ゆらゆらゆら。 水槽の中で泳ぐ僕は熱帯魚。 綺麗な水と、新鮮なエサで綺麗な色を浮かべて泳ぐ僕は熱帯魚。 ゆらゆらゆら。 半月に一度は水を全部変えられて、いつでも新鮮な水の中で泳いでる。 ほら、僕の蛍光色の色が綺麗だから人がよってきたよ。 僕は小さいけど、他の熱帯魚よりも色が綺麗だから。 小さい子供なんかは、ずっと僕を見てる。 でも最近は、隣の水槽の子が僕をずっと見てる。 同じ種類なのに、鮮やかさは僕のほうが上。 なんで一緒の水槽じゃないんだろう。 僕より少し大人しめの色だけど、同じ種類のお魚なのに。 ねぇ、買われていくなら一緒がいいな。 だってそうでしょう? あなたは僕のパートナーになるんだから。 あなたはいつでも求愛のダンスを僕に見せている。それに僕は魅入ってしまった。 「あの魚と隣の水槽のこの魚をください」 「かしこまりましたお客様。少しお待ちください」 パシャン。 ゆらゆらと揺れる水草の近くから、網ですくわれて僕は小さなビニール袋の中へ。 隣の気になってたあの子も、同じく網ですくわれて僕のいる小さなビニール袋の中へ。 お客様と呼ばれた人間は、僕たち2匹を購入した。 「やぁ。やっと会えたね」 「ああ、やっと会えた」 僕たちは、喜びの踊りを小さなビニール袋の中で交わす。 店員が袋に空気をいれて、器用に蓋をして、僕らは揺られて買われていく。 僕たちは、巡り巡り今では小さな熱帯魚。 ゆらゆらゆれるお魚さ。 でも変わらない。 あなたを愛しているから。 あなたに愛されているから。 この命が尽きて、また生まれ変わるならもう少し自由のきく生き物がいいな。 ねぇ、そう思わない? ゆらゆらゆら。 熱帯魚も悪くないけれど、水槽が別々だったもの。 僕は言葉もしゃべれない。 でも泳ぐことで意志は伝えれる。 ゆらゆらゆら。 僕は熱帯魚。貴方も熱帯魚。 二匹して、誰とも知らないお客様に買われていくの。 でも、その先には一緒の水槽があるだろうからとても嬉しい。 「ロックオン、やっとまた会えましたね。ニールと呼んだほうがいいですか?」 「どっちでも好きな方でいいさ。ティエリア」 僕たちの運命はまた巡り巡り、やがてまたヒトへと変わるだろう。 だけど今はただの熱帯魚。 ゆらゆら揺れて、綺麗な色で人を楽しませる。いつかまた、ヒトになったら今度こそ結婚式をあげたいな。 だって前のヒトだった頃は、ロックオンは僕を残して逝ってしまい、僕はとても悲しんだ。僕は数年後ヴェーダに意識を少し残して朽ちていった。 だから、さ。 |