撃ち抜かれた右腕が熱い。 じわじわと血を広げていく。 ノーマルスーツを血で染め上げながら、刹那はダブルオーライザーで空をかけぬける。 「アリー・アル・サーシェス!」 敵を打ち落とそうと、ビームをいくつも発射する。 アリーの機体が、何かの航空物体と接触しそうになるのを、間髪をいれて阻止する。 「ハァハァハァ」 ドクンドクンと、心臓が大きく脈打っていた。 世界の歪みの中心に、俺は立っていたのか。 思考をすぐに払いのけ、刹那は唸る。 まるで手負いの猛獣だ。 ダブルオーライザーの粒子が満ちる。 リボンズ・アルマークと名乗った男は消えてしまった。 今は、目の前にいるアリーを倒すことだけを考えろ。 「俺は、俺の意思でガンダムマイスターになったんだ!」 操縦桿を握り締める。 傷口が火傷したように熱く疼く。 ダブルオーライザーが、アリーのサブガンアーチャーを裂いた。 まだだ。 まだ、ここで終わるわけにはいかない。 遠のきかける意識を、歯を食いしばって耐える。 その時、歌声が聞こえた。 歌姫のような唄。 子供の声もまじっている。 その声は、誰でもない愛しいマリナのもの。 「なぜ、マリナの声が?」 まるで、世界を満たすように静かにマリナの歌声は響いた。 刹那は、ダブルオーライザーで空を切る。 アリーの機体が遠のいていく。 そして、時期に意識が遠のいていくのを感じていた。 マリナ。 いつか迎えにいくと約束した。 だが、まだ俺はやり残したことがたくさんある。 マリナ。 刹那は、虚空に向かって手を伸ばしていた。 |