おせち料理B








「ああ、ロックオン!?」
ティエリアは驚いて立ち上がる。
「あははは・・・・花畑がみえるよパトラッシュ!!!」
ロックオンは、パトラーッシュ!!と今一度叫んでから、倒れた。
予想していた結末に、刹那は南無阿弥陀仏を華麗に唱え、アレルヤは十字を切って天に祈っている。
「ロックオン・・・・今までありがとう」
「ロックオン、君のことは忘れないよ!!」

「勝手に殺すなああああ・・・・!!!」
立ち上がったけど、また眩暈に襲われて、ロックオンはダウンした。
そのまま、ティエリアに付き添われてソファに横になる。
「あの・・・・どうしよう、僕のせいですか?」

「違うよ。愛が凄すぎて凄すぎてパトラッシュがハイジがクララが立ち上がった!!!」
もう何をいっているのか、ロックオン自身でも分からなかった。
その間に、もう慣れているいつものことなので、刹那とアレルヤはおせちを食べてしまった。
「死なないで、ロックオン!!」
ティエリアは涙を零して、ロックオンの首を絞めている。
いや、それまじやばいから。
ロックオンは顔を蒼白にしながらも、微笑む。
「元気になって、えい、えい、えい!!」
ジャボテンダーで、ロックオンをタコ殴りにするティエリア。
それもやばいから。
ティエリアは気は動転して、ついには本当に泣き出してしまった。
「う・・・・ううわーん!ごめんない・・・・」
ボロボロ涙を零すティエリアを見て、ロックオンはすぐに復活した。胃はぐるるるってすごい音たててたけど。
「泣くなよ。美人が台無しだぜ?」
「でも、僕の料理がやっぱり失敗してたんですよね・・・」
しゅんと、うなだれるティエリアの頭を何度も撫でて、ロックオンは微笑みかける。エメラルドグリーンの綺麗な瞳で。
「まぁ、はじめてにしてはよくできてたよ。味はなんともいえなかったけど・・・・うん、なぜかおせちなのにブルーハワイの味とか、牛タンの味とか、ヨーグルトの味とか・・・いろんな味がしたけど、悪くはなかったぜ?」
「本当に?」
「俺が嘘いうと思う?」
コツンと、額をあわせられて、ティエリアは涙を零すのをやめた。
流れ落ちた涙を、ロックオンの唇が吸い取っていく。
「上達してるよ。本当に。見た目はけっこうよかったし、味はインパクトあったけど、大丈夫。また作ってくれよな?」
「はい・・・・」
ティエリアは、ゆっくりと美しく花の結晶のような笑顔を浮かべた。

******************************

「ティエリア、ほら。お前の分、ロックオンと分けて食えよ」
刹那が、まだ手をつけていないティエリア分のおせちを、小皿を二つ用意して、近くのテーブルにおいてくれた。
「ありがとう、刹那!!」
「おう、ありがとさーん」
二人は、仲良くいつものように談笑しながら、一人分のおせちを二人で分け合って、互いにあーんとかやって、食べさせあいながら、いつもより甘ったるい時間を過ごす。

「あの、ロックオン・・・・」
「ん?」
「これ・・・デザート・・・・・ごめんなさい。うさぎのリンゴ剥きつくろうとして・・・・・」
なぜか、タコの形にカットされた(はっきりいって、こっちを作るれるというほうが凄いのだが)、芸術は爆発だ!
なリンゴをさしだす。
かわいく、ジャボテンダーの形にむかれたものまであった。
「あーもう、お前さんほんとにかわいいなぁ!」
「きゃあ!」
思い切り抱きしめられて、キスされた。
「???」
「明日は、俺がおせち作ってやるから。ありがとな、ほんとに。手、こんなに傷だらけにして・・・・がんばったなぁ」
「あなたのためなら・・・・これくらい」
パクリと、傷のある人差し指を口に含まれて、ティエリアは赤面した。
「くすぐったいです・・・」
「また、俺のためになんか作ってくれな?」
「はい・・・・」

ロックオンは、ティエリアの手料理が苦手だ。でも、決して嫌いなわけではない。
だって、こんなにも一生懸命、ティエリアが自分のために作ってくれるのだから。大切なのは味でも出来栄えでもない。
その気持ちが、大切なのだ。

「あー、暑苦しい」
「あーごちそうさまです」
刹那とアレルヤは、いつまでも繰り広げられる二人の熱々ップリに、辟易となっていた。
まぁ、そこがティエリアとロックオンのいいところでもあるのだけど。

「よーし、元気でてきたぞー!ほら、刹那、アレルヤ、着替えるじゃない!ビデオとるぞーー!!」
「マジで!?」
刹那がぎょっとして逃げ出そうとしたところを、ロックオンが首根っこをおさえてブラーンと引きずってくる。
「アレルヤも、ほらそのかっこのままこいよ!ビデオもう回ってるぞ!」
「ええ、もう!?この格好、ちょっと恥ずかしいんですけど!!」
「かわいいかわいい!似合ってるから!」
「僕は?」
首を傾げるティエリアに、ロックオンは。
「もうお前は世界で一番可愛いよ!!」
って叫んで抱きついて、回り始めたカメラの前で、キスをするのだった。

くたびれたジャボテンダーが、ソファーの上で、そんなみんなを楽しそうに見つめていた。