血と聖水外伝「ホーム」







「あ?」
ロックオンは呆然となった。
このホームは二階建て。でも、天井にアクラシエルが居候しているので、3Fができあがってしまった。勝手にいじって建て直したかんじだ。
見た目は二階建てだが、空間が捻じ曲がって、きっぱりと3Fがあった。
それに続く階段もある。
そして、掃除にきたロックオンは驚いた。
3Fに、風呂があったのだ。
「そ、そんなばかな!」
いくらなんでも、風呂まで作れるのだろうか。
精霊だろう、今は。アクラシエルは元神であるが今は無の精霊。精霊にここまでできるはずがない。

「おい、どーなってんだ!」
ベッドで眠り続けるアクラシエルを起こすと、アクラシエルははりせんを取り出してロックオンの頭を殴った。
「ネイ、たとえネイであろうと誰であろうと私の睡眠を邪魔するものは・・・・ZZZ」
「おい、アクラ!」
「あーうっさいなぁ」
同じ部屋に同居しているルシフェールが、棺桶の蓋を外して起きてきた。
今時、棺桶で眠るヴァンパイアなんて世界中に探してもこいつくらいだ。多分。
「どうなってんだよ!風呂場が!」
「あー。業者呼んで作らせたんよ。下にある風呂場、たまにティエリアとロックオンがうっふんあっはんしてるから、入れないときあるやん」
「そ、それは・・・」
目を泳がせるロックオン。
「あー、それから掃除必要ないから。俺がしてるから」
「あ、そう・・・」

掃除機をもって、ロックオンはリビングルームに戻ると、3Fは見なかったことにして音痴な歌を歌いながら掃除機をかける。
「ふふふ〜〜んじゃがいも〜伯爵〜俺はじゃがいものネイ〜〜ふふ〜〜ん♪」
ウィイインと、掃除機がうなる。
それで隅々まで綺麗に掃除していく。
「ロックオン、手伝いましょうか?」
「あ、ああ。窓ふいてくれ」
「分かりました」
ティエリアは窓を綺麗にふいていく。
「じゃがいも伯爵〜〜ふふふ〜〜ん」
「にぎゃあああああああ!!」
「あれ?」
掃除機が、何か白いもの吸い込んだと思ったら、それはフェンリルだった。
床にまるまって、お日様の太陽を浴びて寝ていたのだ。
「にぎゃああああ、掃除機に殺されるにゃあああああああ!!」
「このさい、お前も掃除機で綺麗にしてやるぜ」
掃除機に吸い込まれて、フェンリルは離れない。
「にゃああああああ、主、主、ロックオンがいじめるにゃーーー!!」
涙を流したフェンリルに、ロックオンはちょっとからかうつもりだったのに、やばいと思った。
「僕のフェンリルになんてことを!ロックオンのばか!」
フェンリルを抱いて、ティエリアは寝室に閉じこもってしまった。
こうなると、なかなか機嫌を直してくれない。
ロックオンは、掃除を続けながら、トホホと自分の行動を後悔するのだった。

「ねーティエリア、機嫌直してくれよ〜」
「知りません」
「俺、今日何処で寝ればいいんだよ」
いっつも、同じ寝室のベッドで眠っている二人。
「廊下で寝たらどうですか」
「とほほほほ・・・・」
「ざまぁみろにゃ」
キランとフェンリルの蒼い瞳が、勝ち誇ったように光る。
そして、大好きな主のティエリアと、今日は二人だけで眠ることに成功したのであった。