草津の湯9







帰りに、草津の温泉の元というのをお土産にいくつも買い込んだ。
「こんなものかな?」
荷物を整えて、ロックオンはアレルヤとティエリア、刹那の到着を待つ。
アレルヤと刹那はすぐに着た。
ティエリア一人が、なかなか来ない。
「ティエリアは?」
「あれ、ロックオンと一緒じゃなかったの?僕たちは見なかったよ」
「俺も見なかった」
「ちょっと荷物見ててくれ。探してくる」
ロックオンは、迎えのバスが来ているということもあり、急いで駆け出した。
フロントにいって、すでにチェックアウトしているのを確認する。
どこにいったのか。
とりあえず、フロントの人とベルボーイに、ティエリアの特徴を言うと、一人のベルボーイが答えた。
「その方なら、何人かの男性に囲まれて最上階のテラスに向かわれました」
「くそっ」
ロックオンは駆け出す。
ティエリアにもしものことがあれば。
ティエリアは、ホテルで騒ぎを起したくないので、わざとついていったのだろう。
エレベーターのボタンを押すが、中々おりてこない。
苛立って、ロックオンは非常階段をつかっていっきに13階まえ駆け上がった。
これくらいで息がきれるようにはできていない。体力は十分にある。
テラスに出ると、伸びた3人の男が転がっていた。
そのままロックオンが見たのは、床に手をつけて、回し蹴りを綺麗に決めるティエリアの姿だった。
回し蹴りをした次には、その場所から飛び退って、捕まえようとする男の手から逃れ、両手で床に手をつくと、側転しながら蹴り上げる。
冷酷な顔で、倒れた相手の頭を踏みにじる。
綺麗な、隙もない完全な蹴りをメインとした格闘技。俊敏で、豹のようにしなやかで美しく、無駄な動きは一つとしてない。それがティエリアの自慢でもあった。
「あ、ロックオン!」
絶対零度の氷の女王の顔が、パァァと花がいくつも咲いたように綻ぶ。
硝子細工のように繊細な美しさ。
「ティエリア、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「ホテル側に通報するか?」
「いえ、いいです。あ、ちょっと待って下さいね」
かわいらしい声を出したあと、ティエリアは絶対零度の表情に切り替わる。
「人を見た目で判断しないことだ、このクズどもが!」
転がっていた男たちの股間を、容赦ない蹴りで潰していく。
全員、白目を剥いて泡を吹いていた。
「すみました。いきましょうか」
嬉しそうに、ロックオンに抱きつく。
あどけない、少女のような顔。
本当に、乙女のようにかわいいのに、時折こうも爽快にかっこいい。普通の男なんか比べ物にならないくらいにかっこいい。
なんだかなーとロックオンは思いつつも、ここまでティエリアをかわいくしてしまった原因はロックオンにあった。
ロックオンに恋をして、ティエリアは機械のようで冷徹で他人に関心のないティエリアから、ロックオンにまっすぐに恋をして、感情を表に出して、仲間を大切にするティエリアになった。
恋は、人を変える。

しゅんと、ティエリアが肩を落とす。
「せっかくロックオンに買ってもらった髪飾り、地面に落として割ってしまいました」
小さな髪飾りは、硝子でできていた。
無残な形になってしまった髪飾りを手にとって、涙を浮かべる。
「ごめんなさい。大切にしていたのに」
「新しいの買ってやるよ。もっと、ティエリアに似合う奴を」
「でも、これは壊してしまいました」
「ティエリア」
ロックオンが、ティエリアに口付ける。
「そんなもの、いくらでも買ってやるから、せっかくかわいいのに泣くな」
ロックオンが、今日のティエリアの髪に飾ろうと思っていた髪飾りを取り出す。
「これは?」
「今日、新しくお前にやろうと思ってた髪飾り」
プラチナでできており、花の形をした翡翠がはめこまれていた。
「翡翠、ですか」
「よく分かったな」
「あなたの瞳の色と同じ宝石ですから。エメラルドも、翡翠も大好きです」
ロックオンが買う、ティエリア用のアクセサリーは、安いものもあるが、大半が宝石を伴った高価なものだ。安いアクセサリーだと、ティエリアの美貌で霞んでしまい、玩具のように見えるからだ。
ティエリアの衣服にも、ロックオンは金を惜しまない。
王留美の口座があるのだし、好きに使っていいのなら、どうせならティエリアには似合うものを身につけて欲しい。
「いつもいつも、ありがとうございます」
「やべ、バスの出発の時間だ!」
「それは大変です!」
すっかり乙女に戻ってしまったティエリアは、ロックオンと仲良く手を繋ぎ、エレベーターを降りる。
バスにはぎりぎりで間に合った。
「ティエリア、新しい髪飾りかわいいね」
アレルヤの言葉に、ティエリアがロックオンの手をぎゅっと握った。
「ありがとう、アレルヤ」
そのまま、荷物をつみこんでバスが出発する。
刹那もかわいいといってくれた。
ティエリアは、また氷の結晶のような微笑を、ゆっくりと浮かべるのだった。

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これは・・・・。
長編?うーん。
仲良しマイスターズでロクティエを打ちたかったんですけど。
いや、ただ単にロクティエを打ちたかった。
現在アンケート1位。
うちのティエリアは切ないという言葉をいただくのですが、時にはかっこよくて、そして時には乙女のように可憐でかわいくあってほしいです。
ティエリアをかわいく書こうとして、こうなった。