二人のティエリア「婚約指輪」









大破したデュナメスのコックピットから出て、アリーアル・サーシェスに銃の標準を合わせる。

そして、引き金を引く。

「はは・・・・今度は、俺がティエリアを置いていくのか。・・・でも、ティエリアの元にいける」

血を吐きながら、ロックオンは想う。

NO6のティエリア。ロックオンをひたすら慕い、微笑みを浮かべていたティエリア。ついに、恋人扱いはできなかったけれど、NO6のティエリアも心の何処かで愛していた。それは、失ってしまったNO8のティエリアへの愛とは違う、友情のような愛情。恋人に向ける愛情ではなかった。
それでも、NO6のティエリアは満足してくれていた。

「今・・・いくから」

そっと、地球に手を伸ばす。

掴もうとしても、掴めない青い星。

テロが憎くて、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターになった。結局、していることはテロ行動と似ていた。だが、武力介入でテロが根絶する夢は持っていた。

無重力の中、体が闇に向かっておちていく。
ポッ、ポッ。

ロックオンの体を、緑の光が包み込んでいく。
発光して、宇宙に溶けていく。

「    」

「ああ・・・・そこに、居たのか」

「ロックオン。いきましょう。一緒に」

ロックオンが愛したNO8のティエリアは、そっと背中に翼を広げて、ロックオンの冷たくなっていく体を包み込んだ。

「暖かいな。そうだ、これ渡すよ。俺の指にはめてくれ」

NO8の透けた体のティエリアの指には、キラリと婚約指輪がはめてあった。

ロックオンが、血を吐きながらゆっくりと懐から取り出した、ロックオンの分の婚約指輪を受け取って、ティエリアは優しく微笑えんだあと、少し悲しそうにロックオンの指に婚約指輪をはめる。

「結婚・・・・式・・・・できなかっ・・・た・・・・許してく・・・れ」

「もういいんです。何もかも。さぁ、一緒にいきましょう。遠い場所へ」

バサリと、ティエリアの翼がエメラルド色に輝く。

そして、ポッポッと、光の泡となって、ロックオンの体と一緒に溶けていく。宇宙の深遠で。

宇宙に溶けていく。

二人が。

ロックオンとティエリアは緑の光となって、宇宙から消えようとしていた。



「ロックオン・・・・そうか、いってしまうのか。ティエリアと」



残されたNO6のティエリアは、涙を零しつつも、どこか幸せそうだった。

消えてゆく。

二人が。

この世界から、遠い場所に。

二人は、とても幸せそうだった。

この世の終わりがきても、もう離れることはない。二人のティエリアとロックオン。ロックオンがとったのは、NO8の最初のティエリア。後継者のNO6のティエリアとは愛を結ばなかった。
まるで、それがNO8のティエリアとの約束事のように。

二人は宇宙に溶けていく。

蛍の光のように、淡く。

透けたティエリアの体も、物質界にあるはずのロックオンの体も。

螺旋を描いて、光の滴となって消えていく。

そして、宇宙の深遠には静寂だけが残された。




「愛してる」

「僕も」



囁きは、深遠の奥深くで一度交わされたあと、アストラルの世界へと消えていったのだった。