白雪姫







「第二回、童話をアレンジして続けよう大会。いぇ〜い」
アレルヤの部屋で、ロックオンをはじめとしてアレルヤ、刹那、ティエリアは集まっていた。
「いえー」
前回のように、アレルヤも手をあげてなんとか盛り上げようとする。
「家」
また、発音からして意味が違う言葉を出す刹那。
「・・・・・・・・」
ティエリアは、氷の結晶のような綺麗な顔を、ものすごく嫌そうに歪めている。前回も嫌そうに歪めていたが、更に輪をかけて嫌そうな顔をしていた。

前回はロックオンの部屋だったが、今回はアレルヤの部屋に集まることとなった。
何気にぬいぐるみとかかわいいものにあふれた部屋は、一見する限りでは、持ち主は少女のもののようにみえるが、ちゃんとしたアレルヤの部屋だ。
ティエリアの部屋にもぬいぐるみはあるし、刹那の部屋にいたってはガンプラが溢れかえっているので、まぁ刹那の部屋に比べたらマシな方だろう。
また、好き勝手にドリンクやら菓子類やらを持って集まった。
年少組み二人は、前回と同じように、時間になっても集まらないところをロックオンに首根っこを捕まえられてずるずると引きずるような形で強制的にアレルヤの部屋に連れてこられた。
前回の「人魚姫」のタイトルで、最後はロックオンの大嫌いなホラーDVD鑑賞会になり、ロックオンは恐怖のあまり一人で寝ることができなくなり、ティエリアと一緒に寝るなど、底知れぬ恐怖を味わったはずなのに、懲りない奴である。
底抜けに明るいのが、ロックオンの持ち味なのかもしれない。
「んじゃ今日もいこうぜー。トップバッターはアレルヤだ!」
以下、アレルヤの話。

昔々あるところに、白雪姫というとてもかわいらしいお姫様がいました。
白雪姫は、けれど継母に苛められては、少々辛い生活を送っていました。
継母はそれはそれは大輪の薔薇のように美しい、絶世の美女でした。父である国王は、継母の虜になってしまい、白雪姫の言葉にも耳を傾けてくれません。
今日も、白雪姫は下女に混じって洗濯物をしていました。
一方、継母は誰もいないのを確認すると部屋の奥に入り、魔法の鏡に問いかけます。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
鏡は答えます。
「それは無論、お后さまです」
「オホホホホ。鏡よ、正直でいいわね」
「でも」
「でも?」
「隣国の3番目のお姫様も美しいです」
「なんですって!」
后は、もっていた宝石のはいった箱を床にぶちまけます。
そして大金で刺客を雇い、隣国でも美しいと名高い3番目のお姫様を暗殺してしまいました。
后は、その美しさとは反対に、とても残忍な性格をしていました。
そんな日々が数年すぎていきました。
后の美貌も、年月と共に色褪せていきます。
「鏡よ鏡、世界で一番綺麗なのはだあれ?」
「それは白雪姫です」
「ああん、やっぱり白雪ちゃん。ねぇ、聞こえた、白雪ちゃん。あなたが世界で一番綺麗だって」
振り返った先には、白雪姫がいました。
白雪姫は美しく着飾り、后にもまけないほどの美少女に育っていました。
「そんなことより継母様、そんな鏡に興味わないわ。愛し合いましょう?」
白雪姫は、后の手をとって、一緒に寝室にいくと豪華なドレスを脱ぎ、アクセサリーだけをまとった裸体となって后と一緒に乱れに乱れ、快楽を貪るのでした。
ズキューン、ズキューン、バキューン(以下略)

「ア、アレルヤ?」
ロックオンが、ツッコミのハリセンを手に持ったまま、ハリセンではたくべきか迷っていた。
ズキューン、ズキューン、バキューンの部分は言葉には言い表せないほど卑猥で、エロティックだった。とてもアレルヤの話とは思えない。
「刹那からアドバイスもらったんだ!これでよかったんだよね、刹那?」
「グッジョブだ」
親指で鼻血をたれながら合図をする刹那の頭を、ロックオンがハリセンではたきまくった。
スパーン、スパーン、スパーン!!!
「痛い、何をする!」
「何、アレルヤを歪めてるんだあああ!!」
「知るか」
刹那はカールさんを食べだした。
横では、ティエリアがテーブルの上でミス・スメラギと出す合同同人誌のペン入れをしている。
スパーン!
ティエリアの頭も、ロックオンははたく。
「あ」
はたかわれた拍子に、線が歪んでしまった。
「ロックオン!!!」
ティエリアは、ロックオンに詰め寄ると、にっこりと笑った。
「死にくされええあああああ!!!」
持っていた銃を出し、ロックオンを撃とうとする。
ティエリアは、極度の睡眠不足で人間が変わっていた。
締め切りまであと二日しかない。ろくに寝ていないというのに、このままでは仕上がらない。
サボってばかりいるミス・スメラギは、カタギリとかいう男とデートに出かけている。ミス・スメラギの分までティエリアが描かなければならなかった。
拳銃をアレルヤがとりあげる。
「ミス・スメラギめ!!人に原稿押し付けて、自分はデートだなんていい根性してるじゃないか。ブランドグッズ、全部売り飛ばしてやる」
ティエリアならやりかねなかった。とりあえず、血走った目のティエリアに圧倒されて、ロックオンは土下座してごめんなさいと謝ってなんとか許してもらえた。
「え、えと、次は俺な」
原稿用紙に向き直ったティエリアをそっとして、ロックオンは続きを話す。
以下、ロックオンの話。

