寒くなったね(3期)









「寒くなったね」
吐く息はどこまでも白く、まで雪が溶けていくようだとフェルトは思う。
「寒いか?」
「うん、少し」
刹那の声に、はにかんで言葉を返す。
指がかじかみそうだ。
こんなことなら、手袋をしてくればよかったと今になって後悔する。

クリスマスの飾り付けが始まった街路樹を見上げる。
きっと、もう少しするとイルミネーションが綺麗に点滅する。
12月に入れば恋人たちが通り過ぎ去る一つのスポットになるだろう。

「はやく、イルミネーションが見れたらいいな」
「まだ早い」

刹那は自分のマフラーをとると、そっとフェルトの首にまく。
フェルトはマフラーをしていたけれど、刹那の体温がさらにフェルトを暖めてくれる。

「刹那、寒くないの?」
「俺は乾燥砂漠地帯出身だから平気だ」

今はない故郷のクルジス。
夜になれば氷点下まで気温は下がった。
厳しい環境で生きてきた刹那にとって、今はまるでぬるま湯につかっているかのようだ。でも、それが暖かくてもう戻れない。

あの頃には。

あの頃、生きるために人を殺していつもギラついた目をしていた少年は、恋人に笑顔を見せる穏かな青年となった。

どうか、イルミネーションが点滅するように、この気持ちも輝けばいい。

冬にまじる白い吐息に、言葉なく世界は閉じていくのだ。