血と聖水ウィンド「明日へ、多分歩いている」







「アルテナ・・・・」
緑と紫のオッドアイ、6枚の虹色の羽耳をもつ美しい創造神ルシエード。
今は貧弱なヴァンパイア亜種ホワイティーネイとなった女神アルテナは叫んだ。
「滅ぼすのか。滅びるから、滅ぼすのか。滅びる前に壊すのか」
「私は」
「お前はいつもそうだ!一人で何もかも決めて!アクラシエルの時もそうだ!勝手に無の神など作って、あげくに放り出して!俺は、悪いがお前が大嫌いだ。ははは、俺の洗礼名ルシエルド、お前なんだ。お前の名から与えられた。名前ごと変えたいぜ」
「ネイと同じことを言うのだな。何もかも一人でと」
「実際にそうだろう、ルシエード。世界には、ネイがいる」
「ネイ如きで、世界は変わらぬ」
「変わる。ネイが、ネイがエーテルイーターを所持しているのは、お前が与えたからだろう。ネイとそしてネイの血族ティエリア。彼らが変える。無理やりにでも。世界は壊れない。壊すなら、ルシエード、俺がお前を殺す。そう、ネイの代わりに。ネイはお前を殺せない。お前はネイの「父であり母」であるのだから。何度殺しても、ネイの手ではお前は滅びない。なら、女神アルテナが代わる」
女神アルテナの手には、神を滅ぼす剣ユグドラシルの聖剣があった。
カシナート王から渡されたものだ。

「ユグドラシルの、聖剣」
ルシエードは瞳を瞬かせただけで、全く動じなかった。
「お前にはできないよ、アルテナ」
「できる、俺にだってできる!!」
聖剣をふりかざし、ルシエードの右腕を切り落とす。
ガタガタと、女神アルテナは震えていた。
「ほら。殺せない。みえただろう。私を殺すことは、この世界を壊すこと」
ルシエードは失った右腕をすぐに再生させながら、剣をもった女神アルテナを抱きしめた。
「哀れな。何故我らが争いあわねばならぬ。共にこの世界を創造しただろう」
「お前なんて、大嫌いだ!!!」
「ネイやアクラのようなことを言うのだな」
「大嫌いだ、この野郎!」
女神アルテナは涙を流して、聖剣を鞘におさめると、神の空間から脱した。
「おや、女神アルテナ?泣いているのですか?」
カシナート・ル・フレイムロードが怪訝そうに声をかけてくる。
ずいっと、彼に聖剣を渡して、女神アルテナはまた神の空間に出ると、それを利用してティエリアとロックオンのホームに戻った。

「あれ、リエットさん?泣いてるの?」
女神アルテナは泣いていた。そのまま、泣き続けるリエットは、どかどかと部屋を進んでネイの寝室にくると、そこでのんきに昼寝をしていたネイの首を締め上げた。
「のおおおおお、暴力反対!!!」
「うーーーー!!」
「おい、どうした?」
「負けるな、ネイ。決して、ルシエードに!世界に!運命に!いいな!!」
ガクガクと揺さぶられて、ロックオンも彼女から神の匂いを感じて、起き上がった。
「女神アルテナ?何故・・・・リエットなんかに」
「俺だからだ。俺が、お前に近くにいるからだ。だから、アルテナは俺を選んだ。いいか、ティエリアとネイで、この世界を変えろ。変えてしまえ」
「アクラ!!!」
リエットは、大声でかつて無の神であった精霊を呼ぶ。
「はーい」
天井からしゅたっと降りてきた無の精霊は、彼女から神の気配と父ルシエードの匂いを嗅ぎ取って、目を細くする。
「アクラ、ネイの味方でいろ。いいな。裏切るな。決して、ルシエードの元に帰るな!!」
リエットは泣きながら、喚いた。
「落ち着いて・・・・」
ティエリアが、事情が分からずリエットをなだめる。
リエットは、ガクリと意識を失った。女神アルテナはリエットから離れ、神の地に戻る。

「一体なんなんでしょうか?」
「さぁ・・・・・」
ロックオンははぐらかす。
裏で、神のかけひきがまた始まったのだ。
神を殺すユグドラシルの聖剣がきっかけだろうか。
「アクラは・・・どうする?」
「どうもしない。私は、父とは縁を切った。私は無の精霊。契約者であるティエリアに従う」
「そうか」
ロックオンは、事情を飲み込めていないティエリアをなだめて残し、神の空間に出た。
「ネイ・・・・・か」
「よー。久しぶりか。ちょっとだけ。アルテナが世話になったみたいだな。アルテナに何をした」
今は、神の空間でアルテナは全てを拒絶するように眠りについていた。
「何も」
「いつもそうだ。お前は、一人で何もかも。だから大嫌いなんだ」
「アルテナやアクラと同じことを言うな、お前も」
「自覚があるなら直せば?お前なんて、この世界では隠居したじじいなんだ。隠居したじじいはじじいらしく、大人しくしてろ」
「さて・・・・どうするかなぁ」
「お前、一つ勘違いしてる。俺がお前を殺せない、なんて。俺はネイ、そして進化している。お前からは初期に袂を分かった。エーテルイーターは確かにお前がくれたもの。でも、俺はお前に作られたわけじゃない。作ったのは人間。お前は俺の父でも母でもない。ただ、俺に神の力を与えた神。そして、お前が死んでもこの世界は残る。あくまで創造の神は世界を創造した。世界は、神と共に滅びるわけじゃない。アルテナに偽の未来を見せても、俺まで騙せると思ったか」
「ネイ・・・・・ははははは・・・・・ネイ、だからお前は素晴らしい」
「ふん。あっかんぺー!!!」
ロックオンは、創造の神にあろうことかあっかんべーをして空間を脱すると。


「俺たちは・・・・・多分、明日へ歩いている」
「にゃにまじめな顔していってるのにゃ!きもいのにゃ!」
「うっせー」
「きもいです、ロックオン」
「ティエリアまで、そんなこという?」
「きもいぞ、ネイ」
「アクラもか!」
かっこつけても、かっこよくならない、それがロックオン。
神々のかけひきなんて、神など世界をつくったお偉いさんで、それ以上手出しをする必要なんてないんだ。ネイは、神は神でもちょっと違うが。
フェンリルに顔をひっかかれながら、ロックオンは自分のベッドで眠っているリエットを見る。
女神アルテナまで動き出すとは。
時は、確実に動き出している。


                   血と聖水ウィンド The End

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はい?
はー。
途中ギャグで・・・・あとはいまいちな。
シリアスをつくりたくて残り3章シリアスになって。
また神ですか。まぁ、裏でどうのこうのいってるだけですけど。