あけましておめでとう







「ほれ」
「・・・・・・・」
刹那は、無言でロックオンに手をさしだす。
ティエリアは、刹那の後ろからおずおずと、躊躇いがちに手をさしだした。
「ティエリア、もっと堂々としていろ。俺たちはまだ子供だ!」
「あ、ああ、そうだな・・・・」
人工生命体であるティエリアは外見年齢が17歳くらいなだけで、実年齢は不明であるが、一応は17歳ということで通っている。刹那の誘いに乗ったのは、ロックオンからもらえるという言葉がきっかけだ。
もらえる。
好きな人から何かをもらえるというのはとても嬉しいことだ。
それがなんであれ。

「・・・・・・・お兄さん、破産しちゃう」
ロックオンは、泣く泣く懐からお年玉を取り出して、刹那に渡す。
刹那はそれをひったくって、自分の部屋に戻っていった。
残されたのは、手をさしだしたまま固まったティエリアとロックオン。
「あ・・・・ぼ、僕は、その、やましい心では!お金に困ってなどいませんし、あの・・・」
「いいからもらっとけよ。はい、お年玉」
ロックオンはにこやかに微笑んで、ティエリアにお年玉の袋をあげると、手をぐいっと引き寄せて自分の腕の中に抱き込んだ。

「あ、あの!!」
紅い顔で見上げてくるティエリアに、ロックオンはいつもの優しい笑みを返した。
「・・・・・・ありがとうございます」
プシュウウと、真っ赤になって縮こまるティエリアの頭を撫でて、ロックオンははにかんだ。
「なんだよ、新年そうそう。まぁ今年もよろしくな」
「は、はい・・・・」

ティエリアは顔をあげて、ロックオンの顔を見つめると、背伸びしてその唇に優しいキスをした。
すると、ロックオンはティエリアの腰を片手でとらえて、深いディープキスを返してくる。
「っ!!」
震える肢体は、いつものように滑らかな肌をしており、そして反応も初々しかった。
慣れているかと思えば、こんな反応を返すティエリアが、可愛くて仕方なかった。
「なぁ。姫はじめする?」
耳元で熱く囁かれて、ティエリアは真っ赤になって、ロックオンの腕を振り解く。
「ちゃかさないでください!」
「俺、本気なんだけど?」
「ぼ、僕は、私は、俺は!!」
ティエリアは混乱気味に紫紺の髪を揺らす。

「あっ」
瞼にキスを落とされて、ティエリアはロックオンの腕の中に落ちた。
いつも簡単に陥落してしまう自分が情けないと思いつつも、彼に包まれるのはとても幸せなことだとティエリアは思った。

「姫はじめなんて・・・もう、年は明けてしまってるのに」
「いいじゃんか別に」
「ばか!」
ティエリアをお姫様抱っこして、ロックオンは笑いながら自分の部屋に向かう。
ティエリアは、無言でロックオンの首に手を回して、目を閉じた。


一方、皆が去ったブリーフィングルームで、一人の青年が立っていた。
手を、ロックオンがいたはずだった場所にさしだして、ぼけーっと天井を見上げている。
すっかり存在が空気になっていたので、ティエリアも刹那もロックオンも気づかなかったんだけど、ちゃんとその場にアレルヤもいた。
お年玉やるよって、前日に言われたので手をロックオンに差し出したポーズのまま固まっている。
「あはははは、ハレルヤ、世界の悪意が見えるよ。ああ、あけましておめでとう。あけおめことよろってやつかな?今年もよろしくね!!!」
アレルヤは、壁に向かって微笑んで、ダッシュで自分の部屋に戻っていった。
去り際には涙がちらりと見えたような見えないような。

今年もあけましておめでとう、どうぞよろしく。