じっ。 まるで、昔のティエリアがそうしていたように、刹那のトレイにのせられた、砂糖のかけられた甘そうな苺を食い入るように見るめるフェルト。 凝視している。 あまり多くはないが、それでも二人で会話していたのだが、夕飯に苺がついてきたのを知って、フェルトは苺を見つめ続けた。 「・・・・欲しいのか?」 ぶんぶんと、フェルトは首を横に振る。 ティエリアと違い、感情を素直すぎるほどに露にできないフェルトは、恥ずかしくなって頬を赤らめた。 「遠慮することはない」 「ううん、違うの」 少し離れた席では、昔のように、ニールの分まで苺を頬張る制服姿のティエリアがいた。 至福らしい表情を浮かべている。 あんな風に、素直すぎるのもあれかと、刹那も思う。 あそこまでいくと、フェルトまで生態が謎な人物になってしまうではないか。 かのティエリアは、ぶんとジャボテンダーを昔のように振りかざして、それをロックオン、ニールの顔にめり込ませていた。 嗚呼、愛とは恐ろしいものだと、あの二人を見ていると時に思う。 「ただね。苺の真っ赤な色が、刹那の瞳みたいだって、見とれてた、だけだから」 自分の分の苺をフォークにさして、一口。 「甘いわ」 「そうか。俺の分もやる」 フェルトの言葉に、刹那は微笑んだ。 昔、戦場では血の色だと罵られた、この赤。 ティエリアも同じような色をしているが、あちらはオレンジの色が明るいガーネット。 鳩の血の色とされる、ピジョンブラッドのルビーの瞳をもつ刹那は、自分の瞳の色が時折嫌いになる。まるで、殺してきた人間の血が、瞳に凝縮しているような錯覚を覚えて。 少し、子供っぽく笑う刹那に胸をときめかせて、フェルトが刹那にもらった苺を、結局食べてしまうのであった。 |