血と聖水ムーン「屑は屑と、誰かが笑う」」







15菌
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最近のロックオンはどこか変だった。
名前を呼んでも、どこか違うところにいるようで。
その原因は、ルシエードにあったことと、アルテナが動き出したことにある。
あろうことか、ネイは再び神の権力争いに、一番興味のないことに巻き込まれようとしているのだ。
そう、唯一繋がっていない天界から落とされたフォーリシュのネイだけが、天界にいく方法を知っているとされている。落とされたのだから、逆を辿ることもできるだろうと。最も、ネイは興味がないので方法を知っているとしても、絶対に話したりしないだろうが。

「ロックオ・・・・ン、どいて」
エーテルイーターの犠牲となった、灰となったエターナルの僅かな灰をかき集めて、ティエリアはリュックをおろすと、カプセルに詰めた。
「灰が少ない・・・どうしたんですか。最近変ですよ」
「さぁ・・・どうしたの、かなぁ」
ロックオンは、下限の月をじっと見上げていた。
「ハンター協会に報告を・・・・」
「いい。ナイトメアにさせる」
「あっ」
灰のつまったカプセルを、ロックオンはティエリアの手から攫うと、ナイトメアを呼び出して・・・・そう、昔魔女と呼ばれたアリア=リラの形見であるナイトメア。人語を理解し、人型もとれる。
「ナイトメア。これを、ハンター教会の長、ダークエルフのシェゼル・ディーマに提出しろ。ティエリア・アーデのミッションはクリアしたと、報告つきで」
「了解した。主・・・・・闇が、濃い気がするが、気のせいか?」
「あー?俺は闇の塊だっての。ほらいけ」
「無駄口を叩いて謝罪申し上げる・・・・では、いざさらば」
ナイトメアは、報告の内容とカプセルを魔法で体内に取り込むと、闇夜を蹄の音をたてながら、鬣を揺らしてハンター協会へと急いだ。

「んっ」
ミッションをクリアした安堵感も束の間、今まで戦っていたティエリアは呼吸が荒かった。
大きな木の根元に押し付けられて、唇を重ねられる。
「ん、ん・・・・」
膝を割るように、ロックオンが動く。
艶かしいと、思った。
ロックオンがだ。闇に彩られて、いつもよりも美しく見える。
ティエリアは、情欲を掻き立てられている自分に気づいた。なんてはしたないのだと、頬を紅く染めてロックオンの下から這いずり出ようとするが、自分よりも数倍強い力をもつロックオンの体はびくともしなかった。

「く・・・・・」
耳を舐め上げられ、甘く齧られて、全身が眩暈を起こしたように溶け出していく。
「ん・・く」
舌を絡みあわせながら、何度もロックオンと唇を深く重ねた。
「あ・・・・」
「月が、綺麗だろ」
服の上から薄い胸をなぞられ、先端を緩くつままれて、足が笑いはじめた。
仰け反るような形で、下限の月がティエリアの視界の中にも入った。
「フォーリシュ。屑の中の屑。は・・・・そこから這い上がった、俺は」
ビクリと、ティエリアの右足が痙攣する。
屈んだロックオンに右足の太ももにかみつかれ、吸血されたのだ。
「やっ、はっ・・・・」
「いや?」
「んくっ」
口腔の中に指を突き入れられて、舌を絡みとられ、指は歯茎を優しくなぞって、それから絡み付いてくる紅いティエリアの舌を弄ぶ。
「ロック・・・・オ・・・・あ、あ」
ティエリアが限界だった。
ここ数ヶ月、ロックオンと体を重ねていない。
キスをかわす程度で。
どうしてと聞くわけにもいかず、いつもロックオンのペースに乗せられていたティエリアは、1週間に3〜4回、しかも数回体を重ねるというディープな情交に慣れて、いや時間をかけて慣らされてしまっていた。
体が疼きだして、止まらない。
「さて、帰ろうか?」
意地悪そうに、ロックオンが口腔から手を引き抜いて、とさりと身を預けてきたティエリアの耳を噛みながら、くつくつと笑った。
「あ・・・・帰らないで。だめ・・・・だめ」
「どうして?」
「言わせないで」
真っ赤になって、口ごもるが、ティエリアが自分からロックオンの腰に手を絡めて、ロックオンの衣服を緩め出した。
「おい・・・・」
「だめ・・・帰っちゃ、だめ」
ロックオンが闇に魅入られたのなら、ティエリアも同じだ。同じ血を流すのだから、血族であるティエリアにも影響はでる。


「屑は屑・・・・・フォーリシュ。かわいい私の、弟。フォーリシュのネイ」
世界の果てで、エーテルイーターの食事を終わらせたルシエードは、月を睨んで声もなく笑い続けた。


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