それは神の子ではなく「スタート」







ティエリアは、青空を見上げた。
そして、古城の庭の自分の墓として作られた墓を、そのまま兄のリジェネの墓とした。

青空は、どこまで高く高く、手を伸ばしても届かない。
透明な空気が風に流れ、ティエリアの髪をサラサラと鳴らした。
その髪には、ロックオンに買ってもらった髪飾りが輝いていた。

「リジェネ兄さん、愛しています」
蒼い薔薇を捧げる。
白やピンク、真紅の薔薇も捧げた。
ティエリアが再生した部屋の蒼い薔薇は全て枯れてしまった。
古城の庭の隅に、それでも蒼い薔薇は凛と咲き誇っている。

ティエリアは、白い牙も、赤い翼も失った。
ヴァンパイアとしての魔力も力も不老不死も失った。
このまま、人間として年を刻んでいくだろう。

「ティエリア」
「はい」
名を呼ばれて、振り返る。
もう二度と見ることができなかった姿がそこにある。

ティエリアは、今一度、リジェネの墓を振り返った。
涙が溢れた。
誰でもない、半身だったリジェネ。
もう一人の僕。

そっと、抱きしめられる。
ティエリアは、戸惑いがちにロックオンの背に腕を回す。
そのまま、ぎゅっと抱きしめられた。
「ロックオン」
「ティエリア」

唇が、自然と重なった。

古城の近くに住まう歌姫の唄が聞こえてくる。
その唄を、ティエリアが真似て歌う。


世界が終わる日 世界が終わる日
あなたがいなくなる日 あなたがいなくなる日
世界が終わる日 世界が終わる日
この世界からあなたがいなくなった日
追いかけても追いかけても追いつかない
どんなに手を伸ばしても伸ばしても届かない
どんなに泣き叫んでももう届かない
絶叫してももうあなたには届かない
あなたの笑顔が もう一度見たい
あなたの温もりが もう一度欲しい
世界が終わる日 世界が終わる日
あなたがいなくなる日 あなたがいなくなる日
世界が終わる日 世界が終わる日
この世界からあなたがいなくなった日
夢の中だけでも会えたらと 叶わぬ願いを口にする
魂だけとなっていつかいつか めぐり合えたらいいのにね
どんなに姿かたちがかわっても 俺にはわかる
愛したあなたのこと 愛したあなたのこと
追いかけても追いかけても追いつかない
どんなに手を伸ばしても伸ばしても届かない
あなただけを愛しているのに 愛しているのに
こんなに 狂ってしまいそうなほど あなたを愛しているのに
あなたがいなくなった日 それは世界が終わる日
そしてまたあなたと出会う日 それは世界が始まる日
あなたとまた愛し合う奇跡 それは世界を生きる日
神の子は 愛し合う 世界を生きながら
人の子は 愛し合う 互いを思いやりながら


澄んだ透明な歌声が響く。
歌姫の唄より綺麗で澄んでいた。

「上手だな」
「そうですか?」
ティエリアは笑って、古城の庭から出ると道を走った。
「待てよ!」
ロックオンが、荷物を持って追いかける。

「愛しています、ロックオン」
無邪気に、幼子のように微笑む。
「俺も愛しているぜ」
ティエリアは、無垢な表情のまま、青空を見上げた。
また歌いだす。

神の子ではない 神の子ではない
愛されない 愛されない
神の子でありたい 神の子でありたい
愛されたい 誰よりも愛されたい
世界が始まる日 それは愛を知る日
世界が始まる日 それは生まれ変わる日
神の子ではない 神の子ではない
それでも それでも それでも
愛される 愛される 愛される
愛は無限だから 無限の軌跡を描くから
誰よりも愛される 愛される
愛は無限だから 無限の軌跡を描くから


「綺麗な声だな」
「そうですか?」
ティエリアが、白いワンピースの裾を風に翻しながら、くるくると廻る。
変わらず、無性であるが、ロックオンには性別などどうでも良かった。

これは、世界の終わりではない。
世界の始まりだ。
ティエリアの唄のように、ティエリアはリジェネの力によって生まれ変わったのだ。

誰よりも愛しいティエリア。
ロックオンは、古城の庭に戻ると、リジェネの墓に真紅の薔薇を捧げ、立ち上がる。
そして、くるくる廻るティエリアを抱きとめる。

「世界が終わっても。あなただけを愛しています」
「世界が始まっても。お前だけを愛している」

それは、終わりの始まり。
ゼロからのスタート。

もう一度、愛の軌跡を描くために、世界は一度終わり、そしてまた始まった。

神の子ではなかったヴァンパイアは、神の子である人になった。
そして、太陽を見上げる。
吹く風を全身で感じる。

愛の軌跡をまた描くために、愛する人と一緒に。

もう一度、スタートを。

      それは神の子ではなく The End
                 Thank you for you
                 Presented by Masaya Touha




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あいーん。
パロで吸血鬼ものをかいた。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
もう少し、ひねりある小説かけないのかしら?
もちょっと長編にしたかったなぁ。連載みたいな。
しかしそこまで長引くのもめんどくさい。
途中にシーンを入れることもできるけどめんどくさくてカット。

はぁ。まぁ暇つぶし程度に。ここまで読んでくれた方、お疲れ様です