、そして離れていく図で一日がはじまるのであった。ああ、トレミーはブラコンマイスターも抱えているのです。
平和すぎですね。

冬の白い吐息に二人は包まれながら、帰路を急ぐのだった。