花も恥らうよ







「また残したのか」
「・・・・・・」
テーブルの上にある、ティエリアの分のトレイを見て、刹那が無表情のまま隣に座る。
そのまま、刹那は無言でティエリアが残した分の食事を食べていく。
食べ物を粗末にはできない。
「いつも、すまない」
ティエリアは好き嫌いがなさそうで、わりと実はあったりする。
ゼリー系の補給タイプの食事をメインとしていたティエリアの生活は、ロックオンとの出会いで変わった。だが、ロックオンを失って、またゼリー系の補給タイプの食事をメインに変えていた。それを咎めたのは誰でもない、いつものようにティエリアの隣に寄り添っている刹那だった。
一緒に食事をとり、戦闘訓練をこなし、時には一緒に眠る。
足りない栄養素を錠剤で補うティエリア。
刹那と一緒に過ごすようになってから、きちんとした食事を一日三回とるようになったが、それでも嫌いなものはあまり食べないし、量がおおいといつも残した。
もう、無理に食べさせることは刹那もしない。
肉類が苦手のようで、料理の仕方によってはちゃんと食べたが、ステーキのようにそのまま形に出されると食べなかったりする。
同じように、生の魚もだめだ。
まぁ、衛生問題上生のまま魚を食べることなど滅多にないので、メニューにもほとんどでてこないが。
ティエリアの手が、刹那のトレイに乗っていたコーンポタージュスープに伸びる。
無言でそれを拝借して、勝手に飲んでしまう。
刹那は何もいわない。
「苺は、食べないのか?好きだったろう」
ティエリアのトレイに残っていた、食後のフルーツである苺をフォークでさす。
「刹那に、あげる」

そのとき、アレルヤとマリーと一緒に食事をしていたライルは、口から砂を吐きそうになっていた。
うつむきがちのティエリアの表情は、どこまでも果てしなく乙女だった。
薔薇色に染まった頬を隠しもせずに、雪の華のような美貌は可憐にかわいく目を伏せる。
刹那も、もろにその攻撃を食らった。
「刹那?」
刹那はフォークで苺をさすと、それをティエリアの前にもってきた。
それを見ていたライルは、飲んでいたコーンポタージュスープを膝に零していた。
桜色の唇が、それを口の中にいれる。
だが、そのまま噛んで飲み込みことはせずに、刹那に口付ける。
刹那の舌が、半分になった苺をさらってく。
それを見ていたライルは、苺ではなく、自分の手にフォークを突き刺してしまい、悲鳴をあげていた。
「仲いいよね」
「仲いいわね」
アレルヤとマリーが、ほんわりと和んでいる。
アレルヤとマリーの空間は完全にピンク色に染まっているが、今の刹那とティエリアの空間も負けてはいないだろう。
ライルは、突き刺してしまった自分の手を「あいたたた」とかいいながら、ぶらぶらさせていた。
「ティエリア、それとってくれないか」
「はい」
「刹那、そっちのあれをとってくれないか」
「ほら」
それでも会話は成り立っている。
ライルは、口の端から血をたらしていた。
これで、恋人同士じゃないんだからなぁ。
食事を終えて、二人が立ち上がる。
ティエリアは前回の戦闘で足をくじいいていた。まだ完全に治っていない。
「いい、刹那、一人で歩ける」
「黙っていろ。舌を噛むぞ」
「うわ」
刹那が、軽々とティエリアを抱き上げた。
足首にはテーピングがされたままだ。
そのまま、ティエリアは刹那の肩に腕を回す。
「ティエリア、シャンプー変えたか?」
「何故分かる」
「いつもと匂いが違う。前のシャンプーのほうがすきだな」
「では、前のに変える」
そう会話をしながら、食堂を出て行く二人を見ていたライルは、食後のコーヒーに砂糖のかわりに塩を大量に入れていた。
次の日は、刹那とティエリアに混じって、ライルも食事をしていた。
デザートのメロンを、ライルがティエリアにあげると、ティエリアは花の蕾も恥らうような微笑を零す。
刹那も、負けじと自分のメロンをティエリアにあげた。
水面下で戦う二人の気持ちも知らず、ティエリアはのんきにメロンを3人分食べるのであった。
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ラブバカップルぽい二人。
ライルも負けじと刹那とティエリアの間に割って入る。
三角関係、れっつえんじょい。
何気にギャグぽっくなった。