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そのまま、桜が散っていく。
「テェイリア、リジェネ、お茶しましょう。ママ、たくさんクッキー焼いちゃったの」
「あ、刹那とニールと、ライル、それに遊びにきてるアレルヤも呼んでいいかな、ママ?」
庭でティータイムを提案した母親のルージュ夫人の美しい顔を、リジェネが振り返る。
「歓迎よ〜。さぁ、みんなで春の桜を見ながらお茶をしましょう」
「母上、僕、紅茶はアッサムがいい!」
「はいはい、ティエリアちゃんはいつもそれが大好きね。ジャボテンダーちゃんのは?」
「同じくアッサムで!」
ティエリアはジャボテンダーを抱き締めて、片手をニールと手を結びながら、庭を歩いていく。
ニールも穏かな顔で、ティエリアと一緒に歩いていく。
ライルと刹那、アレルヤは別宅の刹那に与えられた、ホテルのスィートルームよりも広い室内で談笑していたのだが、呼ばれて同じように庭に出てきた。
「あ、お久しぶりです」
ルージュ夫人を見たアレルヤは、ペコリとお辞儀する。
一緒に同じ敷地で暮らしている刹那、ライル、ニールはいつでも、ほとんど毎日ルージュ夫人を見かけるが、アレルヤは自分の家があるので遊びにきたときくらいしか、アレルヤを見ることはない。
「あら、アレルヤちゃん、お元気?」
「はい、元気です」
「よかったわ」
ルージュ夫人はおっとりと微笑んだ。ティエリアとリジェネの父であるリーダリア侯爵は、今日は仕事で海外に出張中だ。
ティエリアとリジェネの両親は、仕事はできるだけ自宅ですることにしており、家にいる時間は割とおおい。それでもどうしても出張などがでてくる。1つだけなく複数の企業を運営する会長でもあるリーダリア侯爵は、世界中を飛び回っている。ルージュ夫人も、それについていくことも多かった。
ちらちらと散っていく桜の下でのティータイム。
おいしいクッキーやケーキと一緒に。
メイドさんたちが、フルーツパフェなど、コック長の自信作を庭に運んでくる。
「ああ・・・春だなぁ」
刹那は、散っていく桜を見上げ、そして微笑した。
もう、グラハムと会うこともないだろう。
あの変態は学園を卒業したのだから。同時に、教師も卒業だ。
ざまぁみろ。
「ざまーーみろーー」
春の空に、刹那は叫んでみた。
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やがて短い春休みがあけて、新学期がはじまった。
「刹那、まってー!ジャボテンダーさんがまだ用意できてない!」
ティエリアが、もたもたしているところに、苦笑してニールが手伝ってくれる。
「ニール、ありがとう。鞄もってくれるの?」
「ああ。ほら、いこうぜ。車出ちまうぞ」
ライルは欠伸をして先に、学園に向かう高級車の中で半分寝ていた。
刹那はティエリアとニールと並んで、高級車のところに歩いていくと、メイド長の服装チェックを受けて中に乗り込んだ。
リジェネも、遅れて乗り込む。
服装チェックといっても、ティエリアとリジェネは思いっきり私服で、制服を着ることは稀。でも、学園に一番寄付をしており、運営にも参加しているので咎められることはない。
ニール、ライル、刹那はちゃんとした制服姿。
まぁ、着崩してはいるけど、そんなのみんなやっている。
最後にメイド長と執事さんが乗りこんで、高級車は私立ガンダム学園に向けて出発した。
「おはようございます」
「はい、おはよう」
今日も、ビリー先生は生活指導員として登校してくる生徒を見守っていた。
いつもなら、この隣に、フンドシ一丁の友人のグラハム先生の姿があるのだが、ない。
彼は、学園を卒業してしまったのだ。
「ついたついた〜」
リジェネが、高級車のドアをあけられたと同時に、鞄を持って飛び出していく。
「待ってよ、リジェネ!」
ティエリアが背中にジャボテンダーさんを背負って、その後ろをゆっくりとついていく。
「おい、ティエリア鞄!」
「ニールが持って!」
「仕方ないなぁ」
二人は恋人同士だ。とことんティエリアに甘いニールは、ティエリアの鞄を持って車を出た。
「春だな。いない。なんて素晴らしいことだ」
刹那は涙ぐんでいた。
いつもなら、グラハム先生が真っ先に駆け寄ってくるだろうに、教師の中にグラハム先生の姿は見えない。
「刹那、いこうぜ」
ライルが鞄を肩に担いで、感動している刹那を促す。
「ああ。アレルヤ、おはよう」
「あ、おはようみんなー!」
アレルヤが校門をくぐってやってきた。みんな談笑して下駄箱に向かうが、刹那の動きが止まった。
「はぁ〜い、少年!ハム先生、寂しくて寂しくて、学園に入学しちゃった!3年間また一緒だぞ!」
じゃっかん足がくねりぎみの動きで、学園の制服を着たグラハム先生が刹那のもとに走りよってくる。
「少年、感動したか!?これぞ感動の再会だぞ!」
「・・・・・・・・・・」
「少年!?」
刹那は地面を見て、震えていた。
「どうしたんだ、少年!?そんなに私がいなかったのが哀しかったのか?」
「俺の青春と感動を返せええええ!!」
刹那の蹴りが、グラハム先生の股間にヒットする。
そのまま、刹那はガンダムOOに乗り込むと、機体を動かしてグラハム先生を校庭に放りだすと、叫んだ。
「ビームサーベルでいってしまえ!」
ビームサーベルを取り出す。
逃げ出すグラハム先生。
「愛が、愛が熱いぞおお、少年!!」
「そのまま焦げろ!!!」
カッと、閃光が満ちる。
ビームの粒子を浴びて、グラハム先生は黒焦げになって保健室に運び込まれた。
そして、3時間目、現代国語の時間。
ガラリと戸をあけて、完全復活したグラハム先生は、教科書をもって、フンドシ一丁でいつものように、2年OO組に入ると、腕を広げるのだ。
「愛しているぞ、少年!男子生徒諸君!!」
そして、みんなからブーイングとものを投げられて、縮こまるのだ。
「いて、いたい、ちょ、鋏なげるのは痛いって、痛い!!」
「かせ、ティエリア!」
「あ、僕のジャボテンダー君スペシャルが!」
ジャボテンダーの席の隣に、聳え立つジャボテンダーの形をした石像。名づけてジャボテンダースペシャル。
それをごごごごと持ち上げて、刹那はハム仮面に向かって投げた。
「もぎゃああああ!!」
重たい石像の下になって伸びるグラハム先生。
いつものように、委員長のフェルトが立ち上がる。
「刹那、やりすぎよ」
「俺のみになってみろ、一度」
「遠慮しておくわ」
フェルトは首をふってチョークをもって、黒板に。
自習。
そう文字をかくのだった。
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久しぶりの私立ガンダム学園。
主人公はいつも刹那です。ロクティエ小説じゃないわ。最後だけ刹フェル風味。
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