ズキューンバキューンばかりしていた、后と白雪姫の生活も、長くは続きませんでした。
その関係が、父である国王にばれてしまったのです。
后と白雪姫は、忌まわしい妖精が住むという森に追放処分となりました。
けれど、その森には忌まわしい妖精はおらず、小さな家がたっていました。
そこには12人の小さな妖精たちが住んでいました。
妖精たちは、白雪姫と后の美しさに陥落し、一緒に家に住むことになりました。
「妖精その4、さっさと私たちのための別宅を作ってちょうだい」
「はい、只今」
白雪姫は妖精たちをこき使い、小さな家で一緒に暮らすなどいやだったので、別宅を作ってもらって、そこで后と毎日、ズキューンバキューンな愛欲にまみれた日々を送ります。
とても満ちたりた日々。
しかし、幸せはそう長くは続きませんでした。
処刑の意味をかねて森に追放したはずの白雪姫と后が生きていることをしった国王は、刺客を放ちます。
刺客は、毒リンゴを手に、白雪姫に迫ります。
国王は、后にまだ未練があるのでした。白雪姫さえ葬ってしまえば、后の愛はまた自分に向くのだと信じていたのです。
「美しいお嬢さん、りんごはいかが?」
「まぁ、おいしそうなりんご」
続く。

シーン。
アレルヤはTVを見ていた。
刹那はもくもくとカールさんを食べている。
ティエリアはコーヒーを飲んでなんとか眠気をおしのけながら、原稿をかきあげる。
ロックオンははらはらと泣いた。
そこに、刹那がやってくる。
「ズキューンバキューン、グッジョブ!」
ロックオンは嬉しくなって、親指をたてた。
「俺、グッジョブ!」
刹那の影響を、ロックオンまで受けてしまっていた。
もはや童話ではなく、ただのエロティック百合ストーリーだった。
「えーと、続きはティエリアで」
ギラリと睨まれたが、ティエリアも鬼ではない。
以下、ティエリアの話。

「おいしそうなりんご。まずはあんたが食べてよ」
「は?」
「食べろつってんのよ!」
白雪姫は無理やり刺客にりんごを食べさせました。
刺客はすぐに死んでしまいました。
「どうせこんなことだろうと思った。お父様の浅はかな考えなんて、全部お見通しよ」
「白雪ちゃん!大丈夫なの?」
「なぁに、任せて継母様。一緒に城に帰りましょう。ここの暮らしにも飽きたわ」
白雪姫は死んだふりとして棺に入り、后と城に帰還しました。
「おお、后よ!戻ってきてくれたのだな!その棺は?」
「白雪ちゃんが死んでしまったの。哀しくて、あなたの元に帰ってきてしまったわ」
「そうか、そうか」
国王は満足そうでした。
棺の中から、そっと身を起こす白雪姫。
「お父様、私の手作りのアップルパイめしあがれやごらああああああ!!」
白雪姫は、背後から毒リンゴで作ったアップルパイを片手に国王に襲い掛かります。
后が国王の口をあけ、国王は毒入りのアップルパイを食べて臨終してしまいました。
「ああ、お父様!どうして私を残して死んでしまったの!」
白雪姫は泣きました。
后も泣きました。
そして、白雪姫は亡くなった国王の跡をついで女王となりました。
その国のメイン産業は同人誌と呼ばれるもので、とくに王家の描く同人誌はエロティックで評判でした。
その日も、コミケから帰ってきた家来から目的の同人誌を受け取ると、后と一緒に読みふけります。
そして女王である白雪姫は后とズキューンバキューンな日々を過ごしながら、同人誌作りにせいをだし、国をよりよい同人誌国家に仕立てあげるのでした。
続く。

