「さて、七草粥の材料、七草をとりにゴーゴゴー!!」 「ゴーゴゴー・・・・ZZZZZ」 早朝にたたき起こされた刹那は半分寝ていた。 ロックオンに、七草粥を作ってもらうことになったティエリアと刹那。ティエリアは、自分たちで七草を調達するといって譲らない。 そうして、1月7日はこうやって、刹那を伴ってティエリアは七草探しに出かけるのであった。ちなみに、無論ジャボテンダーは背中にしょっている。 「ジャボテンダーさんも、きっとうまくいくといっています!さぁ、いこう刹那!」 「グー・・・」 「寝るなあああ!!!」 ティエリアは、ジャボテンダーで刹那を思い切りなぐった。 「あべし!!痛い!!」 「真面目にしろ、刹那」 「・・・・・・・・・むー。仕方ない。今日はお前に付き合うか」 二人は自転車に乗って出かけた。 刹那の家は東京のど真ん中にある。七草の生えている場所は少し遠くまでいかないと、むりだろう。 「さて、最初は芹(せり)だが・・・・これは、昨日の間に手に入れておいた!」 「はやっ!」 刹那はつっこんだ。つっこむしかない、ここは。 自慢げに、背中にしょったジャボテンダーをおろして、抱きしめるティエリア。 「ジャボテンダーさんも、よくやったと褒めてくれている」 「そ、そうか・・・では、次にいこう」 「次は・・・薺(なずな)、ペンペン草ともいわれるものだな。それくらいなら、普通の空き地に生えてるだろう」 自転車を、見つけた空き地の前に止めて、二人は立ち入り禁止の看板を蹴って中に入った。この年少組、揃うとある意味傍若無人になる。 適当に草が生い茂る空き地を探し回って、すぐに見つかった。 「あった!!」 「でかしたぞ刹那!!」 薺をビニールの袋にいれて、次を探すべく、ティエリアはメモを取り出す。 「えーと、次は御形(ごぎょう)・・・・。????よく分からない。しまったな、すぐに分かると調べておかなかったのが間違いだったか。刹那、分かるか?」 「無論分かるわけがない」 自慢する刹那に、ティエリアも頷く。 「うむ、僕も分からない・・・ので、このタンポポを御形ということにしよう!面倒だし!」 おい、それでいいのかよ!? その場にロックオンがいればそう激しくつっこんだだろう。でもマイペースなこの二人はそれで通すつもりらしい。 「では次・・・・繁縷(はこべら)・・・・これは分かる。ハコベという雑草だ。ここにはないようだ。とりあえず、川辺に移動しようか」 「了解した」 二人は仲良く自転車をこいで、川辺におりた。 そして探し続けること1時間。 「あ、あったーー!!」 「おお!!」 ティエリアが見つけ、これで4つ目まで確保。タンポポとか入ってるけど、まぁそれは無視で。 「次は・・・」 「次はなんだ!?」 まるで宝探しのようで、気分が乗ってきた刹那はワクワクしている。ここらへん、少年らしい。 「次は仏の座(ほとけのざ)、別名コオニタビタコ。わけがわからないな。名前からして地獄に生えたタコの気がする。うにょうにょって」 「いや、それはないから。タコは生きてるから。海にしかいないから」 刹那はつっこんだ。華麗に。 「そうか。タコ・・・・あ、帰りにタコ焼き食べてかえろ!」 「分かった」 「それから、クレープも!」 「ホットドックもいいか?」 「・・・・・・・あれ?僕たち、何しにきてたんだっけ?しってますか、ジャボテンダーさん?」 返答はなかった。 刹那も、ぼけーっとしている。 10分の時間がすぎる。 二人は手を繋いで川辺に座って、もってきたおやつを食べてから青空を見上げている。 「あ、思い出した!」 「俺たちはガンダムだ!!」 「そうそう、僕たちはガンダムになるためにここに来た・・・じゃない、七草探しにきたんだった」 「あ、そうだった」 二人は立ち上がった。 つか、普通そういう重要なこと忘れますか?でも二人は忘れます。刹那もティエリアもある意味天然。目の前のことに熱中しやすくて、肝心なことを忘れることがある。 戦闘や訓練の時はそんなことは全くないが、日常生活でこういうどうでもいいようなことをメインとすると、頭がボケっとなって、ついつい平和な時間にのまれてティエリアの頭の中はジャボテンダーさんとロックオンでいっぱいだったし、刹那の頭の中はいつでもガンダムしかない。 「で、結局どうする?」 「うーん。わかんないしみつかんないし。あ、この雑草ですまそう!」 隣にはえていた雑草を摘んで、ティエリアは打開策をとった。 「了解した」 刹那は頷く。 「次は?」 「次は菘(すずな)と蘿蔔(すずしろ)・・・これはカブと大根だな。畑に生えているだろう。よし、生えてそうな畑までタクシーでいくぞ!」 「了解した」 二人は、川辺に自転車を残して県境までタクシーでくると、畑を物色しだした。 