「これが一番きくやつよ」 「すまない、マリナ」 マリナから、血管に注入式の鎮痛剤をいくつか受け取る。 ほぼ半裸だった上から、ノーマルスーツを着用し、プロテクターをつけ、ヘルメットを被る。 「本当に、行ってしまうのね」 「仲間が俺の帰りを待っている。連絡手段がない。心配だ」 「刹那!」 マリナが涙を零して、刹那を後ろから抱きしめた。 「本当なら、このまま攫っていきたい」 マリナを抱きしめ返す。 このまま、二人で逃げ出そうか。 そんな選択肢は、刹那にはなかった。 変われなかったロックオンの分まで、変われ。 生きながら、変わりながら、そして。 ダブルオーライザーのコックピットが開く。 マリナは胸に手を当てて、刹那がコックピットへ上昇していくのを見ていた。 マリナは歌いだした。 その唄を聞きながら、刹那が誓いをかわした親指を空に掲げる。 マリナも、親指を空に掲げた。 どこまでも果てしない青空に吸い込まれる。 刹那の姿が、コックピットの中に消えた。 「く・・・」 刹那はうめきながらも、鎮痛剤を打つ。 そして、ダイブルオーライザーを発進させる。 満ちるGN粒子の光。 補給は、カタロンの兵士がしてくれた。 エネルギーチャージは終わっている。 蒼く輝く、まるで母なる海のような、あるいは地球のような蒼い機体がふわりと宙にうく。 GN粒子を撒き散らしながら、刹那は操縦桿を握り締め、大空へとかけていく。 マリナは、涙を零しながら、少しづつ小さくなっていく機影を見つめていた。 「どうか、無事で、刹那」 ピピピピ。 いつも所持している超小型コンピューターに着信があった。 内容をは、簡潔な文章だった。 「永遠の愛を、マリナに」 「刹那、刹那!」 マリナは、今度こそ嗚咽を漏らしてその場に蹲った。 「永遠の愛を、刹那に・・・・どうか無事で、ソラン」 青空を見上げる。 もう、刹那の機体は見当たらない。 去ってしまった。 吹き抜ける風に白い衣装をはためかせながら、涙を零しながらマリナは歌う。 刹那に届くようにと。 子供たちもマリナに駆け寄って、一緒に歌いだす。 どうか、無事でいて。 |