愛の永久不滅







「紅茶飲みますか?アッサムです」
ティエリアは、自分が飲んでいたカップの中の紅茶を飲み干してから、ロックオンに問いかける。
「んあー。頼む」
がしがしと、ロックオンは頭をかいた。
コンピューターと睨めっこしている。
次の武力介入のインフォメーションを、ミス・スメラギからデータとして手渡された。
その中身を確認し、脳の中に記憶させるために、苦手なコンピュータの難しい文章を読んでいく。

コポポポ。

ティエリアのカップとお揃いのカップにお湯がいれられる。
いい匂いがした。
ティエリアが飲む紅茶は、最高級のアッサムだ。

「はい、どうぞ」
机に置かれたカップを手にとって、ロックオンが紅茶を飲む。
「んー。今回のミッションも大変だなぁ。このフォーメーション、もしかしなくてもティエリアが考えたのか?」
「そうです」

ティエリアは、戦術予報士であるミス・スメラギの右腕のような存在になっていた。
彼女のかわりに戦術プランをたて、戦闘フォーメーションを練る。
敵の、一人の戦術予報士だけだと、読みを深くしてくることを避けるためでもあった。
ティエリアの戦術プランにミス・スメラギが手を加え、一人では考えもつかない戦術プランが生み出される。

「ティエリアのプランは複雑だからなぁ。記憶するのにちょっと時間かかるぜ」
「そうですか?基本を覚えれば、後は簡単ですよ。ここです」
コンピューターに示されていたデーターに、ティエリアが右手でデータの一部をさす。
「あ、なるほど。ここから、俺のガンダムは敵陣の右翼を崩していけばいいのか」
「次の武力介入である基地は、統率がとれていると有名なところですからね。でも、惜しむべきはその統率されているが故の、乱れのなさですか。いつも同じ陣形を組むんです。ガンダムで襲撃しても、同じ陣形を取るでしょうね。今まで、その陣形で無敗を誇ってきた武装組織ですから」
紅茶を飲みながら、ロックオンがティエリアのたてた戦術プランに舌を巻く。
いくら敵が毎回同じ陣形をとっているからといって、大胆すぎる。
それに、違う陣形になった場合も幾通りものフォーメーションを用意している。
ミス・スメラギが戦術予報士にしたがるわけだと、ロックオンは思った。

紅茶が空になった。
それに、何も言わず、ティエリアが余分を注ぐ。
そして、自分のカップにも注いで、二人で戦術プランについて語り合いながら、紅茶を飲んでいく。

「大体分かった」
ロックオンが、もうだめだとばかりにコンピュータの電源を切った。
「大体でいいですよ。ロボットじゃあるまいし、正確な行動なんて誰もできません。ミス・スメラギからの指示もあるでしょうから、臨機応変ですね」
「だなぁ」

「どうかしましたか?」
「いや」
そういったかとおもうと、ロックオンが腕を伸ばしてティエリアの体を攫った。
「うわっ」
肩に担がれる形となって、必死にロックオンにしがみつく。
「何をするんですか!」
「休憩」

ロックオンが、ドサリと自室のベッドに座る。そして、担いでいたティエリアの体を離した。
ティエリアの靴を脱がせ、ロックオンも靴を脱いでベッドに横になる。
ティエリアは、石榴の瞳でロックオンのベッドに同じように横になった。

白い天井を二人して見上げる。
「愛してる」
囁きと共に、抱きしめられる。
その温もりを確かめるかのように、ティエリアもロックオンの背に手を這わす。
「僕も、愛しています」

「永久不滅」
「ロックオン?」
「永久不滅の愛を、ティエリアに」
ティエリアの細い手首をとって、口付ける。
そのまま、唇を重ねた。

「永久不滅の愛を、あなたに」
ティエリアが、ロックオンの胸の上に頭を乗せて、密着した。
暖かい温もり。
愛しい人の温もり。

唇を重ねる。
アッサムの、紅茶の味がした。


永久不滅。
愛の永久不滅を。
誓うだけなら、こんなにも簡単なのに。