「お、あった!大根発見・・・・こっちにカブもあった!!これにて任務完了!ミッションクリア!」 ティエリアは勝手に大根をひきぬくと、隣に生えてたカブも引き抜いた。 「なぁ。これって・・・・畑泥棒に・・・・」 「何をいっているんだ刹那?七草って雑草なんだろう?じゃあこれも雑草だ。雑草を栽培しているなんて珍しい農家だ」 IQ180は、あくまで得意方面だけ。 もうアホ丸出しです。 背中のジャボテンダーも哀しそうにしています。 「あんれまぁ、なんちゅー別嬪さんや」 その時、ちょうど畑の手入れにきたおじいさんと出くわしてしまった。 「つかその大根とカブうちの・・・・畑泥棒だーー!!」 刹那は俊敏に動いた。 そして一万円札を手に、おじいさんに握らせる。 「売ってもらったということで」 「あんれまぁ。こんな大金・・・へぇ。なになに?」 おじいさんに、七草を探していることを二人で話すと、おじいさんは笑顔になって一万円を返して、さらにかぼちゃやきゅうりなんかもとってきて、刹那に渡した。 「いんやぁ、若いのに七草かぁ。懐かしいのお。お金いらんよ坊。そっちの美人な彼女とよろしゅうし。いやまぁ、久しぶりにいい話きかせてもろた」 刹那は大分脚色した話をおじいさんに語っていた。 目の見えない近所のおばあさんのために、二人で七草を集めて七草粥を作ってやるのだと熱弁したのだ。ティエリアもそれにあわせ、泣き真似までして見事な芝居だった。 こうして、二人はカブと大根のほかにたくさんの実りをもらってタクシーで川辺にあった自転車のところまでくると、タクシー代を払って帰宅することにした。 ******************************************* 「ロックオン!七草とってきました!!」 「おう!って、なんだ泥だらけだぞ!まずはシャワー浴びてきなさい!!」 いろいろ探し回ってたせいで、服には泥がついていた。たこ焼きとクレープとホットドックは何気に繁華街にいって食べてきた二人。 「はーい」 「分かった」 ティエリアと刹那は、バスルームに向かう。その刹那の首根っこをロックオンがつかむ。 「刹那くん。何、ティエリアと一緒に入ろうとしてるのかな?ん?」 「ちっ」 刹那はロックオンの頭に頭突きを食らわせて、逃げていった。 「ねぇ、ロックオン・・・なんかこれおかしくない?たんぽぽまじってるよ。こっちの雑草ってなんだろう?おまけにかぶと大根土ついてるし・・・どっからもってきたのかな?それにこのかぼちゃときゅうりは一体・・・」 アレルヤが、台所に置かれたティエリアと刹那のとってきた七草とおじいさんからもらった野菜を見る。 「野菜は買ったんじゃないのか?まぁ、他の七草はまぁ、こんなもんだろ。俺、てっきり全部雑草もってくるのかと思った」 「あ、僕も!!」 二人は顔を見合わせてクスクスと笑う。 「あの二人にしちゃ、がんばったほうだ」 「そうだね」 「あ、その大根とかぶ、あときゅうりとかぼちゃも畑の人からもらった」 刹那がミルクを飲みながら、説明する。 「はぁ!?」 「な、なんでもらったの?」 「いや、まぁ・・・・くくくく」 腹黒い笑いをして、ニヤリと笑む刹那。 ロックオンとアレルヤは、激しく事情を聞きたかったけど、なんか怖いので遠慮しておいた。でも、刹那は勝手に説明をしだした。 「最初は畑泥棒になるところだった」 「おまえなぁ」 「結果ならなかったからいいけど。まぁ・・・過ぎたことは仕方ない。でもちゃんと反省するんだよ」 「無論しない」 「「刹那〜〜!!」」 アレルヤとロックオンが腰に手をあててつめよってくる。 そこに、シャワーを浴び終えたティエリアが裸でやってきた。 「着替え、おくの忘れてた」 「ブッ!」 「ブハッ!!」 「うわああああ、見るな、見るなあ!!!」 真っ赤になったアレルヤと刹那。ロックオンは、必死で恋人の裸を隠そうとする。 「どうしたのですかロックオン。そんなに慌てて」 「バスタオル!バスタオル巻け!裸は俺以外に見せちゃだめだから!」 「はぁ・・・・」 中性のティエリアは、未発達な女性のような体をしている。 ティエリアは、いわれたとおりおいてあったバスタオルを・・・・頭に巻いた。 「こらああ、見るなってば!!」 「うーんやはりツルペタだな」 「ツルペタでもティエリア美人だしほとんど女の子の体だしねぇ・・・・あー、鼻血たれてきた」 「ほら、ティッシュだ」 刹那がアレルヤにティッシュをさしだす。 「ちょ、ティエリアああああ!!」 ティエリアは、湯上りにコカコーラを腰に手を当ててゴクゴクと飲むと、そのまま着替えのおいてある部屋に戻っていった。無論、焦りまくって必死でティエリアの裸を隠すロックオンと一緒に。 |