のそのそのそ。 のそのそかたごとかたかた。 「なんですか、これ」 「亀だ。ミドリガメ」 ティエリアのいる部屋はロックオンの部屋だ。ティエリアにも自分の部屋がある。だがしかし、ロックオンの部屋で寝泊まりをしているティエリアにとっては、ロックオンの部屋は自分の部屋にも等しかった。 そのティエリアが指さしているのは、床をのそのそと歩いている亀だった。 緑色なのでミドリガメだろう。そう大きくはない。小さい、まだ子供のような大きさだった。 「はぁ。なんでそんなものがこの部屋にいるんですか」 「拾ってきたんだ」 「はぁ。拾ってきた・・・・じゃない、犬か猫か!亀だろ!拾ってくるな!」 「ティエリアが切れた!」 「切れていない!徹夜でイライラしているだけだ!」 似たようなものだろうと、ロックオンは言葉を出すのを我慢した。 「アレルヤは留守で、刹那は亀になんか興味ないガンプラくれっていうし、他にいく場所がないんだよ、な、な、頼むから数日で飼い主になってくれる人見つけるから、我慢してくれ!」 「眠い。寝る」 「は?」 ティエリアは、紫紺の髪を翻していつの間にか新調されたキングサイズのベッドにぽふっとなる。 「おい、ティエリア」 揺り動かそうとして、やめる。 亀を触った手なのだ。ティエリアは生き物があまり好きではない。 小鳥やハムスター程度ならいけるし、犬猫もまぁ嫌いではないらしいのだが、とにかく人間と違う形をした生物・・・・・特に、それが食事に出てくるとなるとそれはそれは騒ぎとなるような悲鳴の上げ方を出す天才だった。 昨日の夕飯の魚の煮物には、形が丸わかりの魚が入っていて、食べようとした直後に固まって、アレルヤと一緒に、固まったティエリアにハンバーグ定食のBランチを与えて正気に戻るのを待ったものだ。 ぎゃあああと悲鳴をあげるならまだかわいい。 周囲のものを投げだし、ジャボテンダーさんで周囲の人間をどつきまくるのだ。一番被害にあっているのはロックオンのはずなのだが、何故かアレルヤの被害が酷い。 明らかに、ロックオンはアレルヤを盾代わりに扱っていた。まぁ、友情あればこそ?なのでアレルヤもジャボテンダータックルを受けて笑っているから平気だろう。 「飼い主は明日みつけろ」 命令形できた。 「昆虫ケースに入れて廊下に置いておけ」 また命令系できた。 ロックオンに対しては、いつも丁寧語で対応しているティエリアにしては珍しかった。 「はい・・・・・」 しゅんとうなだれてしまったロックオン。 チクリと、胸が痛んだが、ここは譲れない。 ティエリアは爬虫類が特に苦手だった。ロックオンとは、水族館でデートしたこともある。生きている姿を見るのはいい。ただ、その生物が食卓にそのままの形であがるのが苦手なのだ。 だから、貝など貝殻を取り除いておかないと食べない。 亀もスッポンなどが食用として知られている。しつこいようだが、ティエリアは爬虫類は苦手・・・というか、大嫌いである。 とかげもワニも蛇も無理だ。 亀程度ならいけるだろうと、拾ってきたロックオンの誤算だった。 「寝る。亀とたわむれるつもりなら出ていけ」 「ティエリア〜。そんな冷たいこというなよ、言う通りにするからさ」 「そうか。ならばまずは手を洗って来い」 「はぁ・・・・・」 ロックオンは亀を昆虫ケースにいれて水をいれて石を置くと、ごめんなと謝ってから、廊下に出した。 亀は、その日のうちにクルーの誰かに拾われていった。 ロックオンは、ティエリアのご機嫌を直すのに3日かかったそうだ。余談であるが。 |