「あいててて」 ロックオンが何度も後ろを振り向こうとする。 「ほら、じっとして」 「あいよ」 ティエリアの手が、ロックオンのウェーブがかかった濃い茶色の髪をすいていく。 そのまま、ティエリアはロックオンに教えて貰った三つ編を綺麗にあんで、髪ごむをとめると、上からレースと金糸の蝶の刺繍がされた可憐な細工の黒いリボンを結んだ。 「できました」 「じゃあ、次はティエリアの番な」 ロックオンがティエリアの手からブラシを受け取って、くせのないストレートの髪をすいていく。 そのまま後ろで、ロックオンと同じように三つ編にして髪ゴムで止めると、同じリボンで綺麗に結い上げる。 鏡を見て、ティエリアが嬉しそうにロックオンのひらひらした長めのリボンを見ていた。 「案外似合いますね」 「冗談はよしてくれ」 苦笑いするロックオン。 「このまま、デートしましょう」 「でぇ、まじか?」 「何か問題でも?」 「ティエリアは似合うからいいとして、俺にはこんな髪型にあわねーって」 「デートをしてくれないのであれば、同人誌の原稿を手伝わせますが?」 キラリと光る石榴の瞳に、ロックオンは沈没した。 もう二度と、ティエリアの同人誌の原稿を手伝いたくない。 注文が山のようにふりかかり、何度もやり直しをさせられるのだ。 そのまま、二人で町にくりだす。 ティエリアの服は、季節が暑くなってきたこともあって、真っ白なワンピースを着ていた。 変わらずの胸のスカスカ具合にティエリアは何かをいいたいようであったが、もうなれてしまった。 ショーウィンドウにはりつき、新しい衣服を眺めていたティエリアに若い二人の男が話しかける。 「ねぇ、彼女一人?良かったら、一緒に遊ばない?」 「いいえ、遠慮します。連れがいますので」 60人突破・・・・ロックオンはティエリアが男に声をかけれるたびに数えていた。 「ロックオン、このブティックに寄ってもいいですか?ロックオン?」 「あ、ああ」 ティエリアは呆然としていたロックオンの手を繋いで中に入っていく。 「なぁ、お前いつも一人で出歩く時もああなのか?」 「そうですが、何か?」 ロックオンはどうすれば男を追い払えるものだろうか考えたいた。 ティエリアが一人の時でも、確実で追い払う方法。 「心配しなくても、宇宙から更新が届きましたといって金色に目を変えると、大抵逃げていきます。それでもだめな場合は、初回経費含んで30万ドルと要求します。その言葉を無視して無理やり触れてくる相手は投げ飛ばします。路地裏に連れ込んで、拳銃をつきつけるのが大好きです」 可憐な乙女の表情のまま、にっこりと花のような笑顔を零す。 なのに、言っている中身は壮絶だ。 乙女なのに漢だ。 そのギャップの激しさが凄まじい。 「ロックオン。ペアリングを買いませんか?」 「ペアリングか。いいな。よし、買おうか」 通り過ぎる人間たちは、ティエリアの氷の結晶の美貌に時を止める。 それを慣れた様子で、通り過ぎ去っていく。 「見て見て、彼氏も三つ編してリボンしてる。お揃いだなんて素敵。あんな少女趣味のリボン、私の彼氏だったら絶対につけてくれないわ。羨ましいな」 「彼氏かっこよかったね。彼女はどっかの芸能関係の人かしら。すごいかわいいわ。着てる服も身につけてるアクセサリーもすごいセンスがいいよね」 「だよねー」 女子学生のグループが、ティエリアとロックオンの姿を見てそんな感想を述べていた。 ティエリアの服もアクセサリーも全てロックオンが選んでいるとは気づきもしまい。 そのまま二人はペアリング購入のために、いろいろと見てまわるのであった。 |