血と聖水ウィンド「反逆者よ、アーメン」







「右に(_´Д`) アイーン 左に(´Д`_) アイーン 」
「神は我を祝福したもう、我は神を信じたもう。我は神に祈りを届け、神は我の祈りを聞き届けたる。リムア・ザリ・バルナーガ!!」
みんなアホみたいに踊っていたが、それもすぐに止まった。
神を信仰することで生まれる神聖魔法。この中で使えるのはリエットのみ。
聖書を開き呪文を音速で口にし、そして背の白い翼を広げる。
神の言葉は、そのまま全員を包みこみ、魔法を解除した。
「あれ?あれ?ミーの魔法がなぜ止まるザマス?」

リエットはソウルイーターを、ロックオンに投げて渡す。
「始末はお前がつけろ。偽者を退治すると、盟約したんだろう」
「ああ」
ロックオンは、ソウルイーターに自分の水銀を含んだ血を纏わせると、俊足で動いた。
「あ・・・・あ・・・・ミーは・・・」
「消えろ。俺の名を語る偽者が」
偽ネイ(仮)の心臓を、真っ直ぐにソウルイーターで貫いていた。
ソウルイーターは相手のコアを傷つける特徴をもつ。そこから、死に至るだけソウルイーターという名がつけられた。
偽ネイ(仮)は、ゴフリと血を大量に吐くが、死ななかった。
「ち・・・・バカをしていれば、油断で殺せると思ったが・・・・」
「浅はかな思惑なんてばればれなんだよ。魔法を使ったのが間違いだったな。その魔力、確かに皇族のもの。名前は・・・・・ネイリル・リドア・ルゼール大公」
「知って、いたのか」
ソウルイーターを引き抜いて、ロックオンはそれをリエットに返す。
「知らない。顔も見たのははじめてだ。俺は帝国を支配するネイ。名前なんて、ネイの意識が探れば分かる。地位も」
「何故・・・・リエット殿、何故だ!共に、ネイを打つと約束したではないか!なぜ裏切る!!」
ネイリル大公は、帝国でもかなり上の地位についている皇族だ。4代前の皇帝の皇族の血脈だ。
帝国では500年に一度、皇帝はかわる。そのたびに新しい皇族が生まれるわけだが、無意味に皇族を増やすのを防ぐため、4代前までの皇帝の一族が皇族とされ、それより前の皇族は平民に戻る仕組みになっていた。

「バカかよお前。俺が、本気でネイを裏切ると思ったのか?はは、まぁ俺はこうだから、こうして反逆者自らが声をかけてくるわけだが。お前で、14人目だ。ネイを裏切ろうとした皇族、王族、貴族は。俺がネイ謀反を企んでいると噂を流せば、神聖魔法の攻撃は神をも傷つける魔法があるからな。ほいほいと食いついてきやがる。全く、同じ皇族として恥ずかしいぜ」
リエットは、ソウルイーターを鞘にしまい、ロックオンの隣に立つ。
そこにいるのは、気高き獅子姫。皇族として生きる、皇帝メザーリアを補佐し、国を守る姫である。
ネイに忠誠を誓い、ネイを裏切らぬ忠実なる家臣。
それがリエット・ルシエルド。

「どうせ、カシナート王にほのめかされたくちだろう、お前」
「ふ・・・・ハイサラマンダー、焼き尽くせ!!」
コアを傷つけられたネイリル大公はよろめきながら、精霊を召還し、それを油断していたムーンリラ皇女に向けた。
「逃げろ、ムーンリラ!!」
「きゃああああああ!!」
「ち、神の福音よ我にあり、ドル・エルベイド!!」
それは、身代わりになる魔法。
獄炎の炎は、ムーンリラ皇女ではなく、リエットを包みこんだ。
「ざまぁない・・・・・」
「神の福音は我を包む、ドル・ベイド!!」
それは、反射する魔法。
「うがああああ」
ネイリル大公は、自らが放った炎に包まれ、膝をつく。
ロックオンの水銀が、コアに浸入し、破壊を始めた。もう、再生もままならない。
「憎むぞ、リエット皇女!おのれ、おのれ」
「うるせーんだよ、ばーか!」
リエットは、ソウルイーターを再び引き抜くと、大公の首と胴を切り離す。それでも、皇族なので死なない。
「血と聖水の名において、アーメン!!」
ティエリアが、腰のホルダーから二丁の拳銃を取り出して、コアに銀の弾丸をたたきこんだ。
「血と聖水の名において滅びよ!!」
跳躍し、ビームサーベルを取り出すと、それで心臓を抉りぬいた。
「血と聖水の名において・・・・汝に安らかなる死あれ」
ティエリアは、決して神に祈らない。反対に、リエットは神に祈る。
「神の名において、汝に安らぎを。アーメン」
ティエリアとリエットは手を叩きあう。呼吸はぴったりだ。ロックオンが、その手に手を重ねる。

「さて・・・天然ボケの真似しても無理だぜ、ムーンリル皇帝。何故こんな真似をした」
ロックオンは、ムーンリル皇帝に向き直る。
そう、アサシンとなったネイリル大公をわざわざ国に呼び寄せ、ネイへの反逆のチャンスを与えたのは、ムーンリル皇帝である。
それが分からないロックオンではない。
「そうなんですか、ロックオン」
「まぁ、俺も薄々気づいてたけどよ」
ティエリアは呆然とし、リエットはやっぱりかと確信した。


NEXT