阿呆が阿呆









「よお、ティエリア。プレゼント」
ロックオンは、別に何の記念日でもないけど、やっぱり恋人の喜ぶ顔がみたいと大きなラッピングされた紙袋に入ったものをとりだす。
「なんでしょう?」
ティエリアのことだから、未だにアナログめいた本とかそういうのが好きそうだけど。装飾品とかは見るのは好きだけど、必要以上に欲しがらない。
まぁ、宝石さえ色あせる美貌だからとか、ロックオンは勝手に思っている。
感動できるストーリーとか銘打って売り出されていた絵本やらを買ってあげたら、涙の洪水となってロックオンのシャツで鼻水をかむくらいだ。
涙脆いのは知っている。映画のDVDとか、ホラーものも好きだが、恋愛ものも好きらしい。ロックオンはホラーだけは遠慮願いたいタイプ。テロで失った家族を思い出す。猟奇的なシーンにはいつも死体とか血とか、偽者だってわかってるけど、受け入れられない。
ばりばりと、ティエリアが梱包の紙をはがしていく。

刹那がもってるジャボ美だかジャボ子さんだが、それによく挨拶をジャボテンダーをもってするくらいだから、もう一体くらい増えていいんじゃね?とかロックオンは思った。
ジャボ美さんだったか、ティエリアのもっているジャボテンダーにはミニサボテンダーがついていて、ジャボテンダーが出産したことになっている。
ほんと、頭の中にコスモが渦巻いています。

現れた新たなるジャボテンダーの抱き枕を、ティエリアは神妙な面持ちで眺めていた。
「気に入らなかったか?」
「うーん。僕にはこのジャボテンダーさんがいますから。浮気はちょっと…」
浮気になるんかい!
俺はどうなるの!
ロックオンは笑い出すのを我慢して、新しいジャボテンダーをティエリアに近づける。

華麗なるアッパーが、ジャボテンダーもろともロックオンの顔に決まった。
「ティ、ティエリアああああ!?」
「そのジャボテンダーさんはジャボテンダー星からの間諜です」
ぶんと、いつものジャボテンダーをうならせて、ロックオンの顔面にめきっと決まらせる。
「スパイです。スパイスではありません。スッパイわけでもありません」
「はぁ。気に入らなかったんだな。何が欲しいんだよ、お前さん」
「ジャボテンダー星」
きっぱりと言い切られて、ロックオンは逃げ出した。だって、ティエリアがジャボテンダーを持って追いかけてくるから。

結局買われたジャボテンダーは、何故かアレルヤいきとなった。
ほんと、阿呆は阿呆。
生態も謎。
「ジャボテンダー星はここから遥か30万光年離れたジャボテテン銀河に」
語りだすと止まらない。しかもジャボテンダーふりあげて、ロックオンにびしばし投げつけることが最大の、ジャボテンダー流の愛らしい。
痛いのでロックオンは逃げ出す。ティエリアは追いかける。

阿呆は阿呆。
頭にはコスモが渦巻いている。どっかで、脳みそ落っことしてきたんだろう、多分。