「だめだ、ティエリアのやつ完全に同人誌に洗脳されてやがる」
怖いので、ハリセンではたくこともできない。
ティエリアは覚醒した。
凄まじいスピードで原稿を仕上げていく。
人間の作業スピードではない。流石はイオリアの申し子。
機械的な速度で次々に原稿を仕上げ、ティエリアは語っている間に全ての原稿を仕上げてしまった。
奇跡だった。
「終わった!」
ティエリアは顔を輝かせる。
「ご苦労様」
刹那が、出来上がった原稿を読んでいく。
同人誌となって発売されるよりも先に読むチャンスを逃す刹那ではない。
「どうかしましたか、ロックオン?」
バレッタでとめていた髪をおろすティエリア。
「いや、お疲れさん」
「アレルヤ、その銃僕のじゃないか。どうしてアレルヤがもっているんだい?」
「いや、お前さんが俺に発砲しようと」
「バカなことは言わないでください!なぜ、僕がロックオンに銃を向けなければいけないのですか!」
ティエリアの記憶からは、すっかり怒ってロックオンに銃を向けたことは抹消されていた。
極限状態だったために、仕方のないことかもしれない。
「あーうん、そうだな」
とりあえず、調子をあわせる。
「じゃ、最後刹那」
以下、刹那の話。

同人誌で栄えた王国は、今日も白雪姫と后がズキューンバキューンしています。
「継母様、新しい玩具をかったの。これで楽しみましょう」
ズキューンバキューン。
そんな愛欲にまみれた日々にも、困難な問題が起こってきました。
白雪姫の跡取りの問題です。
家臣たちは、いろんな国の王子と結婚話をもちあげ、白雪姫に会わせます。
王子たちは、それほど国は豊かではないが、白雪姫のあまりの美貌の酔いしれ、彼女を自分のものにしようとします。
「白雪姫、どうぞ私と結婚してください」
隣国の第2王子が熱心に白雪姫に求婚をしますが、白雪姫は冷たくあしらいます。
「残念だけれど王子様、私はあなたを愛せないわ」
「どうしてですか」
「だって私、女性しか愛せない完全なレズビアンなんですもの」
王子は顎が地面に落ちるほどに口を開けたまま帰国しました。
白雪姫は、国中から美しい美少女、美女を集めると後宮を作りました。
跡継ぎは、まだ子供の甥を指名し、白雪姫は今日も後宮で、后と一緒に愛欲にまみれた日々を過ごします。
国では、殿方に後宮をのぞかせるということで莫大な利益をうみ、国家は潤っていきます。
身分ある貴族のものから遠くはなれた皇族などが、噂高い、女だけの禁断の世界をのぞいては鼻血をたらし、見物代金として多額の金を国家に支払いました。
そして、いつまでもいつまでも、ズキューンバキューン。
ズキューンバキューン。
ズキューンバキューンでしたとさ。
めでたしめでたし。

スパーン!
「エロすぎるわぼけぇ!」
ロックオンが鼻血をたらしながら、刹那の頭をはたいた。
アレルヤは鼻血をたらしすぎてドクター・モレノから輸血パックをもらって輸血しながら座っている。
「ふ、我ながらいい終わり方になった」
「どこがだ!そもそも、アレルヤの話からおかしくなってたんだぞ」
「でも、刹那がこうしろって」
ティエリアが一人、眠そうに欠伸をする。
「ふふふふ、ここで取り出すしたるはエロすぎて発禁になった映画!」
刹那が、懐から、発禁処分を受けた幻の映画のDVDを取り出した。
「お前、またそんなの!」
刹那はロックオンを無視して、DVDを再生しはじめる。
そこに繰り広げられる世界に、ロックオンもアレルヤも鼻血の海にひたって撃沈した。
ティエリアが、メロンソーダを飲みながら、ロックオンに輸血をはじめる。
刹那も、流石に発禁処分だけうけただけに、途中でトイレにいってしまった。
一人、DVDを見るティエリア。
帰ってきた刹那も、無言でDVDを見る。
見終わった刹那は、ティエリアと目をあわせないようにしていた。
ティエリアは、ロックオンの足を引きずりながら、部屋を出て行く。
刹那も、自分の部屋に帰った。

「あれ?」
気がついたロックオンは、ティエリアのベッドに寝ていた。
隣のティエリアは肌も露な格好で寝ていた。
じっと、石榴色の瞳で自分を見つめている。
露出した太ももを見たとき、ボッとロックオンは発火しそうになった。
「やべぇから、まじでやべぇから」
「ロックオン?」
そっと、ティエリアのベッドから抜け出して、ティエリアに毛布を被せると、額にキスをしてロックオンは部屋を去った。
ティエリアが吐息をついた。
「わざとこんな格好をして誘ったというのに・・・まぁ、紳士的なところがロックオンのいいところですけれどね」
氷の結晶が、艶やかなため息をつく。
そのまま、ティエリアは睡眠不足ということもあり、眠ってしまった。

一方、放置されたアレルヤは、翌日乾いた血でバリバリになって発見されたという。