「第1回新年あけましておめでとう書初め大会〜いぇーい!!!」 「いえーい!」 「いえーい・・・・」 「家」 大声ではしゃぐロックオンののりのいい声のあとに続いたのは、アレルヤ、ティエリア、そして最後の「いぇーい」を「家」と変換して全くやる気を見せないのはやはり一番冷めている刹那だ。 冷めている順番でいけば、2番目に冷めているのはティエリア。 日本の経済特区東京にある刹那の家に年末年始休暇をとって集ったメンツなのだが、刹那はゴロゴロしたかったしついでに新作のガンダムのプラモを組み立てるのに忙しかったし、ティエリアはパソコンでデータをまとめたがっていたし、それを無理やり中断させてロックオンがいつものような強引さでみんなを居間のコタツがおいてある場所に集めたのだ。 「書初め大会、僕はじめてなのでドキドキするよ」 アレルヤは、成人式のような格好でついでにいえばロックオンも、刹那も同じような和服姿。 一人、ティエリアだけが振袖だった。 ここらへんは性別が、ティエリアだけ中性で男性ではないという理由もあるのだが、単に振袖のほうが華やかでティエリアに似合うからという理由で着せられた。 ティエリアは動きにくそうにしている。ロックオンのせいで、中性であるが故か、ユニセックスな服装をよく着させられるし、時にはかわいいゴスロリな格好までさせられるし、スカートだってはくこともあるし、ミッションでは堂々と女装するので、振袖をきたくらいで機嫌が悪くなるわけはないのだが、やはり自分がしていたこと(特にプログラミングなどの作業を中断されると機嫌が格段に悪くなる)を中断された状態なので、違う意味で機嫌は悪かった。 刹那なんて、もう逃げ出しそうな勢いというか、はじめからやる気がない。 「第1回新年書初め大会!さぁ、みんなで今年一年掲げる言葉を書こうぜ!!」 床には4枚の和紙に、文鎮、硯、墨汁、筆もろもろの書道にいる道具がおかれていた。きっちり四人分。 まずはじめに、ロックオンが筆をとって、やや歪んだ字で文字を書き出した。 「俺の今年の抱負は・・・・これだ!」 アイリッシュ系の彼は、特に漢字が苦手である。 日本語は話せるが、流石に書けない。なので、前々から調べて何度も練習した文字を鮮やかに書き上げた。 歪んだいびつな文字で「じゃが芋命」と。 それを見たアレルヤと刹那とティエリアは、お腹を押さえて必死で笑うのを我慢していた。 「ぶっ!!」 我慢できなくて、刹那が吹き出すと、ティエリアが刹那の背後にまわって、刹那の口を閉じる。 「ぶ・・・・ぶぶぶ!!!」 言葉にならない刹那の笑い。 「だめだ、彼は真剣なんだ、笑っては・・・ぷっ」 ティエリアは、一生懸命刹那の笑いを止めようとして、でも自身も笑いを我慢できなくなり、小さく吹き出した。 「ひはははははっ」 アレルヤはもうツボに入ったらしく、床を叩いて笑っていた。 「へ?俺なんかおかしなこと書いたか?」 ぽかんとしているロックオンに、全員向き直って真顔で首をふる。ここで笑ってはいけない。彼は真剣なんだ。そう、真剣にジャガイモを命をかけて愛しているんだ。 愛戦士、ジャガイモ男爵!!! そんなことを想像した刹那は、拳を握って笑いに耐えた。 そして、次はアレルヤが文字をかきあげる。達筆だ。綺麗な字だが、内容が内容だった。 その文字をみて、一同は頬を引き攣らせた。 「空気が読める男になりたい、あと出番が欲しい」 そう長く小さい文字で書いてあった。 「だめだ、アレルヤ!やり直し!」 「ええ、どうして!!」 ロックオンのダメだめしにアレルヤがブーイングを飛ばす。 「長すぎる!!それに抱負は1個まで!」 「書初めって難しいね」 ぶつぶつと文句をいいながらも、アレルヤはまた綺麗な文字で和紙に今年の抱負をかき上げた。 「絶望」 「おい・・・あれって抱負か?」 「いいんじゃないのか。もともと絶望してるんだから・・・・・・絶望した」 言い合う三人。ティエリアは、絶望先生と同じ声をだせるので、何気に物まねをしている。意外とお茶目だ。 「絶望先生か!コミックなら全部もっている!」 刹那は自慢げに絶望先生のコミックを取り出す。 「ま、まぁ次はティエリアな!」 このままでは、絶望先生談義になりそうなので、ロックオンは無理やりティエリアに書初めを要求する。 ティエリアは、筆をもって数分考えると、こう書いた。 「運命」 「ううむ・・・・抱負、とはちょっと違う気がするが、いい言葉だな」 「あなたと出会ったことが、僕の運命です」 「ティエリア・・・・」 「ロックオン・・・・」 見詰め合う二人は、互いに抱きしめあう。 「あーはいはい、ラブラブは後でしとけ」 刹那が抱き合う恋人二人をひっぺがす。ここまできたら、自分も書かないわけにはいかないだろう。 ちなみに、アレルヤは自分以上に綺麗な文字で書かれたティエリアの書初めに感心しまくっている。 「わーティエリア漢字うまいね!」 「そうでもない」 刹那は、コホンと咳払いをした後、なかなかの美しい文字でかき上げた。 「ガンダム命」 「刹那・・・・ロックオンと同じレベルだな」 「な、失礼なことをいうな!!」 「いや、同じレベルだと思うよ・・・」 ティエリアの言葉に抗議する刹那であったが、アレルヤもティエリアと同意見であった。 そして、刹那とロックオンは声をあわせて。 「「こんな奴と一緒にするな!!!」」 と叫ぶのであった。 こうして、書初め大会も終わるのであった。 |