「うう・・・」 「大丈夫、アレルヤ!?」 トレミーに帰還したアリオスのコックピットから出てきて蹲ってしまったアレルヤに、マリーが駆け寄った。 「マリー、その格好は・・・」 「ごめんなさい。私、あなたのガンアーチャーで出撃しようとしていたの」 「マリー!!だめだ!君は戦っちゃいけない!」 マリーは悲しそうに金色の瞳を伏せると、首を左右に振った。 「私だけ、のうのうと守られるなんて、そんなの私が許さないの」 「マリー」 「アレルヤ。私を信じて」 マリーは、いつにもなく強く瞳を輝かせた。 その瞳は、銀色の乙女のものではなく、一人の戦士のものだ。 「私は超兵。あなたと同じ超兵。戦えるのに、アレルヤがみんなが死にそうな場面をただ見つめていることしかできないなんて嫌よ」 「僕は誓ったんだ。君を、戦いに巻き込ませないと」 「アレルヤ」 マリーはアレルヤに抱きついた。 そのまま、着替えてアレルヤの部屋に、高圧電流によりガンダムを麻痺させ、そのダメージを微量ながらも受けてしまったアレルヤを抱えて運ぶ。 「マリー、一人で歩けるよ」 「いいえ、一緒に歩くのよ」 一歩一歩、生きていることを確かめるように重いアレルヤの体を引きずって、部屋に向かう。 途中でイアンとラッセに手をかそうかといわれたが、断った。 これは、私の役目。 私にたくされた運命。 部屋に運び、アレルヤをベッドに寝かす。 「今回は、敵が突然撤退していったから良かったけれど、あのままではトレミーはやられていたわ」 「それは・・・」 アレルヤが口ごもる。 高圧電流により、ティエリアとアレルヤの機体は足止めをくらい、すぐには動けなくなってしまった。 残るケルヴィムの機体は、最初にトランザムを使ったことにより、GN粒子量が足りなくて最チャージしていた。 アレルヤもケルヴィムも粒子ビームで敵を何機も落とした。ティエリアはGNフィールドをはっていたが、新型の集中攻撃にあっていた。ハイパーバーストをフルパワーで解放し、それでも何機かのアロウズの紅い機体を葬った。 だが、刹那のダブルオーライザーという圧倒的な破壊力に欠いたメンバーでは、36機の、しかも新型も含んだ敵を防ぎきることはできなかった。 敵が撤退していなければ母艦であるトレミーは確実にやられ、そしてセラヴィもアリオスもケルヴィムもやられていただろう。 全滅だ。 「私は、アレルヤだけではない。誰も失いたくないの。もう、誰も」 「マリー・・・・」 「私は超兵。超兵としての自分の存在を忘れたわけではないわ。私は戦えるの」 「でも、僕はマリーに戦って欲しくない」 「ティエリアさんがこう言っていたの。変わらなかった者の代わりに変わるんだと」 ベッドから起き上がりながら、驚いたようにアレルヤがティエリアの顔を思い出した。 いつにもなく、とても真剣な表情をしていた。 「私は変わるわ。変われないなんて嫌よ」 「マリー」 「アレルヤ、優しかったあなたはガンダムマイスターとなる道を選んで変わった」 「僕は、この世界を変えたい。みんなを守りたい」 「その心は、私も一緒よ」 逞しいアレルヤの胸に手を這わせながら、マリーが涙を零した。 「嫌なのよ!愛した人が目の前で死んでいくのをただ見ているなんて!!」 「マリー」 アレルヤが、傷む体に鞭打って、マリーを抱きしめる。 「私は戦えるわ!私は守られるだけのか弱い存在じゃない。アロウズで兵士としていつも前線に出ていたわ。いつ死んでもおかしくない戦いを何度も潜り抜けてきたわ」 「マリー・・・・・」 「私を信じて、アレルヤ。お願いよ」 「分かったよ」 マリーは、そのままアレルヤに抱きついた。もつれあうままに、二人はベッドに倒れる そのまま、互いの温もりを感じあうようにずっと抱きしめあった。 二人はそのまままどろんでいく。 アレルヤは夢を見ていた。 マリーが笑いながら、花畑をかけぬけていく。 ザァァァァ。 風が吹いて、花びらが舞い散る。 「ロックオン?」 隻眼のエメラルドの瞳の、よく見知った秀麗な青年が、マリーとの間を阻むように立っていた。 「変わらなかった俺の代わりに、お前は変われ」 それだけ言い残すと、すぐにロックオンは消えてしまった。 アレルヤはそこで目覚めた。 隣には、マリーが眠っている。 「変わらなかったロックオンの代わりに、変わる・・・・」 マリーの唇にキスを落とす。 マリーを守るのは、僕の指名だ。 変わらなかった者の分まで、変わる。 生きて、変わりながら、生き抜いて。 アレルヤは、もう迷わなかった。 マリーと一緒に、変わっていこう。 この戦いを生き抜くために。 そして、二人で歩んでいくのだ。 ずっとずっと、二人一緒に。 |