「カタギリ、新しい機体を作ってくれた礼だ」 そういって、ミスター・ブシドーことグラハムはカタギリに紙袋を渡した。 「気を使ってもわらなくてもいいんだがな」 カタギリは苦笑する。 自分を利用したクジョウのいるCBに一泡吹かせるためにもアロウズに入ったのた。 そこで新機開発を任せられるが、今まで開発の部門から離れてうたカタギリは、そのブランクを埋めるように、グラハムに注文された新機開発にのめりこんだ。 それこそ、寝る間を惜しんでまでも、開発にのめりこむ。 昔のような不規則な生活になるし、睡眠時間も減るが、カタギリはどうでも良かった。 グラハムが納得してくれるような自信作を作ってみよう。 カタギリは、時折クジョウと写った写真を見ては開発に性をだした。 クジョウには長年ほれ込んでいた部分もあり、四年間も同棲していたせいもあり、明確に彼女が好きで純粋に愛していた。 いつか、彼女の酒癖を直して結婚しようとまで考えていた。 カタギリは、婚約指輪まで用意していたのだ。 「クジョウ」 着々に進んでいく、新機開発を見下ろしながら、カタギリはコーヒーを手に、大切そうに二人で写ったその写真を白衣のポケットにしまいこむ。 彼女への未練も、この新機が誕生すれば終わりにしよう。 カタギリは、まだ心のどこかでクジョウを愛していた。 それなのに、クジョウは自分を裏切った。 CB構成員の戦術予報士という、最悪な形で。 自分は、ただ利用されていただけなのだ。 愛しくて憎いクジョウ。 君を殺すのは、僕の仕事ではない。 カタギリが、戦艦ごと破壊してくれるだろう。 誰でもない、自分が作った新しい機体によって。 カタギリは、やってきたグラハムのためにコーヒーを入れた。 カタギリはブラックを好むが、グラハムはブラックはあまり好きではない。 砂糖を少しいれ、グラハムに渡す。 「ああ、かたじけない」 かわった仮面をしているが、カタギリももう慣れてしまった。 グラハムは、コーヒーを飲みながら、カタギリがごちゃごちゃした机の上に置いたプレゼントの紙袋を手にとった。カタギリのことだから、このままプレゼントの存在も忘れ、書類だらけの机に埋没してしまうかもしれない。 「グラハム?」 グラハムは中身を取り出すと、梱包を解いてカタギリにプレゼントを見せた。 「どうだ、私とお揃いだぞ」 グラハムの声が明るくなる。 一瞬呆然となってしまったカタギリであるが、すぐに笑顔を作ってグラハムからプレゼントを受け取った。 プレゼントは黒のふんどしで、しかもまわりをレースとフリルで彩られているごっつい代物だった。 「ははは・・ありがとう、嬉しいよ」 ものすごく顔を引きつらせながら、カタギリは笑った。 「そうだろう!オーダーメイドでな、絹でできている。中央には勝負!という文字も入っている。一言でいうなら、勝負下着ならぬ勝負ふんどしだな」 絹でてきてるとか、無駄に豪華だなおい。 「今度それを着て、一緒に銭湯にでもいこうではないか」 グラハムは本気だった。 「まだ、仕事がいっぱい残っているからね。考えておくよ」 頬を引きつらせたまま、カタギリは答えた。 黒の勝負ふんどしは、一回も使われることなく、カタギリの書類の中に埋没していったという。 |